今週火曜日の24日、米国・テキサス州の小学校で起きた銃乱射事件。27日付のTexas Tribuneは亡くなった児童19人と女性教師2人全員の写真とプロフィールを掲載しました。可愛らしい写真の数々とエピソード。改めて事件の悲惨さを感じさせます。
同じTribuneの24日の記事では「テキサスでは銃乱射事件はとても当たり前になっている」と述べ、25日には過去13年間に8回もの事件が起きたことを図案化していました。
ですから、学校側も無防備だったわけではないのです。Washington Postによると、襲撃されたRobb小学校を含むUvalde Consolidated Independent School District、略称UCISD、ウバルデ統合独立学区、日本で言えば市や町の教育委員会のような組織が、AIによるプログラムも取り入れた学校のセキュリティ強化対策を数年前にまとめ、実施していたということです。
その文書がウバルデ学区のホームページに上がっています。「予防的セキュリティ対策」というもので21項目を列記しています。
日本的な感覚からは考えられないような対策で、ちょっと驚きながら全文を読みましたが、日本でも参考になるかもしれないので記録しておきます。
まず、趣旨についてこう書いています。「暴力、破壊行為、混乱、恐怖といった問題に対処するための主要な予防戦略として、UCISD はこれらの要素を抑制、または排除することを提唱します。すべての人に安全で安心できる環境を提供するための提案です」
そして第1項はいきなり「POLICE OFFICERS」とあってこう続きます。The district employs 4 officers. This includes a Chief, a detective, and two officers.
学区で警官を4人雇っていて、内訳は署長、刑事と2人の警官だ、というのです。学区のページで見ると警官は計6人になっています。この予防的セキュリティ対策文書はPostによれば2019-2020学年度用に作成されたものなので、その後、増員したのでしょう。
警官を教育委員会が雇うなんて米国ならではですが、名称もUCISD Police Departmentとなっていて教育委員会直属なのは明らかです。
で、第2項では、「警官はパトロールで各学校のキャンパスに来るよう招待され」、その際、教委は「無料の朝食または昼食を提供する」と記します。まさに身内、雇用主の感覚ですね。
警官頼みだけではありません。中学校では専門のセキュリティスタッフを持ち、ドアの入り口、駐車場、キャンパス周辺をパトロールします。
また、教委は、「学校の安全に関する脅威、潜在的脅威を特定し、評価、分類して対処する専門家からなる学際的チームを採用する」ともあります。
さらに、ウバルデ地区に特定してソーシャルメディア上の動きをAI技術を使ってモニターするSocial Sentinelのサービスを利用する、とあり、事実、Dallas Morning Newsによると2019年9月には購入していたということです。
性犯罪者の洗い出しや、訪問者の学区全体への通知などを行うというRaptor TechnologiesのVisitor Magement System for Schoolsも採用、アルコールや弾薬、薬物などを嗅ぎ分ける探知犬を抜き打ちで学校に派遣するInterquest Detection Caninesのサービス導入も挙げています。
このほかに、夜間に学校に侵入した不審者を感知、通報する動作探知器、警報装置の導入、丈夫な金網フェンスの設置、会話後に開く防犯型ドア、監視カメラの設置、教室のドアは常に施錠、金属探知機の配備ーーーなどあらゆる対策に目配りしていて、米国の学校はここまで完璧にやるのか、と驚きました。
しかし、それでも事件は起きた。対策の大元は銃規制の強化しかないのでしょうが、強化に前向きな民主党と消極的な共和党との分断は各種調査で顕著で、改善の兆しは見えません。Pewの最近の記事によれば銃乱射事件は年々、増加傾向にあるのですが。
そしてGun Violence Archivesのまとめによれば、米国で今年、銃器によって死亡した人は5月26日現在7695人、負傷者1万4365人。銃乱射事件では214人が死亡、うち子供は141だそう。これは異常事態以外のなにものでもないはずです。
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