前回のブログ記事「かって1000万部の読売がNYタイムズに抜かれた!」では、アナログの「紙」中心の読売が次第に部数を減らす一方。デジタルに舵を切ったNYタイムズが、当面の目標「1000万有料購読」を射程に入れたという話を紹介しました。
それを書き終えて、ふと、2004年末にリリースされ、メディア関係者の間で話題になった近未来のメディア状況を予測する9分ほどのフラッシュムービー「EPIC2014」で流れた最後のフレーズを思い起こしました。
「2014年、ニューヨークタイムズはオフラインとなった。タイムズはエリート層と高齢者向けに紙媒体のみを提供する」
紙の新聞のみに戻る、というのです。なぜそうなるのか。それは個人情報を最も集めうるGoogleとAmazonが2008 年に一体化してGooglesonが登場し、一人一人の人間関係、属性、消費行動、趣味などの知識を全て把握した上で、コンテンツや広告をカスタマイズして個々人に届けることが可能になったのが始まりだとします。
そして、Googlesonは2014 年、個人のブログの書き込みやスマホの映像までありとあらゆるものを収集、整理して個々人に見合う内容を配信するEPIC=Evolving Personalised Information Construct(進化型パーソナライズ情報構築網)を始めて人気となる、という見立てです。
それはうまくいけば、「より深く、より幅広く、より詳細にこだわった世界の要約と言える」。しかし最悪の場合、「些細な情報の寄せ集めで、その多くが真実でなく、狭く、浅く、扇情的な内容になる」
NYタイムズは、後者の「最悪」の状態が広まったことに抵抗して、オフライン化、つまりデジタルの世界から離脱するだろうという読みでした。
実はNYT自身、ウェブでパーソナライズ実験をしていました。NiemanLabの記事によると、3,4年前に行われたもので、ユーザーのサイト内での行動、住んでいる場所、訪問した時間など様々なシグナルに基づいてそのユーザーにふさわしい記事に出会えるような試みをしているとのことです。
しかし、それはあくまでNYTの記事の見せ方の工夫で、外部のコンテンツを取り入れてのものではなかったようで、EPICのようなものではありません。
NYTがデジタル版の有料化に踏み切ったのは2011年のことでした。それから10年。この間に様々なウェブメディアが生まれ、百花繚乱の様相。多くの人が、どのメディアを頼りにするか迷っていることでしょう。
取捨選択する限界を超えた。そんな思いから、人々は今、ブランド力とコンテンツの質に定評のあるものに頼ることに回帰しているのかもしれません。それも、限られた数のコンテンツでいい、という思いで。
それを、EPIC2014の二人の作者に問いかけてみました。しかし、拙い英語で趣旨が伝わらなかったか、まだ、回答はありません。
そのうちの一人、Matt Thompson氏は、なんと、最近、NYTに入社、調査報道チームに編集長になっていました。少なくとも、NYTが今後もデジタルで躍進すると信じてのことでしょう。
コメントを残す