だいぶ前のことですが、この衝撃の映像をご記憶の方も少なくないと思います。7年前の当ブログでも「戦争のおぞましさを痛感させる映像」だということで紹介しました。

米軍ヘリからの銃撃で子供二人を含む民間人12人が殺害されました。2007年のことですが、これが日の目を見たのは2010年。のちにこの米軍撮影のビデオをリークしたのはイラクで情報分析官を勤めていた米陸軍のブラッドリー・マニング上等兵と判明します。

彼はこの衝撃ビデオを含む70万点に及ぶ機密書類をWikileaksに流したとして軍事法廷で35年の禁固刑という重い判決を受けますが、一方ではノーベル平和賞に値すると賞賛されるなど時の人となりました。

そして、なんと獄中で性転換しブラッドリーからチェルシーに改名し、またまた話題を攫います。そして、オバマ大統領離任にあたってまさかの恩赦を得ます。出獄した時の写真は女性そのもので、世間を驚かせました。彼女が自身のTwitterに載せている顔写真はこれ。

このように次々を話題を提供してくれたマニングさんですが、今度は、CIAの現長官と元副長官が、マニングさんの処遇を巡り、あのハーバード大学に露骨な圧力をかけ、大学側が即座に謝罪するという”事件”の主役になっていて、米国メディアは大騒ぎです。

事の起こりはつい先日の13日、名門ハーバード大学の公共政策大学院、通称ケネディスクールが出したプレスリリースでした。これに、同大学院の政治研究所(Institute of Politics)の秋学期に学生と議論するために外部から招く客員研究員(Visiting Fellow)の追加リストにChelsea Manningとあったためです。

そこには、トランプ政権発足時のホワイトハウス報道官だったシーン・スパイサー氏、トランプ選対の選挙事務長だったコーリー・レヴァンドフスキー氏の名前もあって、一見、面白そうな顔ぶれでした。

それが報じられた14日に事態は大きく動きます。CIAの元・副長官でハーバードでは同じケネディスクール内の国際問題などを扱うBelfer Center でシニアフェローを務めるMichael Morell氏が「大学院の決定は、犯した犯罪を合法化しようという彼女の長年の主張を合法化するのを支援するものだ」という抗議文を大学院長のDouglas Elmendorf氏に提出し、辞任をします。

数時間後、追い討ちをかけるように、今度はCIAのMike Pompeo長官が、Belfer Centerの所長宛に「アメリカの裏切り者であるミズ・マニングをハーバードの客員研究員とすることは私の良心とCIAへの義務からして断じて容認できない」とする手紙を出し、当日、ハーバードで開催された大統領選へのロシアの介在や北朝鮮の原爆を巡る討論への出席予定を取り消してしまいました。ちなみにPompeo長官はハーバード出身だそうです。

インテリジェンスの世界の大物二人に露骨な圧力をかけられたElmendorf氏。その数時間後、 Electronic Frontier Foundation (EFF)が主催する「電子分野の自由拡大賞」受賞のためサンフランシスコを訪れていたマニングさんに電話します。

「客員研究員のオファーをキャンセルしたい」と。その時、マニングさんの周りには支援者チームがいました。彼らが代わってElmendorf氏にその訳を聞かせるように詰め寄りました。

その場にいた関係者によると、「悪名高いスパイサー前報道官、レヴァンドフスキー元事務長が入っているのになぜだ」という問いへの回答は「二人は議論のテーブルに何かをもたらし、教えるものがある」だったとGuardianが伝えています

つまりは「マニングさんは教える中身がない」と示唆したということです。

そして、ワシントンポストによれば、木曜深夜、金曜日に日付が変わってすぐの頃、Elmendorf氏名の「チェルシー・マニングさんを客員研究員に招聘する件に関する声明」がケネディスクールのページにアップされました。

「私たちは客員研究員(Visiting Fellow)を、数時間、数日間、学校に訪れて講演したり議論したりする存在で、そこに尊称の意味はないと我々は思っており、マニングさんについても同様だったが、そうではない受け止めもあった。そこまで配慮せずに彼女を指名したのはミステイクだった」

すかさず、辞任したMorell氏が反応しました。


ケネディスクールは勇気と賢明さを発揮したと。

しかし、マニングさんはこうツィートしています。


これって、軍隊/警察/情報(機関)国家・・・みたいだ(絵文字はギャングでしょうか?)CIAはハーバードで教えること教えないことを決定するんだね。

これからどんな展開になるのか。マニングさんの復職を求めるハーバードの学生グループが登場したとも伝えられます。しばらく目が離せません。