英紙ガーディアンの「英全国紙、7年ぶりに紙の広告収入が増加」とする記事を目にして思い出したのが、1年あまり前のブログで紹介したグラフのことです。

NYタイムズの編集者が各種データを元に作成したもので、他の先進国に比べれば、日本の新聞業界はまだましな方かも、という趣旨の記事に使わせてもらいました。

2011年を起点に、2016年にどれだけ部数が減ったか、そして2020年にはどうなっているかの減少割合を予測したものです。

これで見ると、英国の紙の新聞は2016年時点で20数%の部数を減らし、2018年の今は30%以上も減らしているはずです。

部数と広告掲載代金は基本的に比例します。ですから、大手広告代理店などの数字を元にしたこの記事でも、「過去7年間、29四半期の紙の広告収入は一貫してマイナス続きだった」と書いています。

なのに、今年の第1四半期の結果は、2010年第4四半期以来、7年ぶりに増加に転じたそうです。一体、何が起きたのか?

その理由の第1に挙げられているのが、Facebook、YouTubeなどのソーシャルメディアに流れていた広告主の予算が紙の新聞に戻ってきたことです。

欧米では、”不適切なデジタルコンテンツ”に、無差別に広告が流されることは、ブランドを毀損する、という見方が広がり、ソーシャルメディアで”事件”が起こるたびに広告を引き上げるケースが相次いで報じられました。

(プロクター・アンド・ギャンブルと並んで、広告出稿額が世界最大とされるユニリーバも、その一例

その点、新聞なら、滅多に”不適切な”コンテンツを掲載する恐れはありませんから、ソーシャルメディアに流れていた広告費のいくばくかが新聞に戻ってきた、という構図です。

また、英国では、伝統的に巨大スーパーマーケットチェーンが、新聞広告の大得意だったそうですが、数年前に、広告支出をソーシャルメディア中心に切り替えたそうです。でも、「振り子が戻って」新聞広告に支出を増やしたそう。日本でも有名なTescoや、業界2位のASDAなどです。

その結果、第1四半期の全国紙の広告収入は前期より1%増加して222億円に達しました。ただし、増えたのはSun、Daily Mirror、Daily Expressなどの大衆紙で、2.8%プラスでした。

The Times、Telegraph、Financial Times、Guardianなどの高級紙は0.3%のマイナスでしたが、これでも、過去7年では最も小さな減少幅だったということです。

一方、記事では、全国紙のわずかな広告収入の改善は、地方紙には及んでいないとし、その一例として、160に及ぶ新聞とウェブサイトを有し、英国最大の地方紙オーナーのReachは、デジタル時代の厳しい見通しから、今週初めに220億円に及ぶ減損処理を行ったと報じています。

また、The TimesとSunの親会社NewsUK、Telegraph、Guardianの3社は、Ozone という名のジョイントプロジェクトを今秋にも立ち上げると発表しました。

複数の主要ニュースサイトに広告を出す際、注文が一箇所で済むワンストップショップのベンチャー事業だということです。3社は、広告主に便利さとともに、スケールを広げることで訴求しようということのよう。(ふと、日経、朝日、読売3社による、かって存在した共同サイト「あらたにす」を思い出しました)

なんとか、最悪の状況を脱しようと必死なのですね、健闘を祈ります。冒頭に表示したグラフでの下向き斜線の角度が少しでも緩やかになり、広告が激減しないように。

余談ですが、毎年恒例の「最悪の仕事ランキング」で、ここ数年、ワースト1だった新聞記者職が、今年は220の職種中218位。つまりワースト3にランクを”上げた”ことを、遅ればせに知りました。かすかな改善とも言えませんがw・・・・