かって米新聞チェーン、ナイトリッダーでデジタル部門の副社長を務めるなど、新聞業界に30年の経験を生かしたメディアアナリストとして著名なケン・ドクター(Ken Doctor)氏が、メディアへの投資家に向けて、デジタルメディアの攻勢の中で既存新聞社の置かれている状況を10の数字を挙げてレクチャーした内容をアップしています。

さすが専門家だけあって、米国メディアの現状とその進むべき道について、端的に理解できる内容ですので、備忘録を兼ねて、意訳も交え、要約したものを紹介します。

<1400万ドル>ニューヨークタイムズ(NYT)の今年第1四半期における月間デジタル広告収入の数字だ。これはオンラインニュースサイト、ハフィントンポスト(HuffintonPost)のそれと同じというのが興味深い。業界トップクラスの記者1,300人を擁するNYTと、数百人のスタッフと世界数十万人の(無料)寄稿者に頼るHuffPoの広告価値が同じだからだ。なお、グーグルの月間収入は57億ドル、フェースブックは12億ドルで、この2社で米国のデジタル広告の52%を占めている。

<50%>今日、ほとんどのニュース会社は、デジタルアクセスの半分以上はモバイル機器からと言っている。スマホ2対タブレット1の割合だ。調査会社Gartnerの予測によれば、2008年までに、世界中のウェブアクセスの50%はモバイル経由となる。ニュースはモバイルにもっとも適している。内容がどんどん変わるし、出先で見られるからだ。国内外の新聞社はこれに注目しているが、地方紙では取り組みに苦労している。

<54581>LinkedInに載っているsocial marketing関連の求人数だ。これは、米国の新聞社の編集局の人数より2万も多い。それは、earned mediaの新しい世界だ。我々がシェアする何十億のコンテンツはウェブ上にばらまかれ、その殆どすべてが無料で見られる。今時の新たなビッグメディア−−Buzzfeed、Vox、Business Insider、Viceなどすべてが、earned mediaの形式だ。

<1:2>ビデオ広告はテキスト広告より単価が高い。しかし、多くの新聞社は安いコストで十分な視聴者を引きつけるニュースビデオを潤沢に生み出せていない。一方、ハフィントンポストは、文字ニュース2本に対しニュースビデオを1本の割合で作るという計画を立て、大成功している。Huffpost Liveでは3年足らずで23億回ものviewを稼いだ。週刊ニュースのHuffPost Showもある。加えて、新たなビデオジャーナリズムネットワークのOutspeakも始める。それは、Huffpoを手に入れた大手通信会社Verizonが身近なビデオプロバイダーに変身するということだ。これが意味するのは、会社がメディアの世界に飛び込むパイプであり、その大きなトレンドは<news>の向かう先について多くを教えているということだ。

<63%>580億ドルにのぼる米国のデジタル広告のうち、約3分の2にあたる63%が、プログラマティック広告になった。事前に決まった場所に広告を出すのでなく、ユーザーの動向に合わせて臨機応変にマッチした広告を出すもの。かって、新聞社はバカにしていたが、いまやその最適化に乗り出している。

<75%>Buzzfeedがソーシャルメディアから得たトラフィックのシェア。Facebookと組んだPeretti CEOの判断が賢明だったと教える数字だ。デジタルファーストのチャンピオンDesert Digital Mediaのソーシャルからのトラフィックは30%、ボストンの公共ラジオ局のリーダーWBURは33%、切れ味のいい記事で人気のQuartzでは60%。対して、殆どの日刊紙は6~12%だと聞いている。伝統的なブランドはウェブの初期にはnon-socialで大きな顧客層を築いたが。今はソーシャルこそが、新たな若いユーザーへの主要ルートなのだ。

<1.5 million>NYTの紙とデジタル契約者の合計読者数。(紙は約50万部、デジタルは100万部弱) 注目すべきは、この数字が20年前の読者数と同じだということ。国内最高の一般ニュースソースにお金を払うインテリ層は、昔も今も人口の0.5%だ。(米国の人口は3億人強)今も、同じ数だけ読者がいるということは、NYTがとてもうまくやってる会社で、独立の存在として生き残れると見る人もいる。

<36,000>いま、米国の新聞社で仕事をしている記者職の数。2007年以来、2万人も減った。今もそうで、何十人も削減されれば報じられるが、2,3人とか半ダースでは報じられない。減らすのは、収入が増えない中で利益を維持するためだ。こうしたなかで、コミュニティの人々が新聞によって10年前には知り得たことが、今日ではどうなのかという危惧が生じている。

<0.5>ボストングローブ紙のサイトの月間ユニークビジター(UV)のうち、デジタルのみの有料契約者の割合。UVは1,100万で、契約者は6万5千。NYTのUVは6,000万で、有料契約者は96万だから、その割合は1.5%となり、NYTが成功していることを示している。グローブの率は地方紙ではトップクラスだが、NYTの3分の1で、他の地方紙はグローブよりさらに低い。

<44>カナダ・ケベックのLaPresse紙の読者が、タブレットで同紙を読むのに費やす時間(分)だ。素晴らしい数字だ。デジタルで読んでもらうのも悪くないことを示している。カナダ最大の新聞のTorontoStar紙は、9月にタブレット端末での購読がスマホやパソコンより、読者との関係を作れ、収入も見込めるという同紙の考えを確認するテストを実施する。