コロナウィルスに3000万人以上が感染した米国では、各地で厳しい外出制限が掛かり、新聞広告はあがったりで、殆どの新聞社で賃金カットや人減らしが当たり前のように行われ、たくさんの新聞の廃刊も報じられました。

しかし、紙の新聞の宅配やニューススタンドでの一部売りへの影響はどうなのかについては目にしたことがありません。調べようにも広告主の業界団体であるAAM(Alliance for Audited Media=かってのABC:Audit Bureau of Circulation)のどこを見ても、その類のデータを見つけられないのです。

話題のnews letterプラットフォームSubstackでSecond Rough Draftを配信しているRichard J.Tofel(元WSJの出版人補佐/現Propublica社長)の3月のnews letterによれば、「一般の人は2013年から新聞の発行部数を利用できなくなった。広告主のみが高価な購読料を払って利用できる」とあります。

この辺りに、世界最悪のコロナ禍で、当然、影響を受けているであろう宅配部数や一部売り部数の減少に関する記事が出てこなかった理由があるようです。

ところが、英国のメディア業界サイトPress Gazetteが、いかなる手段かは知りませんが「AAMの部数証明書」を入手したというのです。その中身は、同サイトが昨年10月に「米国の10大新聞」と紹介した10紙についてのコロナ・パンデミック前(2020年第1四半期=1~3月)とパンデミック後(同第2、第3四半期=4~9月)それぞれの平均発行部数です。そのグラフがこれです。

記事には、その実数の一覧表がありますが、やや意外なことに、WSJ、USA Today、NYTの上位3紙以外には大きな減少は生じていません。(Tampa Bay Timesが微増しているのは日刊から週2日刊に移行したためのよう)

上位3紙の中で目立つのはUSA Todayのひどい落ち込みです。実数では486,579部から292,210部減って194,369部になっています。なんと60%減という凄まじさ。

その要因は、「唯一の一般全国紙」の性格から、全米の殆どのホテルやモーテルに置かれ、販売されていたものが、外出規制で旅行者が大幅に減っって売れなくなったことです。パンデミック前は298,312部も売れていた一部売りは44,947部と激減しました。

WSJが994,600部から184,542部(19%)減らして、810,058部になったのも同様の事情のよう。宅配とニューススタンドやグローサリーでの一部売りのトータルはマイナス4%に止まりましたが、ホテルでの売り上げが51,665部から6,008部まで減少したせいです。

その点、NYタイムズは、元々、ホテル販売が9,845部と少なく、それが977部と10分の1になっても被害は軽微。ニューススタンドでの一部売りは47,285部から33,884部に減らしましたが、宅配部数減は2万部余りに止まったので、トータルの部数は410,562部が12%減の360,015部と2紙に比べればマシな数字になりました。

ただし、NYTの場合は、この間に、デジタルの購読者が500万から670万にまで増えているので、経営的には盤石でしょう。この事情は、WSJも同様で、この間にデジタル読者は190万から250万に増えています。

ただし、USA Todayの方は微妙。親会社のGannettもデジタル購読の成長に力を入れていますが、「数百のローカル紙、地域紙合わせて110万件」に止まっているそうです。

そのほかでは、タブロイドで宅配はほぼないと思われるNYポストがマイナス15%で、ワシントンポストと、LAポストがそれぞれマイナス9%、マイナス10%でしたが、それ以外は2~4%のマイナスに止まっていました。

大都市圏以外では、地元の主要紙に部数減の脅威はあまりなかったということでしょうか。

それにしても、AAMが把握している大手紙の発行部数を見て、ひと昔と様変わりになっているのを痛感しました。どの新聞もデジタルシフトを加速してる証左ですね。。例えば、かって200万部とも言われ、全米一の新聞だったUSA Todayの実部数は、もはや50万部もないんですね。まあ、デジタル移行が進めば、意味のないことに違いないですが。