前回記事「朝日の「信頼度」が産経以下にーロイター研調査」は、拙ブログで過去最高のアクセス数を記録しました。いかに大手メディアへの関心が強く、とりわけ朝日ブランドへの関心の高さを反映したものだったかも知れません。

ただし、そこで取り上げたロイタージャーナリズム研究所のデータは、10点満点で著名ブランドを採点するという形式で、漠然と信頼度を尋ねたものでした。

しかし、その1週間ほど後に公表されたギャラップナイト財団による米国17の著名全国メディアを対象にした<正確さと偏向度に関する世論調査>では、この二つの指標から、メディアがどのように一般読者から評価されているかが具体的に分かります。

縦軸は政治的な偏向度が強いか弱いか、横軸はでっち上げ記事か検証不能な飛ばし記事が多いか少ないか目安です。つまり、ブルーの部分に位置するメディアは偏向度が低く、正確な記事が多いと受け取られているということになります。

米国のPBSとNPRと二つの公共放送とWall Street Journal(WSJ)の評価が高いですね。このあたりはロイター研の調査でNHKと日経新聞への信頼度が高かったのに通じます。また、Washington Post(WaPo)とNew York Times(NYT)は正確さではそこそこの評価なのに、少々、偏向していると見られていることなどが分かります。

これを眺めているだけで、なかなか興味深いのですが、当方にとってずっと興味深かったのは、回答者を「民主党員+民主党寄り」「共和党員+共和党寄り」に分けて分析すると、各メディアへの評価はほぼ<真逆>になっていることでした。

まず、偏向度。左が民主、右が共和で、数字は「<全く偏向なし+それほど偏向なし>から<極端に偏向+とても偏向>を差し引いた数字です。それがプラスなら棒グラフはブルーで「偏向が少ないメディア」で、マイナスならピンクで「偏向してる」と見る人が多いことを示す<net bias score>という新しい指標です。

民主党系支持者の間では、あの”悪名高い”Breitbartと露骨な共和党寄りで知られるFox Newsへの偏向度を指摘する人が圧倒的でしたが、17メディアのうち11メディアがブルーでした。しかし共和党支持者だと、偏向してない派が多かったのはFoxNewsとWSJのみ。あとは全部、偏向してると見る人が多かったのです。なんという意識の分断でしょうか。

同様に正確さについての<net accuracy score>はこうなりました。まず、民主系はこうです。ここでもBreitbartとFox News以外には、概ね高評価です。偏向度では、わずかにマイナスだったオンラインメディアも、ここではプラスに転じています。

しかし、共和系ではまたまた既存メディアに辛辣な評価で、ほぼ全滅。

net bias scoreとnet accuracy scoreを党派別に冒頭の縦軸、横軸のグラフ、4つの象嵌に落とし込んで見るとこうなります。まずは民主支持者。ここではNYTやWaPo、さらにネットワーク系ニュースなどがいい位置にいます。青ゾーンは偏向度が少なく正確性が高い。

一方、共和党系支持者の見方はこうなります。

ピンクゾーンに集中しています。共和党支持者にとって、米国のメディアはひどく偏向して不正確なものばかりに映っているということになります。

トランプ大統領は就任以来、主要メディアについてfake newsだらけだ、国民の敵だなどと誹謗中傷してきましたが、その意識は共和党支持者層に深く浸透しているのが窺えます。こうなると、冒頭で紹介したグラフはあまり意味がなくなってしまった印象です。極端と極端を合わせて平均化しただけですから。

なんだか、余所事ながら、怖いような国民意識の分断です。日本で同様に<与党支持者>と<野党支持者>に分けてメディア信頼度を調査したら、結果はある程度、推測できますが、ここまで相違することはないような気がしますが、どうでしょうか。