先日、古巣の新聞社から送られてきた社内報の一面は、今年の新入社員全員を斜め上から俯瞰した集合写真でした。

全員、右拳を上げて、笑顔でいい写真ですが、何より印象的なのが女性の多いことです。記事によると、計91人のうち、女性は33人とのこと。3分の1以上を占めます。

最近、よく目にするDiversity:多様性という言葉を実感しました。何しろ、私が入社したのは半世紀以上も前のことですが、同期に女性は一人もいませんでしたから。

近年は、新聞社やテレビ局に次々に女性の政治部長が就任したり、女性役員も生まれるなど日本のジャーナリズムの世界もジェンダーの面では多様性が進行しているのが実感できます。

しかし、多様性とはジェンダーの面だけではないはずです。そのことを今月に出た英国のNCTJ(National Council for the Training of Journalists:ジャーナリストの訓練のための全国評議会)の年次報告書で知りました。

NCTJは、社会的、民族的に多様なバックグラウンドを持つ人々にジャーナリストとしてのトレーニングを奨励することで、ニューズルームに多様性をもたらすことを目的にしたプログラムを用意していて、その受講費用などを援助するJournalism Diversity Fundも管理しています。いわば、業界のDiversityを推進する旗振り役のような存在です。

前置きが長くなりました。この<Diversity in Journalism>とある報告書、その概要を数字にしてまとめたものは7枚目と9枚目に、年次経過とともに記されています。

冒頭で紹介したジェンダーについては、女性の割合が47%に達していて、英国経済全体で働く女性の割合48%とほぼ変わりません。この限りでは、多様性は達成されているように見えます。

年齢や人種、障害者雇用についても、2016年比で劇的な変化は見られず、経済全体で働く人との特徴と変わりません。

しかし、大きく全体の就業者と異なるのは、ジャーナリストの親の職業、社会的地位です。報告書の分類では、ジャーナリストがまだ未成年だった14歳時点で、親が社会的に上流とみなされる職業に就いていたのは80%もいたとしています。これは全就業者の42%と大きく異なります。

まあ、「上流」と言っても、貴族とかその類のことではなく、「管理職・取締役」など17%、「専門職」48%、「準専門職・技術職」15%の計80%。

一方、分類では最下部になる2分類、「生産工程、プラント・機械操作」1%、清掃や荷物運びなどと思われる「Elementary occupations」が1%の計2%のみがジャーナリストの親の職業でした。これは全就業者の親の20%との大きな差異です。

どうしてそうなるのかについて、報告書は「ジャーナリストの非常に高い学歴が背景にある」と指摘します。大学院レベルと思われるLevel5の資格所有者は32%にも達し、4大卒と思われるLevel4の57%と合わせ89%という数字は全就業者の49%を大きく凌ぎます。高等教育を受けるのは費用がかかることが家庭環境に影響してくるのでしょう。

しかも、この傾向は近年、一段と高まっているようで、年齢の区分けは明示されていませんが、若手を意味する「junior」ジャーナリストの大学院資格所有者は36%にも達する一方、上司に当たる「senior」では23%に留まっています。

また興味深いことに、「ジャーナリスト」と称する人は2016年の7万3000人から昨年は10万8000人へと大きく増えました。報告書はその背景に言及していませんが、これを報じたPress Gazettは「新聞や雑誌で働く人が増えたわけではなく、コンテンツの作成やジャーナリズムに関連する仕事が経済全体に拡大したことによる」と指摘しています。インターネット、ソーシャルメディアの拡大で自立するジャーナリストが増えたということでしょうか。

先日、4年後輩のある女性記者OGが言っていました。「私の採用前17年間、採用後7年間、一人も女性記者を採用しなかったのよ」。

そんな半世紀前に比べれば、隔世の感を強くしますが、ジェンダー問題は克服しても、英国に見られるような多様性に逆行する「階級格差」が日本でも広がっていないか心配です。