私が大学生だったのは半世紀も前のことで、当時は「学歴社会の到来」などと言われたものですが、3年生になって参加したゼミの先生が言った言葉を今も忘れません。
「アメリカの学歴社会は日本なんかよりずっと凄いんだよ」
久しぶりに、この先生の言葉を思い出す調査を紹介する記事に出会いました。お馴染みPew Research Centerの分析による<First-Generation College Graduates Lag Behind Their Peers on Key Economic Outcomes>と題するものです。
First-Generationとは直訳すれば「第一世代」ですが、ネットで検索すると「‘First-Generation’とは両親が,高校卒業後の教 育歴をもたない学生のことである」と山形大学の河野銀子教授が解説しています。
つまり、Pewの分析は「親が大学出でない大卒者は、親が大学出の同期生よりその後、経済的に劣る」という生々しいというか冷酷な事実を明け透けに報じる内容なのです。
その冷酷な事実を駆け足で見ていきます。
まず、「学士」号以上を取得した22歳から59歳の「成人」の70%は親が「学士」以上の教育歴がありました(この人たちをAとします)。 「学士号」を持たない親を持つ学士号取得者は26%に止まりました(この人たちをBとします)。
で、この親が学士号以上のAの年間世帯収入の中央値は13.5万ドルで、Bのそれは9.96万ドルでした。(3人家族を想定)
さらに、資産で見るとAは24.45万ドルなのに対し、Bは15.2万ドルでした。
この点についてPewは、Aはより裕福な家庭出身で、Bはそうでもないかもしれないので教育債務をより負っているからかもしれないと注釈しています。
成人が「学士号」を取得する可能性は両親の学歴に左右されるとも指摘しています。
両親とも学士以上の教育歴があればその子弟の学士号取得率は80%、父母いずれかが学士号以上なら60%、少なくとも父母のいずれかがcollege(この分析では2年制の短大を想定しているようです)卒なら34%、両親とも高卒以上の教育歴がない場合は20%に過ぎません。
進学先も、親が学士以上なら、その子弟Aの85%が4年制大学に進み、2年制は15%なのに対し、学士号のない親の子弟Bの4大進学率は61%で、2年制は39%だそう。そして進学先のレベルもAの方が高い。
また、親が学士号以上なら、その子弟Aが、修士、博士、専門職学位を取る可能性が高く、その割合は43%に達し、親に学士号のない子弟Bの35%を上回ります。この上級学位取得者の世帯収入は高く、その中央値は修士で11.74万ドル、博士で14.23万ドル、専門職で16.21万ドルだとか。
これらを総合すると、親も学士号以上で本人も学士号以上の第二世代Aの場合、その資産は24.45万ドルで、親が学士号のないBの15.2万ドルを上回ります。
一方、在学中の借金はAで56%、Bで66%に達しますが、Bの方が2.5万ドルも多いと分析しています。
そして、親から受け取る遺産もAの方が一般的に多いとも。
このほかにも、親が学士号以上の第二世代のAがいかに有利かを分析しているのですが、「学歴社会」というのは、単にいい大学を出れば、その後も恵まれる可能性が高いという意味だけでなく、その家族にまで繋がっていくことだと実感させられました。半世紀前の私の先生はそこまで見通していたかどうかは分かりませんが。
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