あのイーロン・マスク氏が主導する電気自動車(EV)Tesla Model3が話題になる中、トヨタはEVの弱点を解消する新型電池で対抗するという話を今月初めに紹介しました。
その弱点とはガソリン車に比べて航続距離が短いこととフル充電に時間がかかることですが、その二つを全く違うアプローチで解決する方法を米・スタンフォード大学の研究チームが開発中で、それを科学誌Natureに発表していたことを遅ればせながら同大のプレスリリースで知りました。
それによると、開発チームは<A charge-as-you-drive system>と呼んでいるとのことですが、要するに走行中に充電し続けるので、ドライブの途中に充電スタンドに寄る必要なしにロングドライブが可能になるというふれ込みです。
一体、どうやって実現するのか?プレスリリースにはその原理を説明するビデオが添えられています。
物理に弱い当方には?なのですが、理解できた範囲で記しますと、鉄に電線を巻いたコイルに電流を流すと、そばに置いた同じようなコイルに無線で電流を流せるという2007年のMITの技術をベースに、移動するコイルに微弱電量を流す実験に成功したので、これを増幅すれば自動車も動かせるほどの電力を無線で送りこめるはず、ということのようです。
もし、車を動かせるほどの電流をコイルからコイルに無線で送れるようになっても、車に装着したコイルに電流を送る側のコイルをどこに置くか、という難問があります。しかも相手の車は高速で動いてるのですから。
その答えは、充電は「高速道路走行中」に限り、その高速道路の路面の下に電力線に繋がった送電用のコイルを連続的に埋め込む、ということのようです。先のビデオにイメージ図がありました。
全国津々浦々の道路に送電コイルを埋め込むのは全く現実的ではありませんから、通勤や買い物などには自宅で充電して使えば問題ないし、充電が不安な長距離ドライブの時は高速道路を走ってる限りは安心、ということですね。
メーカーにしても、長距離ドライブにも耐えるような車載電池の容量アップに血道をあげる必要がなくなるので、電気自動車のコストダウンに繋がるかもしれません。
この考えをさらに推し進めたのが、イスラエルのElectRoad社の計画です。電気自動車を高価にしている電池そのものを無くすというコンセプトです。
特に大量の電池が必要になるバスに電池を搭載するのはコスト的にも大変ということで、政府から12万ドルの助成を得ている計画だそう。すでに25メートルの実証実験に成功し、来年には800メートルの実験に挑み、成功すれば、街中と新空港を結ぶ18kmに就航させることになるとイスラエルのメディアIsrael Valleyが報じています。
これは、バス専用のレーンの路面下にバスへの送電システムを埋め込んで置くというもので、その工事はとても簡単だとビデオで紹介しています。まあ、街中のアスファルト道路に限るようですが。(ビデオでは1分過ぎ)
なお、電気自動車と直接、関係はありませんが、1kmに渡ってソーラーパネルで覆われた道路が北フランスのノルマンディに昨年末に開通しました。
開通式で政府のエコロジー大臣は「ソーラーパネルに覆われた高速道路を見たいものだ」と語ったとか。
トヨタは、今の主流のリチウム電池に代わる全固体電池を搭載した電気自動車を2022年にも発売か、と報じられていますが、それまで5年もあります。
その間にスタンフォード大の研究が進化、実用化に向かったり、イスラエルでの試みがバスレーン専用からさらに広がったりすることもありうるでしょう。ソーラーパネルに覆われた高速道路があちこちで登場して、高速で走り抜ける車に太陽光が電力を提供しているかも知れない。EV時代の展開はこれからです。
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