昨年11日、市内の病院に出かけた時のこと。ちょっと自宅からは不便な場所なのでいつもタクシーを呼びます。やってきた車の運転手は若い女性。で、いきなり行き先の住所を聞かれ、それをカーナビに打ち込みます。「すみませ〜ん。新人なんです」「市内生まれじゃないの?」「東京です」「なんでこの街で運転手に?」「友達に誘われて」と答える日本語も、何かイントネーションがヘン。

さて、カーナビの指示を受けて走り出しすが、いつものルートとは全く違う!どう見ても大回り。メーターはどんどん上がる。「おいおい、大丈夫か!」と声をかけるも無言。さらに声を荒げそうになる。その直後、「ここですね」と言われてみれば確かに目的の病院前。そして料金はいつもの5割増し。

地方のタクシーなら、運転手は大体、地元のオッサンで、行き先の名称を言えば、カーナビなしでスイスイ運んでくれるものと思い込んでいたが、100%カーナビ頼りで、イライラさせ、おまけに5割増し。気の弱い当方、黙って払ったが、こんなんじゃ、文句を言ってトラブルになることもあるかも、とふと思う。ましかし、おバカなカーナビに文句を言っても仕方ないわけですが・・・

この病院の医師は評判が良くて、いつも満杯。予約時間から2~3時間遅れは当たり前なので、本を持参する。昨日は高橋秀美氏の「道徳教室」。内容の説明は難しいが、話題は菅前総理の話し方がなぜ退屈かを解剖するなど、話はバラエティに富み、読売の著名文化部記者、鵜飼哲夫編集委員によれば「卓抜なニッポン論にもなっている」と評される。

その中の「8限目」の小見出しに「過疎地でウーバー」を見つけた。日本じゃタクシー業界の大反対でウーバーはダメだったはずなのに、と興味を惹かれて開く。場所は京都府の京丹後市丹後町。65歳以上の高齢化率は40%以上で、鉄道の駅はなく、路線バスは1日に10数本しかない。そこで高齢者の足として、例外的にNPOが主体になって運営しているのだが、老人たちはスマホを持ってない!それでも、工夫して回してるという微笑ましい話。

高橋さんの体験乗車では、主婦ドライバーが炊飯器のスイッチを入れるために自宅前で停まったというエピソードも紹介される。登録ドライバー18人の平均年齢63歳で、もちろん全員地元住民。カーナビなしで、どこへも最短コースで到着するだろうから、トラブルなど起きようがないだろうな、と思いを巡らせていたときに、ふと本場、米国でのUberの安全レポートが、つい先日、公表されたことに思い当たった。

実はUberの安全レポートは2017年と2018年分をまとめた1回目が2019年末に出ていて、当時はライドシェア2位のLyftに対する性的暴行被害を訴える訴訟が起きた直後とあって、大半はその問題に割かれていたのをこのブログで取り上げた。それから2年半後のレポートでは事態は改善されたのだろうか?

というわけで、長い長い前置きになりましたが、予約時間から2時間半遅れで診察を終えて、帰宅後、2019年と2020年についての78ページに及ぶ、2回目の安全レポートを読み出したのです。(きっかけがないと、こういう長文レポートを読むのは大変です)

レポートでは、Uber車両が絡む交通事故による死者数が101人で、遭遇率は2千万回の乗車で1回、身体的暴行事件、つまり暴力事件での死亡者は20人で遭遇率は乗車1億回に1回など、その内訳なども詳しく記していますが、1回目からの焦点である性的暴行については、前回同様、5つのカテゴリーに分けて数字を出しています。

5つのカテゴリーの総件数は2年間で3824件。前回は5981件ですからマイナス38%! かなり改善しました。しかし、2020年はコロナの影響で乗車回数が大きく落ち込み、2年間トータルで21億回で、前回の23億回を下回っていることに留意しなければなりません。

5つのカテゴリー別の内訳表。細かくて見にくいでしょうが、前回も載せたので、コピペします。

加害者、被害者の割合はどうか。5分類トータルで、前回は運転手が54%で、乗客が45%でしたが、その傾向は今回も変わらず、運転手56%、乗客43%です。

最悪のレイプを意味する最下段、「合意なき性的侵入」(Non-consensual sexual penetration)は、前回が464件でしたから388件へ6%の減少に止まり、5分類中、最も低い減少率でした。

その被害者388人中、乗客が354人で91%に達しましたが、運転手も7%の26人、男女別では女性が81%の316人、男性は15%の57人でした。これは前回の7%から倍増です。

レイプへの遭遇率は500万回の乗車で1回の割合でしか起きないとレポートは記述し、一段と「安全になった」と主張していますが、Uberに乗っていて死亡事故で亡くなる確率、2千万回に1回の4倍です。

そして、のどかで微笑ましい京丹後市丹後町のUberもどきサービスの域には遠く及ばないのは確かです。この地でも丹後町のUberもどきサービスが欲しいなあ。