焦るトランプ陣営のお粗末な小細工だったようです。
先週、このブログ「バイデン大ピンチ?NYポストの爆弾記事」でご紹介した民主党のバイデン候補をおとしめるニューヨークポスト紙の記事のことです。
TwitterやFacebookは、”怪しい”ということで記事を差し止め、特にFacebookはサードパーティにファクトチェックを依頼するということだったので、その結果を待っていたのですが、どうも、まだその結果が公表されていないようです。
しかし、各メディアは、これはトランプ陣営が保守系タブロイド紙を使って仕掛けた”お馴染み”ロシア絡みの謀略という点で一致、勝負あったという感が強いので、大まかにまとめておきます。
その前に、NYポスト紙に載った「バイデン候補の息子のハンターが父親にウクライナのビジネスマンを紹介した動かぬ証拠」という見出しをつけた記事を簡単に言うとこういう内容でした。
昨年4月に、バイデンの地元デラウェア州の店に水に浸かったというノートパソコンが修理のために持ち込まれた。店主は修理したが3ヶ月経っても引き取りに来ないので、中身を見たら、バイデンの息子、ハンター・バイデンが映ってる猥褻ビデオと共にウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の上級幹部からのメールがあった。
その内容は、「過日、ワシントンDCに招待してくれて、お父上と会えてありがたかった」などとあった。そこで、店主はFBIに連絡し、FBIがそれを押収する前にハードディスクのコピーを取っておいたが、事態が表沙汰にならないので、今度は(トランプの個人弁護士を務める)ジュリアーニ元NY市長に連絡し、元市長の弁護士にそのコピーを渡した。そして、それが共和党寄りのNYポストに提供された。
問題は、当時、副大統領だったジョー・バイデン氏は、ブリスマ社の幹部と会談した後、ウクライナに行った際、ブリスマ社のオーナーの汚職事件を捜査していた同国の検事総長の罷免を求め、そうしなければ、経済援助をしないと脅し、実現させた。コンサルタントだったハンター氏が当時、ブリスマ社の役員で、数百万ドルの報酬を得ていたことから、これはバイデン元副大統領の”職権濫用”ではないかとほのめかすものでした。
大統領選3週間前というタイミング、ノートパソコンの中身が辿ったルートから、すぐにメディア関係者の疑念を呼びます。
専門サイトPolitiFact、Factcheck ORGなどによれば、問題のバイデン副大統領がウクライナの検事総長の罷免を求めたのは、汚職捜査をやる気のない姿勢を問題視したからで、それ以前から米国も、西側諸国も同じことを求めていた事実を挙げ、息子の利益のためとは全く関係がなかったとします。
逆にジュリアーニ元市長こそ、何度もウクライナに行き、米国政府がロシアのエージェントだと認定しているウクライナの国会議員(ワシントンポストによればこの人物はモスクワのKGB高等学校で学んだそう)と何回も会っている事実を指摘し、Daily Beastによれば、トランプの前補佐官だったジョン・ボルトン氏は「ロシアと繋がってるジュリアーニ氏には近付くな」とスタッフに警告したそう。
またワシントンポストの別の記事では、情報筋がトランプ大統領に<Do what you want to do, but your friend Rudy has been worked by Russian assets in Ukraine>との警告を送ったとあります。ジュリアーニはウクライナにいるロシアのスパイと働いているので、持ち帰る情報に惑わされるなという趣旨です。
これに関し、CBSニュースは「FBIが、このメールが外国の諜報活動に関連しているかどうかを調べている」と報じ、トランプ寄りのFoxNewsでさえ「米下院諜報活動常任委員会のアダム・シフ委員長が「ハンター・バイデンのメールはロシアのクレムリンから来た」という発言を取り上げる始末。
その一方、例の修理店店主を直撃したDaily Beastの記事では、店主がしどろもどろな応答に終始したことも描かれ、彼が、謀略の”コマ”に使われたことが強く印象付けられます。
キリがないのでこの辺にしますが、選挙集会で大勢に向かって民主党女性知事を「収監だ」と叫ぶほど見境のないトランプ大統領ですら、この件をバイデン候補攻撃の材料にしない(一回だけチラッとあったようですが)ことを見ても、安っぽい陰謀だったということでしょう。
しかし、4年前の大統領選で、民主党全国委員会のシステムがハックされ、機密情報が流出した件でもロシアの関与が指摘されました。今回はそれに連なるかもしれない謀略事件ですが、なぜか日本の大手メディアは知らんぷり。不思議です。
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