日本で知られている”20%ルール”、英語だと”20% Time”というらしいのですが、勤務時間の20%は、本来の業務とは別に、自分独自のプロジェクトに使ってよろしい、というグーグルの社員特典です。つまり、週5日のうち1日は自由研究にどうぞ、みたいなもんですね。

この制度から、GmailやGoogle News、AdSenseなどが生まれたとされ、グーグルの自由な社風と技術者優遇を象徴するものとして広く知れ渡りました。最近ではアップルが”Blue Sky“で、Linked inが”inCubator”というプログラムをそれぞれ始めるなど、シリコンバレーでマネされた社員特典でもありました。

それが、Atlantic Wireの兄弟サイトであるQuartzのExclusive (特ダネ)と銘打った記事によると、この特典は「as good as dead」(死んだも同然)とあり、転載したAtlanticの見出しでは、特典は「 Is No More」(もう無い)と言い切っています。

1998年創業、躍進を重ねた時代に「Don’t be evil」(邪悪になるな)という社是の一節とともに、グーグルを特徴づけた”20%ルール”に一体、なにが起きているのか。

これは、グーグルの元社員がQuarzに匿名で語ったものだそうです。(以前にも実名で答えた人が存在します) それによると、会社は、このプログラムを正式に終わらせてはいませんが、事実上、終わりにしているような状態だとか。

具体的にどういうことかというと、かっては「20%」を取るのは、技術者の当然の権利のように扱われていたものが、年々、取れる研究対象が狭まるとともに、上司の承認を取り付けなければならなくなったそうです。そして、最近は上級幹部から管理職への締め付けが一段と強まっていました。

追随したFast Companyの記事によると、「上司は、見込みのありそうなプロジェクトでも生産性を考えて、承認に後ろ向きになっていた」と報じています。また、会社の決めたプロジェクトだけに勤務時間の100%を費やしている社員の方が、評価が高く、昇給もしやすいのだとか。

ただし、Quartzの続報「Google engineers insist 20% time is not dead—it’s just turned into 120% time」によると、「20%Timeは死んでいない」とする複数の技術者の掲示板への書き込みを取り上げています。「記事は間違い」と主張する人もいますが、一方で、「自分は20%を使っているが、実態は死んだも同然という記事に同意する」という技術者もいました。

グーグルの社員の評価はとても複雑なんだそうですが、新しい構想や製品を生み出す前の形になっていないものは一切考慮されないので、「20%を使うことは負けゲームをするようなもの」だからだそうです。彼自身は7年間にわたって20%を使い、それなりの成果をあげたと自負していますが、「報われることは全くなかった」と書いています。だから、利用する人はどんどん減るという理屈。

しかし、グーグルに入社できたほどの優秀なエンジニアたちのことです。いろんなアイディアがあることでしょう。でも特典の20%Timeを使ってるとどうやら不利になるらしい。そこで、続報記事の見出しの後半「 turned into 120% time」です。勤務時間100%は会社の業務に邁進し、自らのやりたいプロジェクトは時間外の20%でやるので、計120%になるということです。半分、冗談でしょうが。

そういえば、かって新しもの好きを楽しませてくれた、グーグルサイト内にあったGoogle Labsが消滅しているのに、今回、初めて気づきました。ここには、かって、20%Timeを使って考えられたいろんなアイディアが雑多に並んでいましたね。

閉鎖されたのは2011年7月。これを含めた一連の動きには、グーグルのリソースと人員をより少ないプロジェクトに集約するとする創業者ラリー・ペイジCEO(2011年1月就任)の方針が背景にあるという見方も記事は紹介しています。そのことを示すキーワードが、Google Labs閉鎖の告知の見出しにもなっている「More wood behind fewer arrows」だそうです。難しい。

とまれ、かって我々が勝手にイメージし、メディアも喧伝したような、グーグル技術者は週1日は自らの関心事に没頭出来るという優雅でバラ色の世界では無くなってきていることはたしかなようです。