YouTubeへの投稿で世に出た人はたくさんいますが、私の記憶に強く刻まれているのは3人です。

まず、「Evolution of Dance」のジェドソン・ライプリー(Judon Laipply)氏。YouTubeが始まって間もない2006年公開の傑作で、今だに着実にViewが増え、間もなく3億回。モノ真似ダンスが絶妙なのがウリのコメディアンですが、彼は大学院を出ていて、Motivational speaker、つまりやる気を起こさせる講演をするのも仕事にしているのが印象的でした。

次は韓国のPSY(サイ)さん。私には良さがよく理解できませんが、とにかくViewが桁違いに多い。なにしろ音楽ビデオ2012年の「GANGNAM STYLE  M/V」は、なんと23億回も見られるというモンスタービデオです。その結果、本人だけでなく、親族も潤っているというのが興味深くて2013年末のブログに書きました。

3人目は、Mat Harding君。世界中を旅し、世界遺産の前などで踊りました。2003年にコンピューター関係の仕事を辞め、放浪の旅に出たのですが、仲間内で評判だったビデオを編集した「Where the Hell is Matt?」を2006年にアップしました。その後、スポンサーがついたようで、新作を次々と発表し、次第に巻き込む人数を増やして陽気に踊るパワーに並々ならぬものを感じました。(さすがに南北境界線の北朝鮮兵士は踊らなかった(笑)けど、彼のチャレンジ精神はスゴイ)

前置きが長くなりましたが、この印象的な3人に匹敵しそうな人物を発見しました!その名はLouis Cole(ルイス・コール)といいます。

 

彼のことを知ったのはAdweekのこの記事です。ケーブルテレビのドキュメンタリーチャンネルであるDiscovery Channelを有するDiscovery Communicationsのデジタル部門であるDiscovery Digital Networks(DDN)が、「global travelerのLouis Coleと契約した」とありました。

「彼の<FunForLouis>と題したYouTubeチャンネルは130万人のサブスクライバー(登録者)と1億2千万Viewを、3月にスタートしたアドベンチャーを特集するネットワークSeekerにもたらすことになる」と説明しています。

まず、Seekerとはなにか。DDNには計7つのオリジナルビデオ番組があります。そのひとつがSeekerで、こんな面白そうなビデオがズラリと並んでいて、NMRの記事によると、DDNの中ではSeekerが1番人気のようです。(スマホのアプリもあります)それをさらに強化しようというわけです。

もう具体的なプランもあって、Coleさんは、2,3ヶ月かけて、小型飛行機で世界22カ国を探検する<Flying the Globe>(仮題)というビデオシリーズを作るようです。なんでも大都市から電気の通わないところまで訪れ、各地で人々が直面する問題についての関心を高めるのだとか。

結構タフで、ハードルの高そうな企画ですが、それに抜擢されたColeさんは、英国生まれの32歳。彼もまたHardingさんと同様、コンピューター関係の仕事をしていましたが、20代後半から流浪の旅に出ます。で、デジタル・ウェブ関係はお手のものですから、行く先々でビデオを撮り、その日のうちに編集してYouTubeにアップします。

YouTube以外にも、Facebookも頻繁に更新し、8万人のお友達に配信されています。そのほかTwitterに63万人Instagramに93万人のフォロワーがいて、Tumblrにも写真満載、フォロワーが3.5万人のGoogle+にもYouTubeと同じビデオをアップするなど、ソーシャルメディアへの全面展開を軽々とやっています

彼はノマドを自称していて、ずっと旅から旅が仕事なのですね。その生き方について、HuffintinPostの英国版は「我々はホントに彼の仕事が羨ましい。だって彼は自分のカネは一銭も払ってないんだぜ。世界で一番の仕事だと思う」と持ち上げ、同じく英国メディアのOnVidは「彼は、世界で生きる全く新しい方法をインターネットを使って発明した。まさにミレニアル世代の典型だ」と書いています。

(旅行費用についてはともにハッキリしたことはわからないようですが、半分はYouTubeの広告収入と推定、残りについてはHuffPoは「スポンサーが付いてる」とし、OnVidは「訪問国の観光協会あたりのスポンサーシップだろう」としています)

OnVidはさらにこう書きます。「だれも以前はこんな風に生活したことはなかった」「ルイスのやってることは40歳以上の人々には多分、殆ど意味がないだろう。生活のためにインターネットを使ってる。それは独創的で途方もないことだろうから」

DDNがLouis Coleに着目したのはまさに、その点だったのでしょう。DDNのゼネラルマネージャーがこう語っているのです。「彼のビデオは、憧れるようなアドベンチャー番組を望んでいる巨大なミレニアル世代に訴えかけるんだ」

新聞離れどころか、テレビ離れの傾向が様々な形で報じられている米国。その傾向は、現在18歳から35歳までのミレニアル世代に顕著だといいます。そこでケーブルテレビのDiscovery Channelが本業のはずのDiscovery Communicationsが、カニバリズムのリスクを取りながら、先を見越して始めたのがSeekerをはじめとするDDNのデジタル・ビデオ配信なわけで、Coleの生き方が、テレビ離れしつつあるデジタルに強い世代に受けると判断したわけです。

いわば、新時代の申し子的なスターとして、冒頭に紹介した3人にも匹敵する存在として注目する所以です。YouTubeの彼のサブスクライバーは毎日、平均2436人のペースで増え続けています。