どんな実験かというと、明日15日から19日まで、ニューヨーク・マンハッタンにあるニューヨークタイムズ(NYT)本社ビル内のパソコンからNYTのホームページへの接続がブロックされ、見たければ、スマホかタブレットを使って、モバイル版のサイトに接続するしかない状態にするということです。

これは、12日に社員向けメールで突然、通知されました。

署名のArthurはサルツバーガー会長、MarkはトンプソンCEO、Deanはバケー編集主幹で(Andyは存じませんが、論説委員長のAndrew Rosenthalかも)、実験は全社的な意思で行われることを示しています。

この間、社員が社内LANに繋がったパソコンからホームページにアクセスしようとすると「スマホかタブレットを出してください」というメッセージを受け取ることになるそうです。(仕事で、どうしてもアクセスが必要な場合は、自分のメールアドレスを入力すれば、その日1日はOK)

なぜ、あえてこうした不便を社員に強いるのか。それは、デジタル時代の戦場は、すでにパソコンではなく、モバイルに移っていることを、年長者も少なくない社員全体に体感させることでしょう。

サルツバーガー会長の名セリフのことは、このブログでも紹介しました。2月のRe/code主催のメディアカンファレンスで「<The battle will be won on the smartphone>−−闘いはスマホ上で決まる」と述べたのです。

また、ライバル、ワシントンポストのマーティン・バロン(Martin Baron)編集主幹が4月にカリフォルニア大リバーサイド校で行った熱い講演のことも紹介しました。

バロン主幹はこう言いました。「デジタル社会になりつつあるというのは間違っている。我々はデジタル時代にいる。そういう言い方も時代遅れだ。我々はモバイル時代にいる。2020年には地球上の大人の80%がスマホを所有すると見られるのだから」

米大手紙首脳の認識は見事に一致しています。この社員向けメッセージの中でも、最後にこう記しています。

「当社へのトラフィックの半分以上がモバイルからだ。この一時的な措置で、モバイルを我々の為すこと全ての、より一層の核心部分にするような刺激になることを期待している

そういえば、先日、公表されたMary Meeker女史のプレゼン資料「Internet Trends 2015」でも、スクリーン別の消費時間はモバイル画面では、2010年がo.4時間に過ぎなかったものが、2015年は2.8時間に急増する一方、パソコンのそれは5年前の2.4時間から変化がなく、モバイルを下回っています。

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テレビは微減で、全体の時間が7.6 時間から9.9時間に増えていますが、その増えた分はすべてモバイル端末での視聴時間ということになります。そして、おそらくこの傾向は続く、となれば新聞もモバイルファーストにしなければ、という判断も当然なのでしょう。

しかし、社員たちは自社サイトを、おそらくパソコンディスプレーでしか見ていない。モバイルで見ることはめったにない。ならば、1週間、モバイル版ホームページやニュースアプリ「NYT Now」などを見るしかない環境におくことで、紙の新聞記事がモバイルでは、どういう風にまとめられ、表示されているのかの経験を積ませ、改善アイディアを出させよう、ということでしょうか。

モバイルファーストが、いよいよ絵空事ではなくなってきたことを実感します。