米新聞・出版業界の不況、常態化したせいか日本ではもうめったに報道されることもなくなりましたが、いまもレイオフの嵐が吹き続けているようです。

その直近の動きはThe AwlがWelcome to Media Layoff Seasonという皮肉な見出しの記事でまとめていますが、今週からは大手新聞チェーンの一角、Tribune Publishing(TPUB)を代表するロサンゼルスタイムス(LAT)でもbuyout(早期退職勧奨プログラム)の受付が始まりました。

CNN Moneyによると、編集局だけで最低50人が削減されるとのことで、これで編集局スタッフは450人以下になるとか。応募者が目標に達しなければレイオフが実施されるそうです。

Jack Griffin CEOは「Tribuneが長きに亘って成功するには厳しい決断と必要な手段を取らねばならない」という悲痛なメールを社員に出しましたが、「どうせなら、紙の新聞は止めて、タブレット端末を何百万台も無料で配り、ニュース分野を圧倒的に支配する<Netflix of New>を目指せ」という刺激的なアイディアを詳細な試算とともに提示した金融アナリストが現れたそうです。

これは、国際的な金融関連企業MacquarieグループのアナリストMatthew Brooks氏が顧客の投資家向けに出したレポートのようで、原文はネット上では探せませんが、それを入手したとみられるBusiness Insiderが<How one newspaper company can save itself by giving away free iPads and becoming the ‘Netflix of news’>と題して報じたものです。

ややこしいのですが、理解出来たことを要約すると以下の内容です。要約の下に試算表をペーストしますので、参照しつつご覧ください。

*印刷と配達・流通には昨年、4.31億ドルかかっていたが、印刷中止で3年間の節約額は(部数減のトレンドを勘案して)その9割として11億ドルになる 計算だ。これで、紙の現契約者310万人に、最高値でも350ドルのタブレット端末を無償で配布し、講読料は月2ドルと超廉価とする。

*TPUBの抱えるLATはじめ、シカゴ・トリビューン、ボルチモア・サンなど日刊紙10紙のサイト全体の月間ユニークビジター(UV)は4,200万人だ。それを対象に「講読料月2ドル」の条件でデジタル購読者を募れば、超廉価なので3年間でUVの20%、800万件が見込め、その年間講読料収入は2億ドル余りになる。

*収入はデジタル講読料にデジタル広告、さらに現在もある記事のシンジケーションビジネス収入を加えると3年後には合計4.91億ドルとなり、その後も増え続ける。

*支出は、印刷、配達・流通費がゼロとなり、その要員も不要になるので、残った社員の給料を3年後に50%アップしていても3.7億ドルで済む。印刷要員などの削減は、今の流れからするといずれなくなる職種だからやむをえない。

Brooks氏の結論はこうだそうです。「こうした劇的な動きはどの新聞社にも開かれている。小売りのアマゾン、ビデオのNetflix、検索のグーグルなどと同じようにニュースカテゴリーを圧倒的に支配する会社はまだ存在しないが、我々は<Netflix of News>になりうる新聞社に投資する機会を狙ってる」

う〜〜む、美味しそうな話です。でも、この手の話って前からあったんですよね。

このブログでも、すでに4年前に「タブレットを抱き合わせた「『未来をつかむ』新聞 」というタイトルで、米国日刊紙フィラデルフィア・インクワイアラーとタブロイド紙フィラデルフィア・デイリーニュースの共同サイトPhilly.comに、こんな募集広告が載った話を紹介しました。5,000台限定で、1年ないし2年契約すればタブレットを当時としては格安の値段で譲ります、っていうことでした。

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この時、新聞社側は、「1週間で完売」を見込んでいましたが、その後の報道では「6週間たっても、半分程度しか売れなかった」という悲惨な結果に終わったのです。それを報じたのは、話題にしたLATで、見出しは<Will computer tablets help save newspapers?>とあります。4年たっても結論は出てないということでしょうか。

なお、当ブログでは過去に、バーンズ&ノーブル製のタブレット型電子リーダーNookとNYタイムズの購読契約をバンドルしたキャンペーンや、欧米の新聞事情に明るいFrederic Filloux氏の、NYタイムズのようなブランド力のない中堅紙でも、紙を止め、オンラインだけで経営が成り立つという試算などを紹介しました。

それらはみんな3年以上前の話です。果たして、今、本格的なモバイル時代を迎えて事態は動き、<Netflix of News>は現れるのでしょうか。