米大リーグ機構(MLB)と提携する独立リーグAtlanticリーグ(ALPB)のオールスター戦で、ストライク、ボールを電子的に判定する”ロボット審判”システム、正式にはABS (Automated Ball-Strike System)が採用されたのは7月10日のことでした。

元野球小僧だった私は、5年前のマー君勝利に繋がったビデオ判定。でも誤審だらけの球審のコールは治外法権だってと昨年の善戦!金足農:微妙な1球と電子ストライク判定の2回にわたって、電子ストライク判定の導入について書きました。

なので、独立リーグのこととはいえ、初採用のその後に関心を持って、ウォッチしていました。

ABSは、投球を3D Dopplerレーダーで捉え、TrackMan社のソフトウェアを使って、あらかじめ生体認証で計測してあった個々の選手のストライクゾーンに入ったかどうかを決める仕掛けです。(選手のデータがない場合、身長6フィート2インチ=188センチと仮定して判定)

その結果は瞬時に、これまで通り捕手の後ろに立っている球審にWiFiを使ってiPhoneを経由して有線イヤホンで伝えられる仕組み。(オールスター戦ではワイアレスでしたが、落っこちたりなどするので有線に変更)

球審が、原則、TrackManの判断通りに「ストライク」「ボール」をコールしますが、明確に間違っていると判断すれば、それを無効にすることもできます。

リーグのオールスターゲームは、大過なく終わったとのことですが、その翌々日のAtlanticリーグの公式戦では、ABSの判定に、守備側の投手コーチが疑義を唱え、球審に「TrackManを止めろ」と怒鳴りつけ、ABSに起因する初の退場となりました。頻発すれば、採用の再検討につながりかねません。

ところが、昨日、目にしたウォール・ストリートジャーナル(WSJ)の記事によると、それはどうやら杞憂のようです。

これは、ABS導入後2週間経った時点での状況をまとめたものですが、印象的だったのは、26日、ニュージャージー州ブリッジウォーターで行われたLong Island DucksSomerset Patriotsの試合で球審を務めたJ.B.Torres氏の言葉です。

「(両軍の投手が投じた)259球のうち6球を除いて、私は個人的にABSの判定に同意した」

これがどんなに凄いことか。先に紹介したブログで書きましたが、5年前のNYタイムズの記事によると、人間の球審は「打者がバットを振らなかった時の判定で14%もボール、ストライクの判定が間違っていた、という研究結果が出た」とありました。

つまり、Ducks/Patriots戦の259球に当てはめると、人間の審判なら36球はミスジャッジをするのが当たり前なのです。それが、6球止まり! まあ、Torres球審自身の誤判断もあるかもしれませんが、その辺りを斟酌しても、やっぱりロボット審判は優秀だと思われます。

(なお、NYタイムズのあった研究は、ブログにも書きましたが、大リーグ全球場に設置されているSPORTVISION社製の<PITCHf/x>に記録されていた70万球を二人の大学教員が分析したものです)

選手はどう見ているのか。WSJの記事によると、「何人かはストライクゾーンの一貫性と、(時にある)あまりにひどい判定がないことを評価している」そう。

しかし、その一方、巧みなミットさばきで、ボール球をストライクに見せる「フレーミング」などの人間的な要素がなくなったことを残念がる声もあるとか。

また、外角の隅を狙った球が内角の隅に行き、捕手が慌てて体とミットを大きく動かして捕った場合、人間の球審なら多分、ボールと判定するが、ロボットの場合は、コースさえ入っていれば捕手の動きにかかわらずストライクになる、ということもあるよう。

ともあれ、ロボット審判は、まずまずの滑り出しのようで、WSJはDucksのマネージャーの「大リーグはこのシステムを5年以内に採用する」という予測を紹介しています。

またMLBのRob Manfredコミッショナーは「それがうまく行くようにできるかどうかを明らかにするのが我々の義務だと感じている」と述べているそう。

日本のスポーツ紙などでは、サンスポの「ロボット審判」は大リーグ低迷に拍車 球審との駆け引き、抗議や退場シーンにも魅力」はじめ、冷めた見方が多いようですが、日本のプロ野球ではどうなりますか・・・

まあ、それにしても、今時は日本でもストライクアウトの時などに派手なアクションをする球審が増えたけど、イヤホンから伝えられた判定で、やるのはちょっと恥ずかしいかもw。