前回の記事では、米国の有力ケーブルチャンネルHBO、4大テレビネットワークの一つCBSが、ケーブル局や衛星局をバイパスする独自のストリーミング配信を有料で開始する(CBSは開始した)という動きを紹介しました。

その背景には、ビデオ配信で世界的に急成長するNetFlixの存在があり、それを支えるのはインターネットの爆発とともに成長し、8人に1人はネットでしかテレビ番組を見ない現在18歳から34歳のMillennials(ミレニアルズ)世代ではないかという見方を紹介しました。

そこで、記事には「テレビ番組はネットで見る時代の幕開け」と一般ユーザーから見た見出しを付けたのですが、実は、こうした視聴方法の変化に対応して、米国では、旧来型の視聴率調査ではなく、テレビ受像機以外のデジタル機器ーーーパソコン、スマホ、タブレット、スマートテレビ、ゲーム機などーーーで視聴されたテレビ番組のデジタル視聴率調査を開始するという計画が公表されました。米国で視聴率調査を独占するニールセンとコンピュータソフト大手のアドビが提携して行うとのことです。(TV セットもデジタル機器だというツッコミはなしで)

ニールセンのプレスリリースによると、開始は来年で、今のところ名称は「Nielsen’s Digital Content Ratings, Powered by Adobe」となっています。その中で、こういう文言があります。「Online TV consumption is at an all time high」−−有料オンラインテレビの視聴は史上最高レベルだ。

今のテレビ視聴率調査は、われわれ一般視聴者には番組の人気度を知るバロメーターですが、もともとは、民放TV局の広告枠の料金を左右する指標なのです。(詳しくはこちら) 余談ですが、新番組の視聴率が低いと広告収入に影響が出ますから、担当スタッフのクビが飛んだり、途中で打ち切りになったり、時には、視聴率調査に協力するモニターを買収しようというような不祥事も起きるわけです。

また、視聴率調査は、どんな番組がどんな世代に受けるのかなどのマーケティング的な要素もあるのですが、前回記事で紹介したように、若者(ミレニアル世代)のテレビ離れが進む中では、そうした機能も失われつつあるかも知れません。

さらに広告主にとっては、TVセットでの数字は低くても、デジタル機器で見られている番組なら広告枠を購入する価値がありますし、テレビ局にしても、TVセット対象の視聴率は低くても、デジタル視聴率が高ければ、強気の交渉が出来るということになります。そこで、プレスリリースは書きます。<enable smarter buying and selling decisions>と。

まあ、TVセットでしか番組を見ない視聴者にとっては余り意味がないことかも知れませんが、デジタル機器でテレビ番組を見るミレニアル世代を中心とする若者にとっては参考になる数字が出てくるかもしれません。

さて、この新たな視聴率調査を技術面で支えるアドビが、先週、<U.S. Digital Video Benchmark−−Adobe Digital Index Q2 2014>を公表しました。その前書きにこうあります。

<the number viewers of free online videos and online TV is reaching new record levels every quarter>−−4半期ごとにオンライン視聴は新記録を更新している。

<With this shift in viewing habits, advertisers must adopt strategies to incorporate digital viewing>−−この視聴習慣のシフトに、広告主は対応戦略を立てねば。

前回紹介したComScoreのレポート同様、興味深いグラフ満載ですのでご覧頂きたいのですが、その中の一つを紹介します。NetFlixやHuluなどの有料ネットTVの月ごとのユニークユーザーの伸びを示すグラフで、半年間で85%も増えています。同時に、オンライン視聴は前年比148%、つまり2.5倍も増えたそうです。

スクリーンショット 2014-10-27 12.35.39アドビもニールセンと同様の問題意識から新たな視聴率調査に乗り出したことが分かります。日本在住の年寄りにはちょっと現実感の薄いデータが多いのですが、これが米国の現実なら、いずれ、遠くない時点で日本でも起きることなのでしょう。