日頃、米国のニュースサイトを覗いている身には、このリストはとても興味深いものでした。米国のオンラインニュース利用者から見た「最も信頼できるニュースソース」「最も信頼できないニュースソース」のトップ10とワースト10です。

これはミズーリ大学レイノルズジャーナリズム研究所のTrusting News Project2017で公表されたものを要約したものです。データは今年2月から3月にかけて米国各地の大小28の新聞、テレビ、ラジオ局のニュースサイトを訪れた8728人のユーザーから得ました。

調査はオンラインで行われ、質問内容には性別、人種、年齢、政治的傾向、大手メディアへの信頼度、報道機関への支援(有料購読の有無とその数)など多岐に亘りますが、私が注目したのが上記のリストに繋がる質問でした。ここだけは自由記入方式で、最も信頼できる/できない報道機関を3つづつ挙げてもらい、集計したのが上記のリストですが、実際はこういう形で公表されました。

正確な読み方はどうか知りませんが、最も信頼できるソースに挙げられたEconomistを最も信頼できないとした人は皆無で、逆に最も信頼できないトップに挙げられているOccupy Democratsを最も信頼できるとした人も皆無だったという風に見るのでしょう。

信頼できる/できないのこんなに大きな差はどこから生じるのか?レポートが出てから1週間後、ウェブ解析とコンテンツ戦略に関わるNewsWhipが分析してくれました。普遍的な見方だと思いますので、かいつまんで紹介します。

冒頭に掲げたリストには、最も信頼できるに一つ(Public Television)、信頼できないに三つ(Social Media,Trump,Internet)、特定のニュースソースではないものが含まれています。そこで、分析にあたっては、最も信頼できないグループに、11番目のFox Newと12番目のLimbaugh(保守派のラジオパーソナリティ)を加え、それぞれ9つづつで比較したとのことです。

最初はこれ。18のニュースソースについて、ソーシャルメディア上で、エンゲージメント(「いいね」「コメント」「シェア」)が7月の1ヶ月、どれだけあったかをNewsWhipが調査したベスト10です。

 

最も信頼されてないランキング9位のハフィントンポストがエンゲージメント数では首位で、Fox News、buzzfeedが続き、トランプ支持で名を上げたbreitbartも6位で、さらにYahooもランクイン。最も信頼できるグループからのものと同数でした。

このことから、NewsWhipは「ある種のサイトにとって、最も信頼できないリストに入ることは、必ずしもネガティブなことではない」と分析します。

とはいえ、メディアへの信頼が年々、下落しています。Gallupの昨年9月の調査では32%に過ぎません。

その状況では、やはり、信頼されるメディアを目指すことが、結局、利益をもたらすのではないか。その立場から、最も信頼されているメディアとそうでないメディアとの違いをNewsWhipの独自調査から4項目に整理してくれました。ここで述べられている信頼されるメディアのエッセンスを並べてみます。

⑴彼らは政治以外のことも多く書く:信頼されるメディアの政治記事は4割で、信頼されないメディアの7割を大きく下回り、バラエティに富む内容となっている。(政治記事にはバイアスがかかりやすいことが多いからでしょう。ニュースサイトの偏向度を表示するMedia Bias/Fact Checkによれば、上記Occupy Democratsは <Extreme Left, Propaganda, Some Fake News>の評価でEconomistは<LEAST BIASED>とあります)

⑵彼らの見出しは客観的である:主観的な内容なら引用の形で示す。

⑶彼らは否定的な反応を扇動しない:factを通じて語らせる。彼らがFacebookに投稿した記事への「怒りの反応」は信頼されないメディアに比べて著しく少ない。

⑷彼らはソーシャルメディアでクリック稼ぎのために情報を制限するようなことをしない:元の記事やビデオに飛ぶ前に必要なことが分かるようにしている。

なんだか「正義は勝つ」みたいの結論になりましたが、こういうことの積み重ねが、信頼度32%と、落ちるところまで落ちたジャーナリズムへの信頼を取り戻す基礎になるのでしょう。日本でも、ぜひ、同種の調査を行ってほしいものです。