アフガン戦争に関する米軍事関連文書、米外交文書の大量公開で世界的に知られたウィキリークス創立者のジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏を巡る動きが急に目立って来ました。

アサンジ氏は2012年6月19日に、ロンドンのエクアドル大使館に駆け込み、8月16日に亡命申請が認められましたが、以来、一歩も外に出ていません。”籠の鳥”生活は今日現在で964日。43歳の最近はこんな風貌です。

このところ、目立った動きは報じられて来ませんでしたが、2月に入って次々とアサンジ氏の名前を見かけるようになりましたので、いくつかを紹介します。もしかしたら、岩盤の下が緩んできたのかもしれません。

まずは、国連人権理事会の動きです。1月30日までジュネーブでの会合を踏まえて、非営利報道機関IPS(Inter Press Service)が、Glimmer of Hope for Assange(アサンジに微かな望み)と報じました。

人権理事会のことは日本がらみの問題がない限りめったに報じられないので知らなかったのですが、19日から30日まで、国連加盟各国の人権状況を審査する普遍的・定期的レビュー(UPR:Universal Periodic Review) が行われ、スウェーデンに対しても多くの改善勧告がなされたということです。

その最終報告書、人権理事会のサイトには掲載されていませんが(渋谷の国連広報センターによると掲載には1月程のタイムラグがある由)、なぜか個人サイトに掲載されていました。それによると、2パラグラフ(項目番号37−38)にわたって「アサンジ問題」についての勧告が盛り込まれています。

法律に疎いので不正確かも知れませんが、一口でいうと、スウェーデン当局がアサンジ氏に犯罪容疑をかけているなら、ビデオリンクで尋問したっていいし、捜査員がロンドンまで出張するなどの手もあるはずなのに、送還を求めているだけなのは変だ、それでアサンジ氏が実質的に長期の勾留状態になっている、といったことです。

IPSの記事によると、エクアドルのほかアルゼンチンやキューバなど5カ国から出されたという勧告を取り入れたということですが、スウェーデン代表は「司法の問題に政府ができることは限られているが、研究して何らかの形で司法手続きを進めたい」とし、6月15日に始まる次の会合前に返事をすると回答したということです。

アサンジ氏としては、無条件のスウェーデン送還は、スパイ容疑をかけている米国への転送につながるのを恐れているわけで、もし、きちんとした司法手続きが開始されれば、ハニートラップの可能性もあり、根拠の薄い女性への暴行容疑などで、起訴にも至らず、無罪放免の可能性が出てくるし、米国への転送を避けられるというわけです。彼の法律チームのトップは国際的にも高名なスペインの法律家だそうですから。

これを受けて、人権理事会のエクアドル代表が、この問題で「エクアドルはスウェーデン政府と話し合う用意がある」と表明、また、エクアドルの別の国連代表も「スウェーデンの捜査当局がロンドンに来るなら、アサンジ氏に尋問に応じるようにする」など前向きな姿勢を強調しました。

ところが、Wikileaksの2月5日の記事によると、スウェーデン側は最終報告書が出た後の会見は4分で打ち切り、その後、Wikileaksの記者がスウェーデン外務省法務担当の高官にインタビューしたところ、「犯罪容疑のある人物は、起訴されていなくても勾留期間に期限はない」と、スウェーデンの立場を正当化しました。

これに対して、アサンジ氏はこう語ったということです。「スウェーデンは起訴なしに無期限の勾留という、(米軍の)グアンタナモ式の最も恥ずべき措置を採り入れた」

そのWikileaks、自身のサイトでは日記的な記事だけで、暴露記事の更新は止まったままですが、6日に新たなサイトgovwaste.co.uk.を開きました。

ここでは、アサンジ氏がエクアドル大使館から逃げ出さないように、又は出てきたら即逮捕するために大使館の周辺を24時間、監視、警備している警察の費用が膨れ上がっていることを秒単位で表示しています。

その額は1千万ポンド(18億円強)を超えました。この推計は警察自身が発表した数字を元にしているとのことで、もし、これを他に使えば、貧困者向けの食事830万食分、子供への予防接種5万人分、学校教師の年間サラリー461人分・・・・などと表示し、いかにこの警備が税金の無駄遣いかを煽っています。

警備費の膨張は年明け以来、英国のメディアがこぞって書き立てていることで、英国政府も頭の痛いところのようです。で、このサイト開設前日の5日に、ニック・クレッグ(Nick Clegg)副首相が、自身のラジオ番組Call Cleggで、この問題について「英国の納税者にとってもスウェーデンにとってもイライラする状況だ。アサンジ氏はスウェーデンに行って法の裁きを受けるべきだ」と、思わず?本音を語ってしまいました。

アサンジ氏は激怒したようです。「自分は起訴もされていないのに、なんで裁判を受けろなんて言うんだ!」 というわけで、クレッグ副首相を「名誉毀損」で訴えられないかの検討を自らの法律チームに指示したそうです。

アサンジ氏を巡って、このような様々な動きが集中的に出てきました。日本のメディアはアサンジ氏への関心を失ったかに見えますが、英国では、まだまだ”人気”があるようで、こうした動きの積み重ねが事態打開につながる気がしないでもありません。

「表現の自由」との関わりは勿論ですが、有罪判決どころか起訴さえされていない人間を1000日近くも閉じ込めておく現代のロンドン塔問題は早く解消して欲しいのです。