まず、この不鮮明なポンチ絵をご覧ください。一週間ほど前に米国の特許庁が認めたアマゾンの特許申請書に添付されたものです。左下にあるのがアレクサを使ったスマートスピーカーののAmazon Echoです。
見にくいと思いますので、吹き出しの中を上から順に翻訳します。女性「アレクサ。(咳をする音)腹が減ったわ(鼻をすする音)」 スマートスピーカーのアマゾンエコー「チキンスープのレシピはどうですか」 女性「いらないわ」 エコー「わかりました。何か他のものを見繕いましょう。ついでですが、1時間で届くのど飴を注文しませんか?」 女性「それはいいわね。ありがとう」 エコー「どういたしまして。注文確認のメールを送ります。良くなるといいですね」(のど飴の売り込み成功!)
ユーザーの呼びかけ音「アレクサ」で起動し、ユーザーと会話するのがスマートスピーカー。ユーザーのリクエストに応じて天気予報やニュースなどを音声で伝えるだけでなく、会話の中での咳や鼻すすりまでキャッチして、風邪を引いてるんじゃないかとか、声音が変だから精神的に落ち込んでるのではないかと判断して、その対応策まで話しかけるというシステムに特許が下りたそうです。
昨年3月に提出された特許の申請書はここにありますが、膨大な文字数なので当方には手に負えませんから、先端情報サイトArs Technicaの記事からあらましを紹介します。
まず、肉体的に病気かどうかは、上記のように、咳や鼻すすりなどから喉が痛くて鼻水が出るなら風邪だという風に判断し、興奮した声や泣いたりすれば精神的に異常があると判断するようです。それに基づいて、エコーはそれに見合う音声広告などをオーディオコンテンツサーバーから取り出してユーザーに提供するのだそう。
しかし、咳や鼻すすりなどを伴う風邪ならともかく、ユーザーが精神的に変調をきたしているなんてどう判断するのでしょう?それについてArs Technicaの記事では、ユーザーの閲覧記録、クリック数、購買履歴、さらにキーワード、ページタイプなどネット上の振る舞いなどを参照した上で、ユーザーに関係のありそうなコンテンツを選ぶ、とあります。
これに加えて、システムでは音声処理アルゴリズムを使って、音の強さ、振動、発声、緊張などから幸せ、喜び、怒り、不幸せ、悲しみ、恐れ、嫌気、退屈、ストレスその他の精神状態を探るんだとか。この感情発見システムは、ユーザーの普段の状態をベースに変調を探るということらしいです。
ネット上での振る舞いや、普段と違う感情の動きを追跡するアマゾンにユーザーが丸裸にされるような構図です。(そして薬を売り込む) そこで、この記事についたコメント欄にはこんな疑問が書き込まれています。
「医療システムによって生成された個人の健康情報は、プライベートで保護されていることに注意する価値があります。しかし、カウンセリング薬はもちろんのこと、医療専門家ではないこのようなシステムによって得られたあなたの健康情報は、決して保護されず、勝手に処理され、広告主、保険会社、および他の関係者に販売されてしまう」
また、うつ病の研究者と称する書き込みでは「こんなことでうつ病と正確に診断できるなら苦労はない」とあります。
また、冗談めかしていますが「もしあなたのパートナーがうめき声をあげているのをアレクサが聞いたら、morning after pills(緊急避妊薬)を提案するのかい」という書き込みには多くの賛同が集まり、特許を実装したスマートスピーカーの出現がプライバシーに踏み込んでくることへの懸念が示されました。
アマゾンもそうした疑念などは織り込み済みなのか、特許が下りてしばらくたちますが、実装するのかどうかについてはなんの表明もないようです。
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