驚きました。昨日のNFLスーパーボウルで流れたハイテクを存分に活かした”ライブ”CMのことです。

私はCMなしのNHKBS1でのテレビ観戦ですから、実際にはリアルタイムで観たわけではありません。試合中にマイクロソフトのタブレット、Surfaceが度々映り、またコーチたちのヘッドセットが、かってのモトローラからBoseに変わっていることに気づき、そのライセンス料はどのくらいかな、ググっていたら、USATodayのこんな記事に出くわしたのです。

<Hyundai’s ‘live’ commercial puts deployed soldiers at Super Bowl with families—現代自動車の”ライブ”CMはスーパーボウルで兵士を家族のそばに置いた> その”ライブ”CMはこれです。


ハイテクを駆使した圧倒的に面白い話ですし、感動的でもあるCMです。しかし、一夜明けても日本語メディアでは紹介されていないようなので、記録しておきます。

ビデオを先にご覧になった方は大要、お分りいただけたと思いますが、ビデオはポーランド、Zaganの米軍基地の空撮から始まります。その巨大な格納庫では、現代自動車が大型スクリーンと飲み物などを用意したスーパーボウル観戦パーティが開かれています。

そして、そのうちの3人が、格納庫の一隅に設置した大型ビニールプールのようなPodと呼ばれるスペースに別々に入ります。

壁面が360度スクリーンになった内部で、中央の椅子に座った兵士は、バーチャルリアリティ技術によってスタジアムに現代自動車が用意した特別席に座った気分で、臨場感あふれるゲームをリアルタイムで観ています。

ふと、横を見ると、特別席にはなんと、もう一年近くも会っていない家族がいるではありませんか! 国に残した18ヶ月になる赤ん坊を抱いた夫、婚約者、母親・・・兵士たちの映像もヒューストンのスタジアムに送られていて、互いに涙、涙、そして笑顔。

Good Morning Americaという人気番組で取り上げ、その舞台裏を取材したABCnewsはこれを<virtual reunion=バーチャル再会>と呼びました。

そして画面には「Watching the Super Bowl is amazing  /  Watching it with the ones you love is better」と出た後、「Better Drive US. Hyundai」というエンドロールで結ばれます。96秒の長尺です。

このCMが流れたのは、Post-Gunと呼ばれるゲーム終了直後のスロットでした。ゲームが始まってからポーランドで撮影を開始し、それを、どうやってゲーム終了前にミニドキュメンタリーに仕上げ、オンエアできたのか。

USATodayやABCnews、Forbesの記事を総合するとこういうことです。まず、第1クォーターの間に、ポーランドの米軍基地で、兵士が実際にゲームを見ているシーンと、スタジアムにいる家族の劇的な再会シーンまで撮影する。ポーランドの映像は通信衛星経由で、ヒューストンのスタジアムの外に停めた映像編集トレーラーに送る。

そこで、第2クォーターとハーフタイムの間に、スタジアムで撮った家族の映像と合わせて編集し、すぐに国防総省、NFL、中継したFoxテレビ、スポンサーの現代自動車に見せてOKを取る。OKが取れたら、さらに手直しし、第4クォーター終了前に確定版に仕上げる、ということだったそう。

もちろん、ぶっつけ本番ではなく、兵士や家族には知らせていませんでしたが、リハーサルは何度もやったそうです。

舞台裏を取材したABCのビデオでは、たくさんのプロが関わっているのが分りますし、ポーランドの米軍基地での設営やパーティなどを考えると現代自動車が膨大なお金を投じたことが容易に想像できます。さらに、朝鮮日報はCM料だけで15億円だと伝えています。

その背景について、Forbesの記事では「この努力は、現代自動車が、軍人への特別割引やインセンティブを通して米軍をサポートするという包括的な目標に結びつくものだった」とちょっと辛口です。しかし、「こんな企画はクレージーだ」(製作したPeter・Berg監督)と言いながら、結局、やってのけたハリウッドのチームはやっぱり凄い。

なお、このゲーム終了直後の”ライブ”CMはUSATodayが視聴者からの採点で決めるAd Meterの対象にならず、ランキング入りはしていません。対象は試合前のコイントスから終了2分前の警告までに放映されたCMのみのためです。