今年7月26日の当ブログ記事で、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏が、母国オーストラリアに新党Wikileaks partyを結成、上院選に立候補し、当選確率はかなり高そうだという話を紹介しました。

その上院選の投票日は9月7日で、2週間を切りました。ところが、その土壇場になって、ウィキリークス党で内紛が勃発、党執行部にあたるnational council(直訳だと全国評議会?11人で構成)から、アサンジ氏に次ぐNo.2や、大学時代からの盟友ら6人も離党してしまいました。

前回の記事では、ウィキリークス党への関心がとても高いので、党の選挙責任者は「アサンジ氏以外でも当選の確率は高い」と意気軒昂だと書きましたが、事態は一転、米国の人気ニュースサイトDaily Beastなどは「アサンジ氏はロンドンのエクアドル大使館から自由の身で母国に帰れる最高のチャンスが吹き飛ばされた」と書いています。何があったんでしょうか。

ことは、豪州の複雑な選挙制度が絡んでいます。実は、私も理解していないので、大雑把な話になりますのでご了解下さい。

どうやら、豪州では1票、1票をムダにしないという考えから、当選ラインを超えた政党の余分な票は、他の党に配給されます。その配給先は、事前に政党が順位を付けて、中央選管にあたるAEC(Australian Electoral Commission)に、事前に届けておきます。その一例が、これです。と言っても、多分、ちんぷんかんぷんでしょう。

そこで、整理したものがこれです。これも分かりにくいでしょうが、一番上の「SELF」とは、自分の党、ウィキリークス党で、それ以下は、当選して余った票をどこに分けるかという順番です。なんで、全ての党に順番を振っているかというと、票を分けても、受け取った党の票が当選ラインに達しなければ、その次、また、その次と渡っていくかららしいのです。

で、問題はここからで、ニューサウスウェールズ州(NSW)選挙区の順位表が明らかになって騒ぎになりました。友党に近いと見られていた緑の党のランク付けを、なんと極右政党というAustralia First、やはり右翼でガンマニアの政党SHOOTERS AND FISHERSより下位にしていたのです。

ウィキリークス党は、NSWのほか2つの州で候補者を立てていますが、その内のひとつ、西オーストラリア州でも、保守系のNationalsを、緑の党の上にしました。ここには、ウィキリークスの支持者で、ロンドンに出かけてアサンジ氏と会談までした緑の党のScott Ludlam上院議員が再選を目指しているにもかかわらずです。

騒ぎになった先週、党の方では、少数政党が50以上にも及んでいることをあげて、 “administrative error”、つまり、行政の方の手違い、みたいなことを言っていたといいますが、実は、以前から、緑の党を下位にする予定だったことが分かり、そうした方針についていけないとして、集団離党が起きたというわけです。

その中には、党No.2でビクトリア州でアサンジ氏とともに立候補している、著名な作家・学者というLeslie Cannoldさんや、ウィキリークス創立メンバーの一人でもあるDaniel Mathew氏、西オーストラリア州の選挙を仕切っていた人も含まれます。

彼らが問題にしているのは、こうしたことが、離党した人以外のinner circleによって、密室で決められたことです。Cannoldさんは離党声明で、「民主主義」「透明性」「説明責任」という結党の精神が著しく損なわれたと糾弾しています。それには、当然、スカイプで会議に参加、そのinner Circleの議論を主導しているというアサンジ氏への批判が含まれます。

インデペンデント紙の記事によると、アサンジ氏の母親のChristineさんは「もし私が西オーストラリア州に暮らしてたら、緑の党のScott Ludlum氏に投票する」と語ったとか。つまり、息子の作った党に投票しないということです。

実の母にまで見限られたウィキリークス党の前途は、ひと月前とはだいぶ暗くなったようです。ただし、アサンジ氏が立候補しているビクトリア州では、他の2州のような問題は起きておらず、緑の党の余剰票配分先のトップはウィキリークス党なので、豪州のメディアConversationに記事を載せたMonash大学の政治学講師は「当選するちっぽけな望みはある」と記しています。運命の日は9月の第一土曜日です。