昨日の読売夕刊のTV MEDIA欄に「民放改編 ネット視聴を意識」とあり、11日から放送と同時にインターネットで流す「同時配信」をキー局5社が揃って提供するーーと報じていました。

そそっかしい当方は、朝から晩まで、同時配信しているNHKプラスと同じサービスに乗り出すのかと勘違いしましたが、記事をよく読むと、各局が自前サイトで実施するのではなく、今、各局共同の見逃し番組の配信サービス「TVer」で行うとのことで、しかも、プライムタイムの午後7時から11時までの番組に限ってのことのようです。

24時間、スマホを離さない若者にテレビ番組をスマホで見てもらおう、ということで「ネット視聴を意識」というわけですが、なんだか安易な取り組みにも感じます。

というのも、ケーブルニュース番組の草分けCNNが3月29日から、Streamingによるニュース配信事業を始めていて、それこそネット時代のテレビ局の新たなありようを示しているように感じていたからです。

ストリーミングはNetflixやAmazon Primeに代表されるように、映画やドキュメンタリーをオンデマンドで配信しています。CNNも、ケーブルで24時間、最新ニュースを流す一方、cnn.comのサイトにもビデオコンテンツを置き、オンデマンドで視聴できます。

ですからCNN+(plus)という新ビジネス、もしかしたらCNN本体で流したニュースを収容し、視聴者は好きな時に見られるーそれならCNNのサイトと大差がないのでは?と当初は思いました。

ケーブルニュースの最古参とはいえ、近年は後発のFoxNewsの好調が伝えられ、その後塵を拝し続けているだけに、今月2日のNewYorkPost紙などは、「PlusはCNN危機の中でのサービスか?」との見出しで、CNNの格付けが低下し、(ケーブルテレビの契約を解除する)コードカッテングが増加しているため、従来のケーブルを避けている視聴者を惹きつけるためと言われていると書きました。

さらに、Plusの契約者があまり増えなければ、近く経営統合するDiscoveryのストリーミングサービスDiscovery Plusに統合されるかも、と散々です。

しかし、CNN+のラインナップを見ると、現在のCNNとは構成がかなり異なり、ニュース好きのアメリカ人には結構、魅力的なのではないかと思えてきました。

これはCNNのデジタルコンテンツのマネージャーDaniel Wine氏がTwitterに投稿した、Plusの内容まとめです。

左側にあるのは、従来のCNN Newsに近い内容。各時間帯に番組ホストが最新ニュースを選んでライブで報じます。右側は著名なジャーナリストらによる週1回の長尺ニュース解説的な番組です。これは放映時間が決まっていて、その時間に視聴できますが、後でオンデマンドでも可能です。このホストの中には、120万人のTwitterフォロワーがいる伝説のバスケットボール名選手Rex Chapmanもいて、NYTimesも取り上げています

また、詳細はまだ不明ですが、CNNの記者、業界のリーダー、専門家のゲストに対し、視聴者が前もって質問を画面に打ち込んでおくことができるようで、番組内で、これを巡って議論を展開することもできるインタビュークラブという機能もあるとのことです。

もちろん、過去の膨大なビデオコンテンツへのアクセスもオンデマンドで可能で、新たなオリジナルシリーズも提供するとしています。これで、月6ドル、年間60ドル。(4月26日までに契約すれば”生涯”月3ドルだそう)

実は、ストリーミングでのニュース事業はFoxNewのFox Nation、NBC News Nowなどが先行しています。いずれも広告付きで無料です。このうちFoxの方は地域制限で日本では見られません。で、NBCのものを見たのですが、単なるニュースの羅列のようにも見え、新味は感じませんでした。

CNNの日曜昼前に放映される「Reliable Source」の3月27日の番組で、ホストのBrian StelterがCNN Plusの中心人物二人を招いての会話をしていますが、そこでCNNの上席副社長のAndrew Morse氏がこんな発言をしています。

「私たちは唯一のグローバルなビデオ主導のニュースサブスクリプションビジネスになるでしょう。(有料でやることが)重要である理由は、ニューヨークタイムズを見てください。誰もが他の(無料)ストリーミングサービスを指し示すことに熱心です。そして、実際に私たちがやろうとしていることは、何か違うことです。New York Timesは、新聞社から現代のデジタル企業へと変貌を遂げ、サブスクリプションの急成長に対してウォール街から報われてきました」

そこでColumbia Journalism ReviewでJon Allsop氏はこう書きます

<Timesは、近年、昔ながらの新聞社から、コアニュースビジネスだけでなく、オンライン加入者を追加することに成功した多面的なデジタルの巨人に移行しました。また、料理、ゲームなどさまざまなサブスクリプションの組み合わてもいる。CNNの幹部は、タイムズがテキストで行ったのと同様のことをビデオで達成できると考えている>

ちなみにもう一人のゲストでCNN PlusのゼネラルマネージャーのAlex MacCalumさんはかってNYTimesの新製品責任者でした。(Stelter氏も元NYTimes記者)

ビデオニュースの世界でもNYT方式が席巻することになるのか。とりあえず「生涯半額」で契約できる26日の契約者数に注目です。