日本人は、遺伝子組み換え(GM)食品や人工知能(AI)がもたらすリスクについては世界平均より楽観する人の割合が多い一方、原子力発電のもたらすリスクや、オンラインいじめ、fake news、ネット詐欺などのインターネット上のリスクについては世界平均よりかなり高く、敏感だという興味深い調査結果が出ました。
これは、ロンドンに本拠を置くロイズレジスター財団(保険の ロイズとは無関係)が先日公表した<The World Risk Poll>で明らかになったものです。昨年中にGallup社の協力で、世界142カ国/ 地域で15万人にインタビューした、同財団として初めての大規模調査でした。
趣旨は「世界がより安全になるには、人々が直面するリスクと、それがどう認識されているかを理解する必要がある」というもので、今後、継続して少なくとも4回、行われるそうです。そして、この結果が世界的に共有されて、規制当局、政府、企業、研究者がコミュニティと協力してより安全な行動を取ったり、政策に生かしてほしいと高邁な目的を掲げています。
というわけで、内容も10章200ページ以上に及ぶ膨大なもの。そこで、このブログの趣旨に添う7章「テクノロジー関連リスクの認識」と8章「インターネット関連リスクの認識」に絞って見てみました。
テクノロジー分野で取り上げたのはGM食品、原発、AIの3項目。
まず、GM食品が今後20年間で自国の人々に役立つか、という問いかけに「役立つ」と回答したのは世界で21%にとどまりました。逆に「害を及ぼす」が48%にも達しました。その地域別の結果はこれです。日本で有害になると見ているのは42%で、世界平均の48%、東アジアの平均50%を下回りました。
東アフリカ、中央/西アフリカを除いて、ほぼ「有害」派が「有用」派を圧倒しています。この両地域には最貧国がいくつかあって、食糧難でもあって、GM食品のリスクは気にしていられないということでしょうか。低所得国に限れば、「有用」派は42%で、高所得国の22%のほぼ倍なのです。
次は原発。全体で見ると「有害」というより、「有益」と見る人が多く、それぞれ29%と40%でした。裕福なヨーロッパ諸国を中心に高所得国では有害43%で有用39%を上回りましたが、電力事情が安定しないこともある低所得国では52%対21%で、有用派が圧倒的に優勢でした。
ただし、意外なことに、高所得国での有用派は、学歴が高くなるほど増え、大卒以上だと有用46%で有害の39%を上回るのです。特に大卒「男性」に限れば、有用派は54%にも達しました。
日本では、有用が世界平均を5%下回る35%だった一方、有害が14%高い43%と高所得国の平均に並びました。
AIについては、その研究開発が進む中国や日本、韓国などの東アジアで有用とする人は59%にも及び、有害は11%止まり。特に中国での有害派は9%でした。日本の有害派は17%と世界平均の半分ほど。
有害だとするのは平均で30%で有用の41%を下回っていますが、全体として、GM食品や原発に見られたような豊かな国と持たざる国との連関はないようです。ただし、男女別で見ると、男性の方に警戒感が強いようです。特に若い男性に危機感が強いように見て取れます。
三項目の回答をまとめたグラフはこれです。肯定的回答の多い原発とAIはそっくりですが、GM食品への拒否反応が際立っています。
次の8章、インターネット関連のリスク項目に挙げられたのはオンラインいじめ、fake news、オンライン詐欺の3項目。回答者は、調査前の30日間にインターネットとソーシャルメディアを使った人です。
心配の一番はfake newsを受け取ることで57%に上りました。詐欺は45% 、いじめは30%でした。
一番左のいじめが意外に少ないのは、年齢が上がるにつれ、身近な問題ではなくなるせいかもしれません。65歳以上では21%止まりだったそう。ただし、若いネットユーザーが多く、高齢ユーザーの少ない低所得国では53%がYESと答えています。
右の詐欺については、学歴と年齢が上がるにつれて心配する割合が上がったそう。特に西欧で高く、ポルトガル、フランス、スペインでは7割以上の人がYESと答えたよう。
また中央の偽情報を受け取ること=fake newsについて、このレポートは「他の2つより心配する人が多いのは驚きかもしれない」として、その理由について「この問題がメディアや当局者から注目されるようになった」ことを挙げていました。
注目されるのは、日本ではこの3項目のいずれでも、世界平均をかなり上回っていることです。その数字は下に掲げたグラフにありますが、細かくて見にくいでしょうからまとめておきます。オンラインいじめ42%(世界平均30%)、fake news73%(同57%)、オンライン詐欺60%(同45%)です。
さて、冒頭の、日本人のリスク意識と世界との食い違いについて、こんなまとめグラフが用意されていたので紹介します。
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