NewYork Timesのオフライン化を予言した「EPIC2014」を紹介した前々回(5月17日)の記事では、あまりにも多くの情報に我々がアクセスでき、また提供される時代にあることに触れました。

そのようにニュース取得の選択肢が広がったことと政治知識とはどう関わっているのか、というテーマに取り組んだ新たな学術的な研究がヨーロッパ17カ国、2万8千人を対象に行われたことを知りました。

元の論文にはとても歯が立ちませんが、ハーバード大NiemanLabの創設者Joshua Benton氏噛み砕いて紹介してくれているので記録しておきます。

と言うのも、ニュース取得にあらん限りの時間を費やす人より、主として新聞や公共放送によるニュースを頼りにしている人たちの方が政治に関する知識が確かだという、まあ、私のような古〜いタイプのニュース好きには嬉しい結果になった、とあったからです。

この大掛かりな調査は欧州政治コミュニケーション学者プロジェクト(NEPOCS)に関わる研究者18人が協力してオンラインで行ったもので、各国1700人づつの対象者に、テレビ、ラジオ、公共放送、新聞、ソーシャルメディア、オンラインニュースサイト、オルタナティブメディア、政治トークショーなどのインフォテインメントなどをどの程度、頻繁に使うかを尋ねました。

その回答をもとに、人々を5つのニュースユーザープロファイルに分類したのです。それがこれです。

ニュースミニマリスト(17%):メディアやプラプラットフォームを殆ど使用せず、ニュースの消費が少ない人は、政治的関心が関心が最も低い。年長者が多く、平均的ニュースユーザーよりやや教育がある。

ソーシャルメディアニュースユーザー(22%):ニュース取得はもっぱらFacebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディアからで、それ以上の情報は他から殆ど入手しない。「大事なニュースは自分で探さなくても、ニュースが自分を探してくる」と考える傾向がある。メディアへの信頼は低く、教育程度も政治的関心も低い。

伝統主義者(19%):伝統的で公共サービス志向のニュースソースを好む。①と②よりインフォテインメントを含むテレビ視聴がより多く、新聞、ラジオからニュースを入手。年齢的には最も高く、教育レベルも最高。政治的関心があり、メディアを信頼している。殆どが男性。

オンラインニュースシーカー(32%):さまざまなニュースソースやオンラインプラットフォームを積極的に使ってニュースに出会う傾向が強い。一般的に女性で、上記の3タイプより、多くの異なるタイプのメディアを使うが、政治情報においては同じ考えの視点を求める傾向がある。マスメディアブランドに最も懐疑的で、オルタナティブメディアと非ジャーナリスティックソースを使う傾向がある。

ハイパーニュースコンシューマー(10%):あらゆる種類の報道機関やプラットフォームからあらゆる種類のニュースを時間のあるかぎり消費する。政治への関心が最も高く、教育レベル、メディアへの信頼も最も高い。ニュースに遅れないように、6つ以上の報道機関と3つ以上のソーシャルプラットフォームに頼っている。

以上の5分類の人々のニュース入手手段を図解したものがこれです。原画でも見にくいですが、まあ違いがあると言う感じを掴んでいただくために引用しておきます。

 

国別に特徴を見ると、ドイツ、フランス、英国、オランダはニュースミニマリストの割合が高い。全体で17%でしたが、ドイツ26%、フランス28%、英国28%、オランダ24%などです。そしてこれら北部の裕福な国は、資金源が豊富な公共放送への信頼度も高いようです。

一方、南欧のスペイン、イタリア、ギリシャにはミニマリストは少なく、10%以下です。その反面、オンラインニュースシーカーやハイパーニュースコンシューマーの割合が高くなりました。オンラインニュースは安価で、確立されたメディアは信頼されていないからだとBenton氏は書いています。

で、これも見にくいですが、各国別の5タイプの割合を示すグラフです。国ごとにかなり異なることがわかります。

で、最初に戻って、対象者には、「グレタ・トゥーンベリとは何者?」とか「欧州委員会の新リーダーは誰?」「あなたの国の外務大臣は?」「あなたの国に住む外国生まれの人の割合は?」といった質問が出されたそう。

その結果は「伝統主義者」と「オンラインニュースシーカー」が他の3グループより優れていたとのこと。時間の許す限り、多くのメディア、プラットフォームに目を配っている「ハイパーニュースコンシューマー」グループの人々の政治的知識については「驚くべきことに負の相関さえある」という結果になったそう。

つまりこういうことのようです。

<伝統主義者は他のグループの人よりも少ない数の情報源からの情報を消費するため、私たちの調査結果は、量よりも質重要であることを示唆しています。したがって、より広範囲のニュースアウトレット、チャネル、プログラム、およびプラットフォームからのニュースを消費することは、必ずしもより多くの情報に通じた市民を生み出すは限らず、逆につながることさえあります>

Benton氏の記事の見出しは「健康的なニュースのダイエットはなんだろう。多分、伝統メディアだ。摂り過ぎはかえって情報不足になる」でした。心強い!