<tax gap>というフレーズがあることを初めて知りました。<本来、納付されるべき税額と実際の納税額との差額>ということのよう。
「貧困と不正からの解放を目指す」と謳うNPO、ActionAid Internationalは、このフレーズを‘tax gap’と、日本では「いわゆる」というニュアンスを出すために使うチョンチョン括弧と同じだと思われる表現で、「南半球に多い開発途上国20カ国で、Facebook、Alphabet(Google)、Microsoftの‘tax gap’は28億ドル(約3000億円)に達する」とする調査結果を公表しました。
そして、これだけの税金が途上国に入っていれば、途上国で不足する看護婦や助産婦、小学校教師を大量に雇え、生活向上に繋がると主張しています。
近年、GAFA(Google/Amazon/Facebook/Apple)に代表される巨大IT企業が、どこもろくに税金を払ってないという問題がようやく取り沙汰されるようになりました。
知的財産権などを法人税率の低い国に移し、世界中で上がった利益をそこに集中させることで、実際にビジネスを展開している世界各国の政府に法人税を払わないという仕組みです。一応、合法ではあります。
それを是正して「デジタル課税」を実現しようという議論は、G20財務相・中央銀行総裁会議やOECDなど「北半球の先進国」中心に進んでいて、「南半球の途上国」に目を向けた報道が無かったように思います。
しかし、考えてみれば、インターネットは世界中に行き渡り、「南」の途上国もGAFAなどに新たな市場を提供し、何十億人ものユーザーデータを提供し、巨大IT企業の経営・収益に貢献しているわけです。
そのことに気づかせてくれたActionAidの調査結果については、当初、BBC Newsの記事で知りました。
しかし、この記事でも、結局は「北」のヨーロッパ諸国とGAFAとの交渉などに話が展開し、「南」の途上国への言及は通り一遍の印象で、ActionAidへのリンクもありません。
なので、ActionAidのサイトで調査の元記事を読んでみたわけです。「巨大tech企業が途上国で支払っている税金については殆ど知られていない」とし、「世界最貧国のいくつかで、資金不足の健康と教育システムを変革するのに十分な巨額のお金が入らず、危機に瀕している」とアピール、「南」への関心を高める狙いがあることが感じられます。
なぜ、Facebook、Google、Microsoftの3社に絞ったかについての説明はありませんが、この3社の‘tax gap’28億ドルは氷山の一角だとも認識しています。
しかし、その28億ドルでも、看護師なら729,010人、助産婦770,649人、小学校教師879,899人を雇えると試算しています。
この細かな数字をどう算出したかについても説明があって、20カ国それぞれの人口、給与水準、平均世帯収入などを勘案して合算したものだとあります。
また28億ドル自体については、3大tech企業のannual report(決算書)を参照、各国のユーザー数などから国別の利益を想定し、課税率は国際企業課税の改革を求める独立委員会(ICRICT)の提示する25%を当てたそうです。
本文の最後にはこうあります。「この報告は10月29日のAlphabetの4半期決算の前に書かれた。20カ国15億人がその利益に大きく貢献してることが明らかになることを期待したいが、より透明性の高い報告要件がないと、大手tech企業が各国政府に支払う税金を決定することは不可能だ」
つまり、各国別の収支を明らかにすべきだというわけです。それこそがデジタル課税の根拠になります。
そして締めはこうです。「グローバルルールが公正、かつ効果的ならAlphabetの納税だけでも、この20カ国で24万4360人の看護婦を雇用するに十分だ。それはコロナ禍に対する公衆衛生の対応改善にもなる」意気盛ん。勉強になりました。
なお調査対象の20カ国は次の通り Bangladesh, Brazil, Ethiopia, Ghana, India, Indonesia, Kenya, Malawi, Mozambique, Myanmar, Nepal, Nigeria, Senegal, Sierra Leone, South Africa, Tanzania, Thailand, Vietnam, Zambia, Zimbabwe.
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