先月末に、アマゾンはドローンによる配送を行う航空運送事業者としての認可をFAA(連邦航空局)から受けました

Googleの親会社Alphabet傘下のWing宅配大手のUPSに続くもので、早くからドローン配送に意欲を表明していた世界一のネット通販王者アマゾンの認可で、いよいよドローン宅配時代の幕開けを思わせます。

新聞、テレビの報道もそうしたニュアンスのものが多いようですが、実は簡単ではありません。

確かに今回の認可で、アマゾンのプライムエアー(Prime Air)は、昨年、公開したMK27という6角形の骨組みの新鋭機を使えば、半径12km以内のお客の庭に、2.3kgほどの荷物を30分以内に送り届けることはできます。

しかし、条件があります。今の規則では、ドローンには「目視内飛行」が義務付けられているのです。つまり、人間が飛行を監視しなければならない。

とすると、片道30分、往復1時間、1人の技術者が1機のドローンにかかりっきりになり、運ぶのはたかだか2kgほどのものだと、相当に高い料金を取らないとビジネスとして成り立たないということです。

しかも、ドローンは、1回の飛行で荷物は1個しか運べない。仮に注文が殺到したら、30分以内で運べると言っても、順番待ちでどれだけかかるか分からない、ということになりかねません。

これが、認可で先立ったWingやUPSも限定的な配送しか行えていない理由です。Wingはバージニアの一つの町限定で、小売店の商品などを10km以内に配送するパイロット事業を、UPSはノースカロライナの医療施設構内で試薬の運送やフロリダの退職者コミュニティに処方薬の配達などを行っている程度のようです。

そこで、3番目に登場のアマゾンの出方が注目されるわけですが、同社の幹部は「認可は、FAAがPrime Airの運用と安全手順を信頼したということで、このサービスはいつか世界中の顧客に荷物を運ぶことになろう」と自信満々のようです。しかしそのテスト事業の開始については、場所も時期も一切明らかにしていません。

もしかするとアマゾンはFAAの出方を待っているのかもしれません。Bloombergの記事によるとFAAは現在、ドローンの飛行についての規制の枠組みについて準備しており、今年末までにまとめるようです。

そこには、最小のドローン以外は、常に機体の身元や位置を発信することが求められるようで、さらに低空を飛ぶことから騒音レベルなども盛り込まれそう。

FAA側としてはそれを追跡し、空の秩序を維持する新たな管制システムの構築が必要になります。そうして、今の目視内飛行の規制が解かれることになります。

とすると、一箇所の出荷センターに百台単位でドローンを常時充電して待機させ、注文に応じて、即、30分以内に配達が当たり前、ということになるには、何年もかかりそうです。

ちなみに、その時代を見据えて、アマゾンが5年前に特許を出願し、3年前に米国特許商標庁が公開した「MULTI-LEVEL FULFILLMENT CENTER FOR UNMANNED AERIAL VEHICLES」、つまり、ドローン出荷センターはこんなイメージです。アマゾンのことだから、もう場所はあちこちに手当てしていて、本当に作っちゃうかもしれません。

下の絵は特許出願書に添えられた何枚かの説明用の図案の一つだそうです。他の絵はCnetの記事でご覧ください。