イーロン・マスク(Elon Musk)氏のTwitter買収とそれに続くゴタゴタ騒ぎにかまけていて紹介が遅れましたが、ニューヨーク市では、11月1日に「給与透明化条例」(salary transparency provisions)が施行されました。

米国では幾つかの先行例があるようですが、世界でも最大級の雇用市場でのことですから、注目を集めているのですが、「インターネット時代のジャーナリズムの未来を理解する」ことを掲げるニーマン ジャーナリズム ラボがそれらしいレポートを出したのです。

それは、当初5月1日施行予定だったこの条例が、経営側から「聞いてなかった」などの反発が出て半年延期になったけれど、ニューヨークに拠点を置く著名メディアはどこまで対応しているかを調査したものでした。

この条例の狙いは、社会的テーマの男女間、人種間の給与格差の縮小を目指したものとされるだけに、その任の一端を担うメディア自身の対応はどうかを探ろうとしたのでしょうが、元同業の当方にとっては、米国の新聞、テレビ、ネットで働くジャーナリストたちの待遇が今、どうなっているかの方に大いに興味をそそられたのです。

ご存知のように、米国では日本のような新卒一括採用はありません。採用はポシションに向いた人を募集する、日本で言うような「中途採用」形式が大部分ですから、施行される条例に基づく募集内容を見れば、プロのジャーナリストの待遇相場がわかるはずです。

新条例によれば、雇用主は応募者に支払ってよいと「誠実に考えている給与の範囲」を、チラシやインターネットの募集要項で具体的に表示しなければなりません。時給なら「15ドル以上」とか、サラリーなら「最高125,000ドル」という表現は不十分で、「最低給与額と最高給与額の両方」を明記しなければならないということです。違反していたら、最高で25万ドルの罰金が課せられる、ともあります。日本のような「当社の規定による」なんては当然、不可です。

さて、実際に調査したのは36媒体。条例に照らしてOKだったのが体制を占め28媒体でしたが、親指が下向きthum downのマークがつき、ちょっと不十分なのがCNN、New York Post、ロイター、WSJの4つ、給与情報がなくペケ印はAP、The Information、Puck、Substackの4つでした。AP以外は新興メディアです。

そこでOKマークの中でいくつかの具体例を紹介します。リンク先のページではとても詳しく書いてますが、そのほんの一部です。

新聞では、NYTは「ワシントン駐在の法務特派員115,506~17万ドル」、Gurdian「人種と平等担当副編集長18万〜19万ドル」、WaPo「販売部長20万500〜33万4,100ドル」、FT「副編集長9.5〜11万ドル、記者6.5~7.5万ドル」。

テレビだとNBCの「専門記者7,5〜12,5万ドル」、CBSニュース「編集長11~12万ドル」。

雑誌関係でForbes「最新政治ニュース契約記者時給28.85ドル」、Fortune「ニューズレター担当VP17.5~20万ドル」。

取り上げた数が一番多いのがネットメディア。AXIOS「リモートの政治編集者12~15万ドル」、Buzzfeed「ニュース編集者72.500~87.500ドル」、Insider「ビジネス企画編集長15~22万ドル」。

これらの職種は各媒体の募集から一、二例ずつ引いたに過ぎませんが、新聞、テレビのような既存メディアより、新興ネットメディアの高給ぶりが目につきます。日本のネットメディア もいずれそうなるのでしょうか。