米国新聞業界の窮状については、このブログで度々、紹介してきましたが、ちょっとだけ希望が持てる数字に出会いました。印刷された紙の新聞と、デジタル版の有料購読者を合わせた昨2020年の「推定部数」が、1987年以来、初めて前年を上回って、部数減に歯止めがかかったようなのです。

これはPew Research Centerが2年毎に更新しているSTATE OF THE NEWS MEDIA「Newspaper Fact Sheet」の最新版で示されたものです。Pewの調査は外部データに頼っており、そのデータソースのありようが変わったりして、一概に比較できないようなのですが、部数のトレンドはこうです。

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インタラクティブなグラフの「Data」ボタンを押すと1940年から現在に至る発行部数の数字が出ますが、それによると1960年代半ばに平日版の発行部数は6000万部に達し、それ以後、1992年まで横ばいでしたが、この時期にインターネットが普及し始め、部数減の時代に入ります。そして2017年には往時の半分にあたる3000万部をも割り込んでいます。

そして、このデータ上では、2020年の数字は2019年より6%強減って2430万部となっています。ただしこの数字は各新聞社がAlliance for Audited Media(AAM*旧新聞発行部数公査機構=ABC)に報告した有料デジタル購読者を含む「部数」の集計なのですが、なぜかは分かりませんが、New York Times、Wall Street Journal、Washington Postの全国紙3紙は、デジタル部数を報告していないのだそうです。

しかし、上場企業のNYTimesのデジタル部数はSEC(証券取引委員会)への報告書で分かりますし、WSJの方は折々にウェブで公表しています。(WaPoは推定値が他メディアで報道されることがありますが、自社発表はないようです)

そこで、NYTとWSJの有料デジタル版購読者数をAAMの数字に足し合わせるとこうなりました。紙の部数の減り方が激しいので、年々増えているNYTとWSJのデジタル版有料読者数を加えても、前年超えには至らなかったのですが、2020年、AAMの数字では6%減ったものの、NYTがデジタルで50%増、WSJが同じくデジタルで29%増を果たし、紙+デジタルの総部数は3564万部と、ついに2019年の総部数3236万部を10%上回る結果になったのです。前年比で上回るのは1987年以来ということです。(単純に足し合わせるのは問題だという指摘もありますが、難しい)

かっては、「米国の新聞社の収入の7~8割は広告収入だ」と言われました。それは分厚い新聞を埋め尽くすクラシファイド広告によってでした。しかし、「紙」の部数減少で、その構造は様変わりしました。例えば、2000年の数字を見ると、広告収入は82%を占め、販売収入は18%に過ぎません。

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しかし、2020年は、その構造が逆転する転換点になりました。紙の衰退とともに広告収入は2000年の487億ドル、5兆円近くから昨年は88億ドル、9千億円程度に激減、販売収入は新聞単価の値上げとデジタル版の普及で2000年の105億ドルから111億ドルと微増し、広告収入を初めて上回ったのです。

とはいえ、広告収入と販売収入を合わせた業界規模は、ひと頃の3分の1程度になり、編集局の記者、編集者、カメラマン、ビデオ担当者らの総数も2004年の71640人から、2000年は30820人と半減以下になりました。そして賃金も記者の中間値が3万6千ドル程度と低いままです。

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「紙」の復活は難しいにしても、デジタル版の有料購読者が増えて、少しでも事態が改善されることを願うばかりです。前回のブログで紹介したように、米国のオンラインニュースに支払っている人は3年前の16%から21%にと、着実に増えていることですし。