今朝方はすっかり冷えて、長袖のヒートテック下着を引っ張り出しました。そこで思い出したのが、ロサンゼルスタイムス(LAT)が最近報じたハイテク生地のことです。

LATがsmart fabricと表現したこの生地は、バージニア工科大の研究チームが11年間に亘って開発を進めてきたもので、このほど科学誌Science Advancesに発表されました。論文では「Self-powered textile」と書いています。

論文はサイトで全文が公開されていますが、当方が解釈すると間違うでしょうから、LATの記事から紹介すると、太陽光の熱と着用した人間の動きで生ずる摩擦熱をこの特殊繊維で電力に変えて、かつ蓄電するというものです。

その現物は、まだ225㎠のものしかなく、綿生地のような柔軟性にも欠けているとのことです。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-03-9-43-45しかし、これを進化させ、織り込んで生地に出来れば、バッテリーを持ち歩かなくても、スマホなどの携帯端末の充電が常に可能になるだけではなく、さらに暖かなガウンや防寒具などにもなると言うのです。一体、どういう仕掛けなのでしょうか。

科学に強い方は、是非、論文に目を通していただきたいのですが、要するに、特殊な太陽電池と、日常の動きで生ずる静電気を取り込む摩擦電気ナノ発電器、電力を蓄えるというsupercapacitorsというコンデンサーをそれぞれ繊維のように細長く引き伸ばし、それを一緒に織り込んで生地状にするということのようです。

今のところ、ファイバーの長さは15〜20センチほどで、太さは2ミリほどだそうですが、これを0.5ミリほどまで細くできれば、しなやかな生地になると、研究チームのトップ、Wang教授が語っているそうです。

しかし、それは、生地全体をこうした特殊ファイバーで作る場合のことで、Wang教授によれば、ファイバーの何本かづつを綿や羊毛などの生地に混ぜて織り込めば、そうした生地の柔らかさを損なうことなく、携帯電話の充電くらいは論理的にできるはずだということです。

そして、この各種ファイバーが進化して、普通の繊維に織り込まれる割合が高まれば、モバイル機器の充電だけでなく、ファッションなどにも活かせ、LATの記事では「LEDライト付きのガウン」「心臓その他をチェックし、データを表示するフレキシブル画面の埋め込み」「電子装置を埋め込み、温度、湿度、有害物質などをモニターし、体を温めたり、汚染を警告したりする」などの夢の用途を例示しています。

ただし、そこに行くまでに課題はまだまだあるようです。とにかく、より細いファイバーにしなければならないし(それでフレキシブルさが向上する)、例えば洗濯しても機能を失わないような耐久性も高めねばなりません。蓄電能力はじめ、電力性能向上にまだまだ研究を続けねばなりません。The more power, the betterですから。

本当の意味での「ヒートテック」衣料が待ち遠しい老境です。