つい先日のWall Street Journal (WSJ)の記事で、私が毎日のように覗いている新興ニュースサイトAxiosのことを取り上げていました。

見出しは「Axios Is Growing and Profitable Despite Bleak News Landscape」というもので、多くのメディアはコロナ禍のあおりで、レイオフ、賃金カットが横行する中で、Axiosはそれもなく、今年は昨年比30%増の5千8百万ドルの収益を上げるペースで伸びていると報じています。

その秘訣は、ComcastやWells Fargoなどのスポンサーがついたニューズレターにあり、Axiosの収入の50%以上に貢献してることを初めて知りました。

が、そのことより私の目を引いたのは「来年早々には、2人1組のニューズチームを作り、国内4都市でローカライズしたニューズレターを出す」という一節でした。

その4都市とは、ミネソタ州ミネアポリス、コロラド州デンバー、フロリダ州タンパ、アイオワ州デモイン。特段の共通点は思いつきませんが、おそらく、Axiosの創業者で、CEOでもあるJim VandeHeiには、何か思惑があるのでしょう。何せ、彼は、ワシントンポストのホワイトハウス担当の政治記者から転じて、今やワシントンDCで名声を勝ち取っている政治サイトPoliticoを創業した人物でもあるのですから。

で、そのVandeheiは、その地方進出についてこう言っています。

「これは大きな賭けだ。朝のニューズレターで地元の読者を毎日惹きつけ、そこから積み上げるのだ。もし私たちが正しければ、それは超拡張性(superscalable)があり、ローカルニュースの難題を解決する一か八かの賭けの一部なので、これは取る価値のあるリスクなのだ」

ここでのキーワードは「ローカルニュースの難題」でしょうが、それについては具体的なことはWSJの記事にはありません。考えられる一つは、かっては全米のどの町にも2紙があったという地元紙が、今や1紙どころか、全くなくなってしまった状態を指す「News Desert」のことかも知れません。

で、その具体的な内容についてググってみたりAxiosのサイト内のどこかにないか探してみました。しかし、その計画名も、まとまった声明、発表文も見つかりません。

*しかし、このブログを書き終えた後、Axiosのサイトを見返していたら、どうやら1時間ほど前に「Axios Local」というページが追加されています。内容は殆どなく「読者が重要な問題や、その裏庭での開発をよりよく理解する助けをする」とあるだけです。その1ページだけのページに「Axios Denver」の初記事が載っていました。あ、重要な情報が一つ。スポンサーはFacebookだとあります。商売が上手い。

しかし、一箇所にだけ、その断片がありました。上記の「2人1組のニューズチーム」を構成する記者を募集するページにです。

「Reporter, Axios Local, Tampa」とあって、「我々は成長ステージにあるスタートアップです」などと記した後「新しいローカルニュースイニシアチブの一環として、タンパ都市圏をカバーする記者を採用します。これにより私たちの使命はアメリカのホームタウンにまで広がります」

さらに「我々の最新のベンチャー事業は、全米の年の報道する価値のある出来事を提供するためにローカルマーケットにアプローチします。記者は特定のマーケットで意味のあるローカルプレゼンスを作り出し、地域の読者にとって意味のあるトピックをカバーし、それが彼らの生活に関わることを認識させるために、(記事内容を)地方ー国ー世界の発展に結びつける」と高邁な理念を提示しています。

どうやら4都市は手始めで、いずれ全国の主要都市を網羅するつもりのようです。そんためにスタート時の記者には高い能力を求めているのでしょう。その待遇や福利もなかなかのようです。

サラリーの具体額は明示されていませんが「どこにも負けないサラリー(competitive salary)」とあり、福利面では「健康保険:本人100%補償、家族75%」とか、豊富な休暇に加え、学習・能力開発奨学金を毎年支給」などを列挙していて、なかなか魅力的です。

ネットメディアのローカルニュース報道で思い出すのがAOL傘下だったPatch.comです。これは「ハイパーローカル」と称していて、それこそ市や町レベルのニュースサイトで、読者の身近な情報の投稿も受け入れるスタイルです。

久しぶりに覗いてみると、「about」では「3000のlocal stationを運営している」とあるものの、その分布図を見ると州内に2つか3つしかない州は20近くもあり、事実上、機能停止しているものが少なくない一方、ニューヨーク州には119もあって、ニューヨーク市では大賑わいと極端な差があります。

VandeHeiの狙いは、こうした身近なニュース、情報サイトではなく、有能なジャーナリストを各州に配置して、州全体、全米、世界に通じるニュースを汲み上げていき、そこからAxios全体の読者の拡大につなげていくということなのでしょう。

なお、Axiosのモットーは「Smart Brevity」(賢い簡潔さ)で、記事が短くまとまっていることですが、「短くて複雑な問題を書き切れるのか」という批判もあるようです。

しかし、かってUSAToday紙が登場した時にも、他紙より簡潔な記事スタイルを批判する向きもありましたが、たちまち全米一の部数を獲得しました。その伝で行けば、Axiosが全米をつなぐネットメディアのチャンピオンになるのも夢ではないのかも知れません。