米国の14州で日刊紙30紙を擁し、合計発行部数では5位にランクされる大手新聞チェーン、マクラッチー(McClatchy)の株価が先週末になんと0.49ドルまで下落しました。時価総額はわずか4億円!
14年前の2005年3月には754.70ドルまで買い進められていたことを思えば、めまいがするような凋落ぶりです。
言うまでもなく、インターネットの普及が原因です。「紙」読者が減り、「紙」への広告が激減、近年はFacebookやGoogleにデジタル広告が集中し、新聞社サイトのデジタル広告収入まで減少という三重苦。
このため、13日に公表されたマクラッチーの第3四半期決算は大赤字。身売りか破産かという瀬戸際にあるそうです。それで、先週初めには2.75ドルだったものが、一気に値を下げたのです。
まあ、破産や身売りでも、傘下の各新聞の発行が止まるわけではないでしょうが、リストラは避けられないでしょう。ただでさえ減っている編集局のスタッフがまたまた削られる可能性大です。
それを見越してか、マクラッチー傘下、カルフォルニア州のサクラメント・ビー(Sacrament Bee)とフレズノ・ビー(Fresno Bee)が、寄付金による取材チーム構想を明らかにしていました。
たまたまか、マクラッチーの決算発表の翌日、サクラメント・ビジネスジャーナルが報じたのは、サクラメント・ビーが、寄付金による取材チーム「Tipping Point Lab(最先端研究室?)」を開発したというものでした。
記事によると、この名称は同紙が7月から始めたTipping Pointシリーズで取り上げたような環境問題や気候変動に関わるような骨太な話題を掘り下げて続けようというで、少なくとも3年間は続けると約束したそう。
チームは3人の記者と編集者1人の4人編成とし、新たに外部から採用するとのこと。そのサラリーを出すにあたって、Beeは地元のサクラメント地域コミュニティ財団とともに非営利のImpact Media Fundを立ち上げています。ここに寄付すれば税金が控除されるんですね。
そして、来年早々にもスタートさせる予定です。サラリーはFundから出ますが、雇用および管理はBeeが行い、仕事も他の記者同様、カメラマンやデザイナーなどと協力して行うそう。
この寄付型ジャーナリズム構想に一足先に踏み出したのは、サクラメントから南に300km弱のフレズノ・ビーでした。ここのテーマは教育。9月にEducation Labを公表しました。
この地域はヒスパニック人口が増えていて、貧困率が高く、低学歴が問題視されているそうで、その問題に取り組むために、ここでもImpact Media Fundをセントラルバレー・コミュニティ財団とともに春に立ち上げ、4人の記者を新たに採用してEducation Labをスタートさせる運びです。すでに34万ドルが集まっているとあります。
記事内容については、問題解決型の内容にするとし、週一本はビデオなぞも駆使した大型記事を出すほか、2ー4本の新記事も出します。
それらは全てスペイン語に翻訳してオンラインに載せ、ニューズレターでも配信する計画です。また、サクラメント・ビーなど州内4つの他のマクラッチー系新聞にも配信する可能性もあるとしています。
また、マクラッチー系の動きとは関係ありませんが、ユタ州最大の新聞、Salt Lake Tribuneは、今月1日にIRS(米国国税庁)から「501(c)(3)」の認定を受けたそうです。
連邦法人税の免除、寄付税制上の優遇措置の免税非営利公益法人、要するにNPOになったということらしいです。
2011年には148人いた編集局員は今や56人まで減少、青息吐息の経営だったようですが、ここでは会社ぐるみ、寄付を受け入れてやっていくのですね。
なんだか、今年は、既存の新聞メディアがNPOに舵を切り出した節目の年って、将来、言われるかもしれません。
思えば、ProPublicaやTexas TribuneなどのNPO型デジタルメディアが注目されてちょうど10年ほど経ったのですね。そうでないデジタルメディアは苦労してますが、NPO型は健在だしなあ。
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