まずはこの写真をご覧ください。カナダのテレビ局CBCの記事から借用しました。

一見すると、海に突き出したオシャレな海上レストランに見えるかもしれません。

でも違うんです。なんと乳牛35頭を収容した海上農場なのです。左に見えるのは牛乳瓶を模したソーラーパネルです。(ここで必要な電力の半分を賄うそう)

3階建てになっていて、1階は水面下ですが、最上階のレストランと見まごう場所に乳牛がいて、その下の2階は低温殺菌室やヨーグルト工場になっています。

場所はオランダのロッテルダム。土地の狭いオランダだから考案しただけではありません。Floting Farmのオーナー、CEOのPeter Van Wingertenさんによると、「気候変動でどんなに雨が降っても、水位が上がっても大丈夫」「どこかで災害被害があっても、地元には直接、供給できる」のが特徴ということらしい。

稼働したのは今年5月からで、自動搾乳機、自動給餌機、自動ウンチ一掃機が導入され、ここで働く農夫は2人きりだそう。そして毎日700リットルのミルクを搾乳します。

牛さんは、ずっとここに閉じ込められているかというと、そうではなくて、接岸時には、外に出て、多分、画面、ソーラーパネルの上あたりの広場で散歩できるよう。

農家やゴルフ場で刈り取られた草、地元のビール工場から出るジャガイモの皮や、ビール粕(beer broth)を食べ、出てきたウンチは公園やサッカー場の芝生の養生に使われるといいます。

そこで、Wingertenさんは「ここの牛は究極のバイオマス・アップサイクル・マシンだ」と述べたそう。

とはいえ、こんなでかい、移動もできるという設備には相当の元手がかかったはず。果たしてペイするのかどうかが気になりますが、そこは「通常の酪農家が加工業者に卸売りするよりコストはかかってるが、自身で加工、販売することでトントンになってる」とか。ちなみに製品には地元の市外局番にちなみ<Made in 010>というラベルが貼ってあるそう。

CBCの記事によると、ニューヨーク市や上海市がこのコンセプトに関心を持っているそうで、Wingertenさんは、すでに独自の水上野菜農園を持つバングラデッシュや国土が狭くて海に囲まれているシンガポールでも機能しうると述べたそう。

この種の酪農の革新は、ここだけじゃありません。先月、Engadgetの記事には、ロシア・モスクワ近郊では牛さんにVR(バーチャル・リアリティ)のヘッドセットを装着して、気分を高め、ミルクの生産性を高める試みが始まっているとありました。冬の寒さが厳しい土地柄ですから、冬に夏の原っぱのようなものを見せるらしい。

また、この春には、ロイターが英国でのシスコ・システムズが5Gネットワークを使った試みを伝えていました。ここでは牛さんに5G接続した首輪をつけ、乳牛が搾乳されたいと感じたら、自動的に開くゲートに入り、個々の牛さん用の搾乳機が取り付けられるというもの。これは、政府出資の酪農場で行われているので、結果次第では、一気に広まるかもしれません。

なぜか、乳牛ばかりが革新の対象になってる印象ですが、これで、牛さんが幸せかどうかはわかりません。