「ブートキャンプ」といえば、かって日本でも話題になったエクササイズDVD「ビリーズブートキャンプ」が思い出されますが、元々は軍隊の新兵訓練施設のことだそうです。そこから転じて、「ビリーズーー」のようなちょっときつ目の短期集中トレーニングという意味でも使われるようになりました。

そして、表題の「デジタル&ソーシャルブートキャンプ」へ、記者全員を”入営”させて、2ヶ月に亘る特訓を積ませることにしたのは米西海岸のBayエリアを代表する新聞、サンフランシスコ・クロニクルです。

昨年5月、なんと35歳の若さで、同紙148年の歴史で初の女性編集局長になったAudrey Cooper女史の決断です。これをスクープしたMashableの記事によると、その狙いは「部数減を食い止め、デジタル時代に踏み止まるため」だとか。

 

集中トレーニングは来月から始まるそうですが、”授業課目”などは明らかではありません。ただ、Cooper局長は「記者の書いた記事が、我々のコアの読者に届いているかを判定するためのデジタルな基準を与える」というような発言をしています。

また、「記者たちにはリスクを取り、<digital first>の思いが強まるのを期待している」とも。

これらから推察すると、より多くのアクセスを自社サイトに呼び込むためにソーシャルメディアの活用法を徹底して学んだり、おそらくは時代の主流となっているビデオ撮影のスキルアップなども含まれるのでしょう。

また、私は使ったことがないのでよく分かりませんが、googleのDashboardを駆使して、各記者が、自分の記事への反応を追跡、分析することなども求めるようです。

会社側としては、ソーシャルメディアや紹介サイトからの、各記事へアクセスしてくるクリック数をリアルタイムでモニターする、という計画もあるそうです。クリック数で、記者の会社への貢献度が測られるということでしょうか。

もし、このブートキャンプ参加後に、思うような成果をあげることの出来なかった記者は一体どうなるのか、という不安も当然出てきます。この点についてはCooper局長は直接、言及せず、こう語ったそうです。

「今は、記者の再訓練に集中している。記者を脅してるわけじゃない」「(このブートキャンプの試みに)失敗するということは、我々全てが仕事を失うということだ」

このブログでは、2012年に「米大手紙記者も辛いよ。取材と同時にスマホで撮影、即、送信」、昨年は「新聞記者に求められる新たな現実」という記事で、大手紙「記者」といえども、もう記事だけを書いていればいい時代ではなくなりつつある米国の記者事情を紹介しました。そして、事態は、一段と進行するかに見えます。

なお、同紙には、今年95歳になる名物科学担当記者がいます。Dave Perlmanさんといい、1940年にコロンビア大学のSchool of Journalismを出てすぐにクロニクル紙にcopy boyとして入社して以来、ずっと記者として活躍、今もフルタイムで働いているそうです。まさに生涯一記者を絵に描いたような方です。(5年前、90歳の時にニューヨーク・タイムズがインタビューして書いた記事はとても興味深いです)

ニューヨーク・タイムズの記事では、「Perlmanさんはタイプライターを使い、パソコンを決して買わない」とのことでした。そういう、ウルトラベテランのアナログ記者もまた、キャンプに入れられそうだとMashableの記事は書いています。

そして、入社以来70年以上の大先輩を含めて、「全員」にブートキャンプ入りを命令する局長が、ローカル紙、AP通信などを経てクロニクル紙に入社したのは2006年。わずか7年前で当年36歳。なんと表現していいか分かりませんが、こういう荒療治をしがらみのない若い人物に任せること自体が、いま、米国の新聞が置かれている困難な状況を物語っているのでしょう。