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それにちなんで読売新聞が行なった「新聞」に関する世論調査に関する特集記事を先週末に読みましたが、どうもしっくりきません。(残念ながらサイトに記事はないようです)
しっくりこなかったのは、2ページにわたる特集面の主見出し<「新聞報道を信頼」8割>にではありません。<参院選で重視「新聞」62%>という小見出しで説明されている部分と、後段に述べられている<新聞を読む時間>についてです。

なぜか。今年2月の拙ブログ「米大統領選報道 有権者にとって新聞は脇役」と、NHKの生活時間調査に関連する「新聞が報じない新聞離れ」の2つで紹介した内容とあまりにかけ離れていることに違和感があったからです。

まあ、前者はアメリカのことですし、後者は調査方法が異なりますから一概に比べられないかも知れませんが、各々の数字から受ける印象の違いは顕著です。

読売の調査では、<7月の参院選で特に重視したメディアを3つまで選んでください>という設問に対し、新聞62%、NHKテレビと民放テレビがともに57%と飛び抜けています。そして、<ツイッターやフェイスブック、LINEなどのソーシャルメディア>を選んだ人は11%、<ソーシャルメディア以外のサイト>は8%に止まりました。念のためですが、「3つまで選べる」中に、ソーシャルメディアやそのほかのサイト挙げた人は10%前後しかいなかったのです。

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一方、米国はどうか。これはインターネット関連調査では定評のあるPew Research Centerが今年2月に公表したものですが、<大統領選に関して「最も役立つ」ニュースソースを11の中から選べ>という設問に対し、ソーシャルメディアが、ケーブルテレビのニュースに次いでの2位で14%、ニュースサイト・アプリは4位で13%を占めたのです。これも念のためですが、こちらは「1つしか選べない」設問への回答です。そして、紙の新聞はローカル紙が3%、全国紙が2%と、それぞれ8位と9位に沈みました。この彼我の結果の違いはなんなのか?

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もし、日本で「選挙に最も役立つニュースソースを一つだけ選べ」と問われたら、ソーシャルメディアやニュースサイトを挙げる人はどのくらいいるのか?日本人のネット観を知る上でも興味深いことです。

さて2点目は、新聞を読む時間についてです。新聞の世論調査では、<30分ぐらい>が最も多く23%、以下<10分ぐらい>19%、<20分ぐらい>18%と続き、<全く読まない>が18%だったとあります。

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ということは82%の人が何分かは新聞を読んでいると解釈できます。本当なら素晴らしい。しかし、拙ブログで紹介したNHK放送文化研究所が5年毎に行っている生活時間調査によると、事態は全く異なって見えます。

NHK調査の方は、素朴に「どのくらいの時間、新聞を読みますか」と聞くのではなく、1日24時間を15分刻みにした二日ぶんの表を配り、そこに新聞を15分読んだらそのようにマスを埋めていく形式で、実際に新聞をどのくらい読んでいるかを調べるのです。で、1マスでも<新聞>で埋めれば「新聞の行為者」にカウントされ、その割合を年代別にグラフにしたのがこれです。

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2015年調査で、新聞を15分以上読んだ人を10年前、20年前と比較しているのですが、新聞好きとしては目を覆いたくなるような悲惨な状況です。

全体で「新聞の行為者率」は33%に過ぎません。20年前に比べると、20代、30代が5分の1に、40代が3分の1、50代でも半分近くにそれぞれ激減しています。しかも、これには、20年前には存在感が薄かった新聞社のニュースサイト(ちなみに新聞社サイトの先駆けというヨミウリオンラインの誕生は1995年)の閲覧やチラシを見る時間も含むとのことですから、尚更です。

またまた念のためですが、こちらは「15分のマスを一つでも新聞で埋めた人」の割合ですから、新聞調査と同列に比較できません。(5分とか10分しか読まなかった人は15分のマスを埋めなかったかもしれないので) とはいえ、一つもマスを「新聞」で埋めない人がこれほど増えているのを目にすると、前述のように「82%の人が新聞を読んでいる」とはとても思えません。残念だけれど。

もちろん、記事の末尾には<「全く読まない」と答えた人は40歳代以上では2割未満だったが、30歳代では43%、18–29歳は38%に上り、若い世代の「新聞離れ」が浮き彫りになった>と書き加えられてはいるのですが。