今朝の読売新聞は、どういう風の吹き回しか、国際面でニューヨーク・デイリーニューズのリストラを大々的に取り上げていました。

レイオフされる記者数は40人あまりで、今時、驚くような数字ではありません。

例えば、5月のブログ記事で紹介したデンバーポストのケース。かって300人以上いた記者が、経営不振からレイオフを繰り返し、2010年にヘッジファンドに買収された時点では200人に減っていて、さらなるレイオフで5月時点では100人まで減り、それをさらに30%削減という親会社の意向が示され、大騒ぎーーという話は米国メディアがこぞって取り上げましたが、日本メディアは完全無視でした。

でも、今回、デイリーニューズの件を取り上げ「米新聞社 リストラの波」と題した長めの記事を書いた理由の一つは、たまたま、同時期にピューリサーチセンターが「昨年1月から今年4月までの間に、5万部以上の新聞の少なくとも36%がレイオフを行った」という調査結果を発表したことと重なったからでしょう。

さらに言えば、このデイリーニューズ紙は、戦後間もなくの1947年には240万部を発行する全米最大の新聞だったこともある歴史を有するにも関わらず、編集局員は85人まで落ち込み、それがさらに半減という、なんとも切ない”名門”の凋落ぶりという特殊事情もあるでしょう。

切ないと言えば、同紙は昨年、新聞チェーンのTroncにわずか1ドルで売却された経緯もありました。ワシントンポストの当時の報道によると、Troncは1ドルで経営権を握るとともに、本社のあるマンハッタンからハドソン川を挟んだ向こう側のジャージーシティにある印刷工場の権利の半分も取得したとあります。その敷地はなんと10万平方メートルにも及ぶのです。ニューヨークタイムズによれば、そこはマンハッタンを見はるかす一等地のようです。

前のオーナーにしてみれば、タダで膨大な不動産資産の半分を譲渡したわけですから、累積債務があったにせよ、社員の先行きもTroncに託したつもりだったのでしょう。しかし、非情にもTroncは、譲渡直後に広告幹部や経理担当など今春にはデザイン、制作担当などをレイオフしていました。

そして今度はただでさえ少なくなっていた編集局の削減。なんだか古い言葉ですが、会社自体が「骨皮筋衛門」状態に近づいています。「犯罪報道などの速報に力を入れる」と会社側は言っているそうですが、やせ細った体力で、全盛時の10分の1にも満たない部数20万部から盛り返すのは至難の技でしょう。

で、リストラしても経営が行き詰まればどうなるか?新聞発行をやめても、Troncには膨大な価値のある不動産資産の半分が残る・・・

などというのはゲスの勘ぐりかもしれません。でも、ヘッジファンドがローカル紙を次々買収する背景には、その不動産資産に往々にして目をつけてのことが多い、という指摘はよくあるだけに全く的外れでもないでしょう。

そして今回のレイオフで編集局長を追われたJIm Rich氏は、ニューズ紙の終焉を占うかのような、こんなツィートを発しています。

意訳すれば、<新聞がなくなれば政治、行政はやり放題になるよ。今日がその始まりだ>。

実はデイリーニューズには特別な思い入れがあります。昔々、住んでいた高層アパートの道路を挟んで向かい側がニューズ社の由緒ある高層ビルで、天気のいい日は、その屋上に社員が出てきてコーヒーを飲みながら談笑しているのを、部屋から日常的に見ていたからです。

そして何より、その屋上こそ、デイリーニューズをモデルにした架空の新聞社デイリープラネットの記者、クラーク・ケントことスーパーマンがマントを翻して”悪党”を懲らしめるために飛び立った場所でした。

いや、Troncを悪党って言ってるわけじゃありませんが。