先ほど、日経新聞の電子版でフリーITエンジニア、月額相場65万 正社員より高報酬 」という記事に出会い、ちょっと考えされました。

フリーのITエンジニアは、登録しているエージェントを通して契約するそうですが、そのエージェントの一つによると「「長年微増傾向だったが、ここ数年で急に上がるようになった」とのことです。

月額65万円なら1年間フルに働いて780万円。それが急に上がってきての数字なのです。しかも正社員はそれより安い!

私など、IT技術などからきしなので、そのエンジニアの方々には尊敬しかありません。でも、この程度の待遇で、AI(人工知能)やオートメイション化が急速に進む世界と伍していける人材を潤沢に確保できるのか不安でもあります。

というのも、最近、たまたまAIエンジニアに関するいくつかの数字を目にしていたからです。

一つは、大手tech企業でAI技術者の採用が盛んというAXIOSの記事で、そこにあったのがこのグラフ。昨年9月から11月の間に、各社がどれだけAIスキルのある技術者を雇ったかというものです。

オレンジの数字がAI技術者の採用数で、トップのマイクロソフトは3ヶ月で1,964人も採用しています。技術アドバイザーに退いたとはいえ、おそらく少なからぬ影響力を持っている創業者ビル・ゲイツ氏がAI時代の進展を睨んで壮大なプランを立てているのかも、と思わせる数字です。なにしろ、2位から5位までの4社合計より多いのですから。

で、「トップAIタレントは奪い合いになっており、「軽く6 桁(つまり10万ドル以上)に達している」とも書いています。そこはリンクになっていて、そのリンクをたどるとニューヨークタイムズの記事でした。

そこでは「博士号を持つ新卒や数年の経験しかない人も含めて、典型的なAIスペシャリストは30万ドルから50万ドルをサラリーと株式で貰っている」と書いています。

そして、AI分野でちょっと名前が売れてくると4~5年間の間に、「一桁ないし二桁millionを手にする」ともあります。日本円にすれば数億円から数十億円の世界です。まるでプロスポーツの世界。事実、何年かごとにプロスポーツ選手のように契約更改するのだとか。

こうしたAIエンジニアの高待遇ぶりを示す具体例として挙げているのが、Googleが2014年に買収した英国のDeepMindというAIラボのケース。買収時は50人規模でしたが、昨年時点で400人に増え、その人件費は1億3800万ドルに達したそう。一人当たり34万5千ドル、4千万円近い数字です。

こういうサラリーの高騰についてBloomberg Businessweekはこう記します。「何年間も7桁(=100万ドル以上)の収入を得るのは、これまでは企業のCEO 、銀行家、有名芸能人、プロスポーツ選手の4つしかなかったが、ここに5つ目としてAIエキスパートが加わった」と。

まあしかし、NYタイムズやBloombergなどが取り上げたのは超大手IT企業に採用されたトップガン、先端エンジニアの例なのでしょう。そこで、米国の就職サイトで一般企業の求人の相場に言及した記事を読むと、AIに関わる「機械学習エンジニア」「データサイエンティスト」「コンピュータビジョンエンジニア」「アルゴリズムエンジニア」「プリンシパルサイエンティスト」などのIT人材が年棒10万ドルから14万ドルほどでした。

今から3年近く前に、経産省が公表した「IT人材に関する各国比較調査」によると、日本のIT人材の平均年収は600万円で、その報酬に「満足」と答えた人は調査した8カ国(米国、インド、中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナムと日本)の中で最低の7.6%に止まりました。ちなみに、当時の米国のIT人材の平均年収は1200万円ほど。

そして「この仕事は給与が高い」かどうかの問いには日本人IT人材の3分の2(65.2%)に当たる人が「全く当てはまらない」「どちらかと言うと当てはまらない」と答えているのです。

未来に大きく関わり、一見、花形に思える職業なのに、こういう数字では、心もとないですね。経産省の報告書の問題意識も

< ITは今後も我が国産業の成長にとって重要な役割を担うことが強く期待されており、十分なIT人材を確保することは、これまで同様、今後もきわめて 重要な課題であるといえる>というものでした。

そのためにこの調査では、<IT人材の中長期的な需給動向を展望するとともに、今後の IT人材の確保・育成に向けた方策についての検討を行った>ということですが、それから3年、ITエンジニアの確保、育成策は前進しているのでしょうか。まあ、給与は若干上がったと言うことでしょうが。

そういえば、ゾゾタウンを運営する、話題の前沢社長率いるスタートトゥデイは最大で年棒1 億円の「天才枠」を設けるって話だったけど、どうなったのかなあ。話題作りに終わらせないで欲しいものです。