前回の記事「もし大手紙がニュースキューレーションアプリに乗り出したら」で触れたように、いまやスマ−トフォン専用のニュースアプリが大流行ですが、南カルフォルニア大学(USC)では、そのずっと先を行くニュースアプリ開発などに取り組むクラス(講座)が今秋から始まっています。

全米有数のジャーナリズムスクールの一つである、USC Annenberg School for  Communication and Journalismに設けられた「Google Glass Class」がそれです。

まさに読んで字のごとく、グーグル・グラスを活用した次世代のジャーナリズムをどう切り開くかという野心的なプロジェクトを担うクラスです。指導者は自称テクノロジーオタクのRobert Hernanndez准教授。具体的には何をしようというのでしょうか。

このClassのページをご覧頂くと分かりますが、実は、このクラス一期生12人のうち、ジャーナリズム専攻は4人だけ。残りはコンピュータサイエンス、広告・PR、映画芸術、ゲームクリエーター、ウエブデザイナーなど多士済々。

南カルフォルニア大のUSB newsによると、ヘルナンデス准教授はこう信じているそうです。

<future storytellers will need both technical expertise, and reporting and writing skills>未来の書き手は、技術的な専門知識と取材、執筆スキルの両方が必要だ。

だから、キャンパス横断的に異分野のタレントが集められたというわけです。彼ら彼女らは、年中、グーグル・グラスを装着して、アイディアを練り、ブレインストーミングを繰り返し、学期末までに自分の成果物を作らねばなりません。

それは、従来のように、技術者がなんらかのソフトを作って、書き手に提供するという形ではなく、学生たち一人一人が、あらたなジャーナリズムの開拓者になることが期待されているようです。

ヘルナンデス准教授は「彼らは、言葉と画像を超えた多感覚表現に向かうだろう」「ジャーナリスト、語り手としてテクノロジーをハイジャックするのだ」「このデバイスでしか得られない表現は何かを考える」と言います。

技術オンチには、これ以上の説明は叶いません。ご容赦。ヘルナンデス准教授の個人ページ「Glass Journalism」に情報がいっぱいあるようですので、関心のある方は、そちらで。

ともかく、学生たちは張り切っているようで、前からグーグル・グラスを使っていたコンピュータサイエンス専攻の男子学生は「モバイルのアプリは来るべきもののほんのヒントに過ぎなかった。基本的に見出しを配ってるだけ。我々に出来ることはいっぱいある」と意欲満々。

また、USA Today Collegeの記事によると、PRを学ぶ女子学生は「大学のクラスというより、スタートアップ企業みたい」とし、「最もクールな点は、グーグル・グラスが作り出すジャーナリズムがいかに本質的なものになるかだ」と大きな夢を語っています。

まだ、グーグル・グラス自体が一般化していない段階で、そう簡単に「多感覚」で、「本質に迫る」ようなジャーナリズムを実現するグーグル・グラスのアプリが出来るとも思えないというのが、一般的な見方でしょうが、秋学期の終わる12月に、学生たちがどんなアイディアを出してくるか、楽しみにしましょう。それにしても、日本の大学では考えられない講座ですね。