例えば、最大手の読売は、読者向けに掲載記事を全てスマホで読める「読売プレミアム」(月額168円)を提供していますが、もし、これに朝日、毎日、日経、産経のほか、全国の新聞、雑誌、テレビから面白そうな記事をピックアップしてコンテンツに加えたら騒ぎが起きるだろうなと夢想しました。

でも、これは荒唐無稽なことではないのです。現にGunosyやSmart Newsなど様々なニュースアプリがあるというだけではありません。数日前に、ニューヨーク・タイムズ(NYT)のスマホ向けアプリ「NYT Now」をダウンロードしてみて実感しました。その日は遠くないかもしれない、と。

今年4月からスタートしたNYT Nowのことは、なんとなく知っていましたが、興味を惹かれたのはつい先日の「ニューヨーク・タイムズ 編集スタッフ100人削減」というNYT自身の記事でした。

100人もの大量解雇(といっても、かなり条件のいい早期退職優遇があるようですが)に加え、6月から始めたばかりのアプリ「NYT Opinion」は<it had not drawn a substantial audience.>という理由で早々と撤退するとした一方、同じく<it had not proved as popular as they had hoped.>と期待を裏切ったNYT Nowは存続することにした、とあったからです。なぜだろう?

NYT NowはiPhone専用アプリ。当方はiPhone。4週間無料とあります。というわけで、早速、インストールした次第。

見にくいかも知れませんが、画面上部の左側の「NEWS」ボタンをクリックすると、NYTの専任編集者が選んだNYT自身の主なニュースが要約と写真付きで40本余り出てきます。これが、機械処理でないのは、2,3行、2パラグラフで出てくる文章がとてもわかり易くまとまっているからです。(なお、この40本は課金制のNYTimes.comにグリーンダイヤモンドが付いていて、部外者なら月10本までという制約なしにサイトで直接、読めます)

で、画面上部右よりにある「↗」のマークを押すと出てくるのが、これも専任編集者が選んだ世界中の報道機関から選んだニュース「Our Picks」です。約40本。同じく全てに要約と写真がついています。今日、8日のOur Picksで、ヘェ〜と思ったのは、混迷が続くウクライナの首都キエフでは15日からのファッション・ウィークが予定通り開かれるというウクライナのKyiv Postの記事でした。そこまで、スタッフは目配りしてるんですね。読者にとっては便利この上なし。

スマートニュースに関わっている藤村厚夫さんの最近のブログ記事「サービスとしてのメディア/“コンテンツ中心主義”のたそがれ」では、ジャーナリズムは個々の読者にいかに大事な情報を伝えるかが大事で、コンテンツ第一とふんぞり返っていてはダメだという米国の論調を伝え、NYT Nowについて、こういう識者の発言を紹介しています。

New York Times にでさえ進化へのヒントはある。NYT Now のようなアプリにはこれまでとは異なる要素がある。段階的ではあるが、アプリのトップ画面に他社のコンテンツへのリンクを置くといった取り組みが見えてきた>

たしかに、NYT Nowにはプロの手になるサービス感覚があると感じます。煩わしい広告が付いていないのもいい。NYT首脳部は、この方向性に未来があると判断したのでしょう。

でも、これには週2ドルが課金されています。つまり、NYT Nowは、自社コンテンツだけでなく、世界中の報道機関のコンテンツをタダで手に入れ、それを加工してビジネスしていることになる。著作権の問題はないのでしょうか。

この問題は、1年ほど前に、記事のダウンロードと配信に関わる技術的な相違で違法、合法となるというような議論がありましたが、技術に疎い当方には理解不能。ただ、1997年、日本の大手紙がこぞって異議を申し立てた「トータルニュース事件」、2002年に読売新聞が提訴した「ライントピックス事件」はじめ、他社記事を使って隙間に広告を入れてビジネスをするケースでは、結果的に著作権問題で、その提供者が廃業に追い込まれるケースが多かったように思います。

が、時代はモバイル、アプリの時代になり、多くのニュースアプリに各新聞やテレビが自前ニュースを吸い取られ、間に広告が入っていても、最近は異議申し立てをとんと聞きません。そこへダメを押すようにニューヨーク・タイムズがNYT Nowで、大手を振ってのキューレーションサービス。

スタートから半年経っても、著作権に厳しい米国で異議申し立てがあったというニュースは聞きません。もはやニュースアプリはグーグルなどの検索サービスと同じような位置づけになったのでしょうか?(アプリでなくサイトで世界中のニュースを集約しているグーグルニュースは未だに広告を入れてませんが)

だとしたら、早い者勝ち。NYT Nowと同額の週200円なら、仮に10万契約で年間10億円、半額の週100円なら年間5億円。ニュースの目利きが利くプロの記者を相当数、専任編集者にしても十分利益が出そうですが・・・・他の無料ニュースアプリはダウンロード何百万を謳っていますから、あながち無理でもないようにも・・・・もしかしたら、それを恐れているのは先行しているニュースアプリ関係者かも、とまた夢想してしまいました。