人口14億人に対し、監視カメラ2億台以上。世界一の監視カメラ大国とされる中国。その中国のハイテクのメッカ、深圳で先月末に開催されたChina Public Security Expoで、話題の中心は「犯罪防止につながる感情認識技術だった」とFinancial Timesが報じていました。

監視カメラで、感情までどう読み取るのか。FTの記事によれば、顔の表情、歩き方、目線の動き、群衆分析などを総合して、犯罪容疑者を見分けようとするものだそう。

中国では、AI技術とでデータを基に「犯罪がなされる前に容疑者を見分け、逮捕する」という考えがあるそうです。

例えば、ある個人が武器を売る店を訪れたら、データを総合して、その人が犯罪を犯す機会を査定し、危険度が高いとなったら、警察が事前に介入するシステムが数年前から実験的に動いていることをFTの過去記事で知りました。

そのために感情認識技術を取り入れた監視カメラシステムはすでに地下鉄や空港に設置されているとのことで、とりわけ100万人とも言われる強制収容キャンプのある新疆ウイグル自治区の公安当局者は「我々はすでに使用を開始している」と述べたそう。

「ビデオ映像を使用して、精神状態を分析することで犯罪容疑者を迅速に特定できます。それでテロや密輸を含む違法行為を事前に防止するのです」

「ストレスレベル、他人に攻撃する可能性とともに、攻撃的とか神経質などの兆候を見分けるんです」

最近の北大教授の逮捕など、中国での一連の日本人逮捕事件は、こうしたシステムに引っかかったのかもしれません。なんだか空恐ろしい。

このFTの記事を紹介したAxiosはACLU(米国自由人権協会)の上級政策アナリストの「感情認識についての科学はかなりインチキだ」という発言を紹介してバッサリ。

そして今年7月に発表された論文によると「感情の状態を、文脈や人となり、文化との関わりなしに、確信を持って顔の表情に帰することは不可能だ」とあると紹介しています。

その一方、AxiosとSurvey Monkeyの共同オンライン調査に言及し、米国では会社がテクノロジーを使って従業員を監視(moniter)することが適切だとするのが62%に達し、モニターされていることを知ったら、48%が振る舞いを改めるそうです。

このことからAxiosは「たとえ中国の感情認識技術が宣伝通りじゃなくても、監視カメラは設置されるだけで心理的効果がある」ことを認めています。

それにしても、米国で68%の従業員が、自分の行動がモニターされていると思う、とし、62%が適切だというのには驚きです。監視社会は中国だけじゃない。

監視はカメラに限りません。会社のパソコンでこっそりポルノサイトや漫画サイトに飛んでるなんてことは、会社側に筒抜けだってことは覚悟しなくっちゃ。

従業員との不適切な関係がバレて解任され1590万ドルの年棒を棒に振ったマクドナルドのSteve Easterbrook CEO。彼も監視されてたんだろうな。