危ないかも、とされていた「東京」が2020年オリンピック開催地に当選しましたが、下馬評では当選か、と思われていた「ジュリアン・アサンジ候補」は、9月7日投票の豪州総選挙で上院議員の議席には手が届きませんでした。

アサンジ候補のことは、このブログで何度か取り上げ、結果を注目してきましたが、新聞、テレビでは今のところ全く報じていないので、現地メディアの報道や豪州中央選管のデータを元にまとめておきます。

8月26日付けの記事「ウィキリークス党の内紛、分裂!アサンジ氏の運命はいかに?」で書きましたが、オーストラリアの選挙制度は日本とは著しく異なっていて、当方には殆ど理解できていませんが、基本は、「死に票」を極力出さないという考えのようで、小政党にチャンスが生まれる仕組みに見えます。そこで、50いくつものミニ政党が乱立し、党首が有名なウィキリークス党にもチャンスがあると見られていたのですが・・・・

7月26日の記事で紹介したように、ウィキリークス党は、ビクトリア州にアサンジ氏の他に2人、ニューサウスウェールズ州(NSW)と西オーストラリア州に各2人の計7人を擁立して戦いました。

ちなみに上院選出馬に必要な供託金は、自治体国際化協会シドニー事務所の記事によるとわずか1,000豪州ドル(約9万円)と、日本の参議院議員候補の600万円とは比べものにならないほど安いので、ミニ政党もどんどん名乗りをあげるわけです。(ただし、この自治体国際化協会の記事は2007年時点のものです)

ウィキリークス党の内紛勃発前までは、党の選挙担当者は「アサンジ氏以外にも当選の可能性がある」と意気込んでいましたが、結果は全敗でした。全国1000万票弱の政党別得票一覧表はここにありますが、ウィキリークス党の得票はわずか57,628票(0,62%)。

これは、欧州で注目を集め、今回、初めて豪州で選挙戦を戦った海賊党(Pirate Party)の28,809票を上回りますが、Sex Party(128,312票)よりはるかに少なく、Animal Justice Party(動物正義党)という一見???な党の59,541票にも及びません。

アサンジ氏の立候補したビクトリア州に限っての得票一覧はこれですが、ここではさすがに動物正義党の倍近い25,845票(1.17%)を獲得しましたが、Sex Party(43,738票)の後塵を拝しています。勝利した保守連合が約87万票、敗れた労働党が約73万票というレベルですから、とても当選は覚束ない。

ただし、それでも、当選の可能性が喧伝されたのは、日本人には理解が難しい選挙制度の恩恵を受ける可能性があったからです。それは、私もよく理解していませんが「quota」という考えを軸にしたものです。

州ごと(=選挙区ごと)の有権者数を議員定数で割って得られた数字がquotaで、これに達した候補は無条件で当選とし、その候補が得たquota以上の票は、あらかじめ所属政党が順番を指定した自党候補を含む他の候補に配分されるというもののようです。(間違っていたらご教示下さい)

多分、こういうイメージです。ある有力政党が選挙区にA,B,Cの3人、立候補していたとします。A 候補がトップ当選で当選ラインquotaを10万票も上回った場合、その余剰10万票の配分先のリスト上位は当然、自党候補のBおよびC候補でしょう。しかし、BもCも余剰票の配分を受けなくても当選ライン達していれば、Aの余剰票は他党に配分されるのです。

その配分リストの上位は連立を組むような友党の候補でしょう。で、その友党候補が1万票の配分を受けて当選ラインに達すれば、残り9万の余剰票とBとCの余剰票は、さらに配分リストで下位の政党候補に次々と回る仕組みです。そこに、ミニ政党が乱立する誘因があるわけです。

そこで余談ですが、今回もいくつもミニ政党の上院議員誕生の成功例が生じました。ビクトリア州で、ウィキリークス党の半分以下の11,390票しか取れなかった Australian Motoring Enthusiast Party(自動車ファン党?)のRicky Muir氏が当選した模様とABCテレビが伝えています。またおなじABCテレビの記事では、西オーストラリア州で<Australian Sports Party may pick up a seat>とのことですが、このスポーツ党の得票はわずか1,908票、得票率は0.22%です! 一体、どういう風に余剰票が流れて来たんでしょう?豪州の選挙制度は奇々怪々です。

そこでウィキリークス党です。前回2010年の総選挙で第3極に躍進した緑の党の幹部にウィキリークス党の支持者がいることから友党関係にあるとされ、緑の党から余剰票が期待できる素地がありました。

アサンジ氏の知名度の高さで、そこそこの票を集め、そこに緑の党からの余剰票の配分を受ければ・・・のはずが、内紛騒ぎでイメージを悪くし支持者を大きく減らし、頼みの緑の党も前回ほどの勢いがなく敗退してしまったように見えます。そして結局、惨敗というわけです。

かくて、上院議員になることで、米国送還につながると懸念するスウェーデンからの召喚命令をぶっ飛ばし、ロンドンのエクアドル大使館を出て母国に凱旋するというアサンジ氏の夢は潰えました。

しかし、そんなに落胆もしていないようでもあります。豪州のABCテレビのインタビューに対し、「登録してたった3ヶ月の新党としてはよく戦った」と自賛し、3年後も6年後も立候補する意欲を示したそうです。そして、当面は、暴露サイトのウィキリークスを充実させる「real workに戻る」と語ったそうです。次の選挙につながるネタはなんでしょうか。