ロシアのウクライナ攻撃が止みません。このところ、東部での民間施設を標的にした砲撃も目立っているようです。しかし、NATO(北大西洋条約機構)加盟国でないウクライナは、他国の軍隊による直接の助力も得られず、苦しい展開です。
そうした中、NATOの事実上の盟主とも言える米国の市民は、この戦いをどう見ているのかを包括的に聞いた調査に出会いました。多分、日本語メディアでは紹介されていない興味深い結果ですので記録しておきます。
これは英誌The Economistがスポンサーになって、有力世論調査機関YouGovが毎週のように行なっている調査で、3月26-29日と4月2-5と連続してロシアのウクライナ侵攻についてほぼ同じような質問を行いました。大勢は2回の調査で変わりませんので、最新の数字の方のいくつかを紹介します。
まず、世界はこのために、「5年前に比べて冷戦の可能性が高まった」と見る人は64%にも達しました。「核戦争」の可能性が高まったというのも53%で、米国民は事態を深く憂慮していることが分かります。
ただし、その決着がついてロシアの侵攻が終わるまで2~6ヶ月かかるという見方が20%、6ヶ月以上が15%、1年以上という見方も13%もあります。逆に1ヶ月以内は4%、1~2ヶ月は9%に止まり、長期化するとの見方が強いようです。
最近のロシアによる民間施設への攻撃について、「意図的」だと73%が認め、「違う」10%、「分からない」17%を圧倒しました。
これに関連し「プーチン大統領は戦争犯罪人か」との問いには72%が「yes」とし、「no」10%、「not sure」19%でした。
また、ロシアによる核兵器使用についての不安感も強く、「とても起きそうだ」が13%、「もしかしたら」が40%もいました。「おそらくない」19%、「あり得ない」4%を大きく上回っているのです。
で、そのプーチンによるウクライナ侵攻が米国との戦争に繋がるか、については「十分ありうる」が9%、「ややありうる」43%と5割を超えました。1週間前の調査ではそれぞれ9%と33%でしたから、危機感が急速に高まっているかに見えます。
ですから、そのロシアとの戦火に繋がる行動に米国が出ることには慎重で、「飛行禁止区域をウクライナ上空に設ける」のを「いい考え」とするのは36%、「ロシア兵とは戦わないが米兵をウクライナ援助に送る」は33%で、「ウクライナ上空のロシア軍機を撃墜する」という強硬論はたったの18%で、それは「悪い考え」が52%でした。
と、なると経済制裁になるわけですが、米政府のそれを「強く支持する」45%、「やや支持する」22%と「支持」が3分の2に及んでいます。「さらなる制裁」についても62%が認めるとし、ごく最近の「原油放出」についても「強く支持」29%、「やや支持」24%と過半数の支持が集まりました。
こうした米国政府の対応について「物価が上がっても認める」が68%にも達し、「それはいやだ」の16%を圧倒しています。
さて、そのプーチンは強い指導者か、との問いには「「とても強い」が25%、「まあ強い」が35%と「強い」が計60%ですが、1年後も大統領のままだという見方は38%に止まります。そうじゃないが26%で、わからないは37%でした。クーデターなどを期待してるんでしょうか。
対抗するゼレンスキー大統領への好感度は高く、「とても好ましい」39%、「好ましい」26%と計65%で、「とても強いリーダーだ」が44%、「まあ強い」が35%で79%と驚異的な数字です。そして1年後も大統領だと思う人は47%、そうじゃない17%、わからない36%でした。わからないと答えた人を除けば4分の3が1年後もゼレンスキー大統領だと判断している計算です。
そして、どちらが勝利するかについては、ロシアの攻勢が続いているにもかかわらず、ウクライナが勝利すると見る向きは22%で、ロシアの18%を上回ります。ただし、どっちも勝たないが39%、わからないが21%で6割にも達します。アメリカ人はウクライナ、ゼレンスキーに肩入れしつつも、その行方は全く楽観していないということでしょう。
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