日本で「ドローン」という単語が広く知られるようになったのは、多分、2015年4月下旬の”事件”がきっかけだと思います。

4月22日に、首相官邸屋上にドローンが着陸しているのが発見され、ちょっとした騒ぎになりました

以来、ドローン=小型無人機というイメージが定着していましたが、先ごろホルムズ海峡でイランに撃墜された全長13.5mもある無人偵察機グローバルホークのことも「ドローン」と表記されることもあります。少なくとも英語では一般的です。

しかし、グローバルホークのお値段は一機230億円以上もするそうですから、人間が乗れるような大きさの飛行機をドローン化して飛ばすには相当な時間と膨大な費用がかかりそうです。

そこで、既存の戦闘機などを効率的にドローン化することを考えたのが米空軍研究所(AFRL)のRapid Innovation Center(CRI)。民間のテック会社DZYNE Technologies の協力を得て、開発したのがロボット操縦士、ROBOpilotです。

人型ロボットではありません。既存の飛行機の操縦席を外して設置するシステムです。空軍研究所のサイトにある写真を拝借します。

 

これは、1968年製造のセスナ206に据え付けられたものと思われます。8月30日付けのNew Scientistの記事によると、ロボットアームが操縦桿を握り、足元のペダルを押し、各種メーターをコンピュータビジョンシステムで読み取ります。すでにFAA(連邦航空局)のテストに合格しているそうです。

そしてフライトプランに従って、人間の介在なしに離陸し、着陸します。AFRLのプレスリリースによると、さる8月9日に、ユタ州のダグウェイ実験飛行場で2時間の初フライトに成功したとのこと。その映像はこれ。

まだ軽飛行機の段階ですが、原理的にはどんな飛行機にも応用可能だそうです。

しかし、自動運転車の場合と違って、このシステムを搭載していると、自動車のように人間が運転席に座って監視し、万一の時は人間が運転するようなわけにはいきません。

そこでNew Scientistの記事によると、制作者たちは、貨物輸送、”危険な環境への侵入”、さらに情報収集、監視、偵察任務など有用ではないかと示唆しているとのことです。まあ、空軍の研究所ですから、民間航空機での活用は、当面、眼中にないということでしょ。

しかし、この手の技術、基本ができればあっという間に進化しそうです。そのうちAIを取り込んで、米国のドローン戦闘機が人間の操縦する戦闘機を追い回したり、ドローン爆撃機が砲火をくぐって襲ってくる時代は想像したくないもの。

まあ、安全性を極限まで高めて、ドローン旅客機が実現し、高給で知られるパイロットが不要になれば、航空券が安くなるーーかもしれないーーことを期待しましょう。なにせ、既存の飛行機に装置を設置すればいいだけなんですから。