米国新聞業界の人減らしの嵐がやみません。
今度は、オハイオ州北東部に位置する人口6.5万のヤングスタウン(Youngstown)市で、150年の歴史を有する日刊紙The Vindicater(The Vindy)が8月31日をもって廃刊することを公表しました。
部数は2.5万部とのことですが、ジャーナリストはカメラマンを入れて30人ほど。街にはVindy以外の新聞はありませんから、彼らの行く末が気になります。Nieman Labの記事は、今後、こうしたケースが続出しかねないことを憂いています。
そして日本でも、毎日新聞が社員の約1割にあたる200人の早期退職を募っていることが報じられました。その中心は高齢化した編集局の記者だとか。
昔から、「新聞記者は潰しが効かない」とよく言われました。一種の戯言でしょうが、少々厳し目に言えば、一部の有能な専門記者を除けば、たいした専門知識を持ち合わせないのに、若い頃から社会正義みたいなことを振りかざし、頭が高いので、他のショーバイには向かないってあたりでしょうか。
その意味で、廃刊や早期退職で新聞社を去った記者たちがその後、どんな仕事につくのか、他人事ながら気になるのです。
そういう思いに答える調査をPoynterが行っていました。182年の歴史を誇るニューオーリンズの日刊紙Times Picayuneがライバル紙New Orleans Advocateに買収された後、編集局の65人全員がレイオフされたのですが、Poynterは、約2ヶ月後の6月末現在で、その65人がどうなっているかを追跡したのです。
このうち7人は回答を控えましたが、残る58人中36人までがジャーナリズムの世界に止まるつもりだと答えています。
このうち19人はジャーナリズムの仕事をニューオーリンズで続けたいとし、その実現のために10人は、いったん彼らをレイオフしたAdvocate紙で働くのだそう。
また6人はニューオーリンズに留まるためにジャーナリズムを諦め、別の仕事を探しましたが、3人はPR関係の仕事についたとのこと。19人はまだ新しい仕事を探していて、14人はニューオーリンズを離れつつあるという結果でした。
AdvocateのPeter Kovacs編集長によると、元Picayuneの記者の半分は、我々のオファーに関心を示さないか、面接の申し入れもなかった、と話しているそうです。
その理由について、PicayuneのコラムニストだったTim Morris氏は「提示された給料が低い上に初心者レベルの仕事内容だった」と明かし、もう一人のコラムニストJavis DeBerry氏は、給料の他にオピニオン記事への疑問やAdvocateが政治家によって所有されていることなどを挙げています。
結果、安い給料を呑んで競合紙に入社したのは現段階では10人に止まったのですが、残りはニューオーリンズを離れてWSJやシアトルタイムズ、タンパベイタイムズなどの他、公共ラジオやローカルテレビなどに職を得たとのことです。
Advocateに入社した一人のFood EditorのAnn Maloneyさんは言っています。「多くの同僚が街を離れるのは残念だけど、彼らがいい仕事に就いたのには満足している。Picayuneが非プリントへの移行に向け、スタッフを揃えてデジタル実験をしていたのが良かった」
社を挙げてのデジタル実験に記者が関わっていたことが、再就職に役立ったということのよう。日本でも、徐々に早期退職、レイオフの動きが増えてくるかも。その時に少しでも「潰しがきく」ように、デジタルスキルを身につけておいたほうがいいようです。
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