大統領時代、Twitterを巨大メガホンにしての言いたい放題で支持者を熱狂させ、マスコミを振り回し続けたトランプ氏ですが、例の1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を煽ったとして、Twitterのアカウントは永久停止になってしまいました。

そこで、近頃はニュースになることもめっきり減っています。これでは、4年後の大統領選再出馬に差し支えるということでしょうか、独自のソーシャルメディアプラトフォームを構築すると言い出しました。

 

側近の顧問や本人は大真面目で宣伝し、メディアも色々と報じていますが、中には「失敗するのは目に見えている」とか「窮地に追い込まれて苦し紛れだ」という強烈な批判も出始めました。

ことの始まりは、21日のFoxNewsのインタビュー番組に出演した永年の顧問Jason Miller氏が、トランプ前大統領は自身のソーシャルメディアネットに復帰する計画を立てており、「おそらくここ2,3ヶ月以内に戻るのを目にしよう」と語ったことでした。

そのUSATodayによると、そのプラットフォームが既存のものか、新設するものかどうかには言及しなかったそうですが、「多数の企業がソーシャルベンチャーを始めるためにトランプと連絡をとっている」と述べ、「新しいプラトフォームは数百万、数千万人の人々を惹きつけよう」と意気軒昂だったようです。

続いてトランプ氏自身も、翌日にリリースされたFoxNewsのコメンテイターLisa Bootheさんが始めたPodcast「The Truth」の第一回目に登場、「私は自分たち自身のプラットフォーム開設に関係することを進めている。それをあなたはすぐに聞くだろう」と、自身のソーシャルメディアプラットフォームの立ち上げを「思わせぶりに語ったが、その時期やそれ以上の詳細は提供しなかった」とPoliticoが報じました

そのほか、多くのメディアが一斉に報じたのですが、すぐに批判的な見方も出始めました。その一つがVanityFairの22日の記事

「どれも理解出来ないトランプの考えを聞くことの出来ない時代は終わりに向かっている」という皮肉な書き出しから始まり、こう指摘します。

「おそらくトランプは、彼の信奉者が彼の敵に対して暴力的な行動をとることを推奨し、彼の弾劾に票を投じた共和党議員を議会から追放するよう扇動し、馬鹿げた陰謀論を助長しよう。それが疑いもなく彼の新しいソーシャルメディア戦略の要素になる」

23日にはWashington Postの政治コラムニストPaul Waldmanが「トランプは彼の失敗リストにネットワークを加えることを考慮している」とこれまた皮肉な見出しをつけ、「私はそれが惨めに失敗するのを楽しみにしている」と書き出しています。

というのも、Twitterでの発言はトランプファンだけでなく、彼が嫌うマスメディアを含む幅広い人々に届き、注目を集めることになったが、支持者だけが集まる独自のプラットフォームでは保守派にさえ魅力的じゃないからだと言うのです。

加えて、トランプのビジネスは不調で、議事堂襲撃事件、税務調査など「ワシントンからフロリダまで訴訟や捜査に包囲されている」とし、この試みは「彼の最も騙されやすい支持者からできるだけお金を搾り取ろうと意図するもので、完全に彼の性格に合っている」とケチョンケチョンな言いよう。

24日のNPRの記事では、トランプのビジネスが不調の理由を具体的に挙げ、新たなプラットフォームの立ち上げは困難だろう、と踏み込んでいました。

米国では知られたことなのでしょうから、一行で済ませているのですが、1980年代にトランプが手掛け、3年で頓挫したアメリカンフットボールの新リーグUSFLや、同じく3年で終わった航空会社Trump Shuttleなどを挙げ、「これらはトランプの名前が今のように物議を醸さなかった時代に立ち上げたものだ。それでも失敗した。今や彼のブランドは1月6日以来、傷ついており、ソーシャルメディアプラットフォームを立ち上げようとする努力はますます困難になっている」と書きます。

どういうことか?リンク先のNew York TimesやWashington Postの記事によると「今や、銀行、大手不動産会社、その他の企業がトランプの会社との関係を切っている」とあるので、ちょっと調べると、日本では報じられていないケースがいくつも出てきました。

まず銀行では、最大の貸し手であるドイツ銀行はじめ著名な銀行が距離を置いているそう。トランプ氏のファミリービジネスであるオンラインショップをサポートしていたShopifyが手を引き、閉店に追い込まれ、パンデミックで経営不振に陥ったトランプ氏所有のワシントンのホテル売却を担っていた不動産仲介会社JLLも販売代理から降りてしまいました。

さらにトランプ氏自慢のゴルフでは、4大トーナメントの一つPGA Championship2022の会場に予定されていたTrump National Golf Club Bedminsterを「PGA of Americanoブランドに悪影響を及ぼす」との理由でキャンセルされてしまっています。

こうしたことから、NPRの記事はSyracuse大でソーシャルメディアとその影響力を研究しているJennifer Grygiel教授の言を最後に紹介しています。

「トランプのブランドは何かが根本的に変わった」「我々が1月6日に見たものを消すことは決して出来ない」「彼は再び影響力を築くことを望んでいると思うが、同じ方法では出来ない」「彼は負の側面に押し込まれている」

日本のマスメディアはトランプ氏がまだ一定のパワー、影響力を有しているようにしか報じていませんが、もしかしたら、このソーシャルメディアプラットフォームの構築構想は追い詰められつつある彼の焦りなのかもしれません。