2012年4月以来、ロンドンのエクアドル大使館で籠の鳥生活を強いられている、ウィキリークス(WikiLeaks)の創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏が久しぶりに一部で注目を集めています。

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日本の大手メディアは殆ど報じていませんが、彼のパソコンからのインターネット接続が16日に突然、切断されたことで、「我々の手でアサンジ氏にネット接続を」という声が欧米版2ちゃんねるともいうべき4chanで沸騰したのです。

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このネット切断が、米大統領選クリントン陣営幹部の電子メールがハックされ、WikiLeaksから発信され続けている中でのことだっただけに、『政治的だ!」「米国の圧力だ!」などと感じる人達で盛り上がったわけです。

で、実際にどうするのか。19日の深夜2時半頃に始まった書き込みは、膨大な数の投稿を集め、いろんなアイディアが出ましたが、朝方には「みんなで大使館を取り囲んで、モバイルWiFiをセットアップしよう」ということに落ち着いたようです。スマホでホットスポットを作れば、誰かの電波がアサンジ氏のパソコンに届くかもしれない、と。(Edition1から4までがアーカイブ化されています)

「みんなでやれば、アサンジ氏に継続的なネット接続を提供でき、精神的なサポートにもなる」というわけですが、果たして実行されたのか?

オンラインニュースサイトとして躍進中のViceの一部門であるMotherBoard英国版の記者が、そんな興味を持ってエクアドル大使館前に行きました。「10月後半の昼下がり」としか書いていませんが、記事の日付は<10月20日>なので、4chanで盛り上がった当日の19日か翌日の20日のことでしょう。

そこで記者は、スマホでホットスポットのオンにしたりオフにしたりしている青年に出会います。「アサンジ氏の助けになりたいんだ」と青年は言います。

しかし、周りにはそんな人はいない。彼自身「ホットスポットをセットアップしてる人は見かけないな」と語ったそうです。

ただし、ホットスポット設定とは関係なく、週3回、アサンジ支持を表明するため、大使館前に立っているという高齢者3人組によると、「ホットスポットを試みている人を何人か見かけた」ということです。

とはいえ、スマホのホットスポットでは届く距離は極めて短いはずで、一人や二人がそこそこの規模の大使館の周りでモバイルWiFiをオンにしても、館内の何階にいるかも分からないアサンジ氏のパソコンが感知する可能性は低いでしょうね。

英国のiNewsも20日付けの記事で、このモバイルWiFiのことを取り上げ、「英国redditでもアサンジ支持者たちが大使館へ行ってセットアップしようと議論したが、それが成功する見込みは薄い」と指摘するとともに、そのモバイルWiFiの電波を阻止するために強力なJammer(妨害電波発生装置)が使われた可能性に言及しています。

おまけに、WikiLeaksのツィートによると、重武装の警官が大使館前に現れたとのことです。どうやら、「アサンジ氏にネット接続を」というアサンジ氏とWikiLeaks支持者たちの掛け声が実現する見込みはとても薄そうです。

一方、米国の有力紙の一つシカゴトリビューンは20日に<Bravo, Ecuador, for unplugging Assange>という強烈な社説を掲載して、アサンジ氏のネット接続を切断したエクアドル政府の決断を<ブラボー>と絶賛しました。

「これはアサンジを黙らせ、彼のオペレーションを抑圧するものではない。クリントン候補を貶めるプーチン・アサンジキャンペーンの本拠地に、エクアドル大使館がなるのを防ぐためなのだ」

そしてこうも書きます。「忘れるな。アサンジとプーチンの関係を。2012年、アサンジはロシア国営プロパガンダテレビ局で10回にわたり、トーク番組を流したことを」と指摘し、「The Useful Idiot (便利な間抜け)is now unplugged. Good.」と結んでいます。便利な間抜けとはもちろん、ロシアにとってでしょう。(トランプ候補にとってもかもしれませんが)

ここまで書かれては、エクアドル政府がアサンジ氏のネット接続を再開するのは当面、あり得ないでしょう。

そういえば、日本時間の今朝方、WikiLeaksがこんな物騒な話をツィートしていました。アサンジ氏のネット切断に抗議して、米国のインターネットを停止するような動きがあるということを示唆してるように取れます。「そんなことは止めて」と呼びかけているのですが。

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幸い、今のところ、米国のネットに変調があったという話はありません。そしてアサンジ氏のネット接続が成功したという気配もまだありません。