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Title: 米国における教育のデータ駆動化に関する調査報告書(第三部)
Updated: 2024/03/22
Category: その他
Areas: 米国 英国

米国における教育のデータ駆動化に関する調査報告書(第三部)

日本国内では、社会全体のデジタル化に向けた機運が高まっており、教育分野では、2019年に文部科学省が「GIGAスクール構想」による教育のICT化を打ち出し、学習や指導の履歴や成績の推移などのビッグデータを蓄積・分析することで、個々の生徒の学習状況のより深い理解、教育現場の知見の可視化、教育政策への反映などを目指している。
本調査報告書では、第一部、第二部に引き続き、米国におけるコロナ禍の影響調査と対応、High-Impact Tutoring(高影響の個別指導)、CAL(Computer Assisted Learning)、英国のコロナ禍の施策効果、および、教育分野における生成AIの影響と活用事例について報告する。

(1) 米国はコロナ直後に生徒の成績が数十年前のレベルまで大きく落ち込み、特に人種別では白人、アジア系に比べ黒人・ヒスパニック系の遅れが顕著であった。これに対し、連邦政府はAmerican Rescue Plan(ARP)において教育分野に1,900億ドル(約28.5兆円)の支援金を投入。ARPを活用した学力回復のための施策として、過去の検証で費用対効果が確認されていたHigh-Impact Tutoring(学校のカリキュラムと連動した少人数の個別指導)を推奨。完全オンライン指導を導入したテキサス州や、対面指導を導入したニュージャージー州などで大きな効果を上げている。
(2) 英国でも米国同様に、コロナ直後に生徒の成績が大きく落ち込み、英国政府はRecovery Packageにおいて、教育分野に35億ポンド(約5,005億円)の支援金を投入。その中で経済的に支援が必要な生徒を対象としたNational Tutoring Programme(NTP)などを推進。コロナ前の成績への回復に必要な月数が小学校・中学校で大きく減るなどの効果を上げている。
(3) ChatGPTを始めとする生成AIの急速な普及に伴い、教育分野では授業計画策定や採点等の教師の利用、生徒向けのパーソナライズされたAIチューターなどの有用性、プライバシー、精度、使い方のサポートが必要などの問題が顕在化。学校の対応は禁止・制限・積極活用など多様。当初禁止から活用へ変更した学校もあり。また、生成AIの健全な利用に関するガイドライン指針の政府や州レベルでの策定が進められている。生成AIを活用した教員向け、生徒向けツールがスタートアップなどから多数提供され、特に先進的な学区での導入が進んでおり、活用実態の定量的把握から活用効果の定量的把握へ進もうとしている。

第一部はこちらからダウンロードできます。
https://rp.kddi-research.jp/article/GN2021001
第二部はこちらからダウンロードできます。
https://rp.kddi-research.jp/article/GN2023001

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