1.電気通信事業の規制動向

◆電気通信事業の公正な競争の促進

 2014年12月の情報通信審議会答申「2020年代に向けた情報通信政策の在り方」等を踏まえ、電気通信事業法が2015年5月に改正され、2016年5月21日に施行されることになった。同法改正によって整備された電気通信事業の公正競争の促進を目的とした事項は、以下のとおり。

(1)光回線の卸売サービス等に関する制度整備
 光回線の卸売サービス等、主要事業者(一種指定事業者:NTT東西、二種指定事業者:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、沖縄セルラー電話)が提供する卸売サービスについて、事後届出制を導入するとともに、届出内容を総務大臣が整理・公表する制度を整備する。併せて、現行法の適用関係を明確化し、公正競争の確保と行政の予見性向上のため、ガイドラインを策定する。
(2)禁止行為規制の緩和
 移動通信市場の禁止行為規制を緩和し、事前禁止の対象をグループ内の事業者への優遇に限定するとともに、製造業者等との連携を可能とする。必要な場合は、業務改善命令で是正する。
(3)携帯電話網の接続ルールの充実
 MVNOの迅速な事業展開を可能とし、移動通信市場の競争促進を図るため、主要事業者の携帯電話網の接続ルールについて、1必要な部分だけを借りられる制度、2接続料の算定制度等を整備する。
(4)電気通信事業の登録の更新制の導入
 主要事業者、または、そのグループ会社が他の主要事業者等と合併・株式取得等する場合は、事業運営や公正競争に与える影響を審査するため、登録の更新を義務付ける。

 携帯電話等の基地局の開設計画の認定において、電気通信事業の登録を受けることを要件に追加する。

 

◆スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針

 2015年9月11日の経済財政諮問会議において、安倍晋三首相は携帯電話料金の引き下げを検討するよう指示し、「ICTサービス安心・安全研究会消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」(総務省)の下に、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が設置された。
 同年12月16日に最終取りまとめ「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース取りまとめ」が公表された。
 総務省は、本取りまとめを踏まえ、12月18日、「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」を公表。その中では、「スマートフォンの料金負担の軽減」「端末販売の適正化等」「MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進」が具体的施策として示された。

(1)スマートフォンの料金負担の軽減
・携帯電話事業者は、①スマートフォンのライトユーザーや端末購入補助を受けない長期利用者等の多様なニーズに対応した料金プランの導入等により、利用者の料金負担の軽減を図る、②これに基づく料金プランの導入等の取り組み状況について、総務省に報告する。
(2)端末販売の適正化等
・携帯電話事業者は、①通信サービスの契約と一体的に行われる端末の販売について、店頭において端末販売価格の値引きや月額通信料金割引等に関する利用者の理解を促すための措置を講ずる、②MNP利用者等に対する端末購入補助について、端末の価格に相当するような行き過ぎた額とならないよう、適正化に向け取り組む、③これらに基づく取り組み状況について総務省に報告する。
・総務省は、上記の要請に基づく端末販売の適正化の取り組みについて、外部からの情報提供窓口を設置するとともに、店頭での実態調査を実施することにより、改善状況を把握し、必要に応じてさらなる指導を行う。
・総務省は、端末購入補助の適正化に関する基本的な考え方(利用者間の不公平の是正についての方向性、発売から一定期間を経過した端末についての扱い等)や電気通信事業法第29条の規定の解釈・運用方針を示すガイドラインを策定する。 
・総務省は、携帯電話事業者に対し、これまで報告を求めている販売奨励金の総額に加えて、端末購入を条件に、端末購入代金を一括または分割で補填する割引の総額について、定期的に報告することを求めることとし、電気通信事業報告規則を改正する。
・総務省は、携帯電話事業者に対し、利用者に対して通信料金と端末価格の内訳を明確に書面で説明するよう代理店を指導・監督することを求めることとし、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を改正する。
・総務省は、利用者がニーズに合わせて通信サービスと端末を自由に組み合わせて利用できる環境を実現するため、「SIMロック解除に関するガイドライン」に基づくSIMロック解除を着実に推進するとともに、期間拘束・自動更新付契約の見直しを引き続き推進する。
(3)MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進
・総務省は、携帯電話番号、端末の所在地、顧客の契約状況といったネットワーク制御に必要な情報を管理するデータベースである加入者管理機能をMVNOが保有するための加入者管理連携機能について、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」において「開放を促進すべき機能」に位置付け、MVNOと携帯電話事業者との間で行われている事業者間協議のさらなる促進を図る。

 本方針を踏まえ、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」が策定され、2016年4月1日から適用されたほか、消費者保護ルールを充実・強化するために「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」が改正され、5月21日から適用されることになった。

 

◆消費者保護ルールの見直し

○電気通信事業法改正 2016年5月21日施行
 利用者保護のさらなる充実・強化を目的として、2015年5月15日の第189回国会において、電気通信事業法等の一部を改正する法律が成立し、同年5月22日に公布、翌年5月21日に施行されることとなった。具体的には、当該改正法により、既存の説明義務の充実・強化が図られ、新たに契約後の書面の交付義務、初期契約解除制度、不実告知等の禁止、勧誘継続行為の禁止、代理店に対する指導等の措置義務が電気通信事業法に加わることとなった。
 これを受け、総務省は、「ICTサービス安心・安全研究会消費者保護ルール見直し・充実に関するWG」での議論を踏まえ、省令・告示案を2015年11月に作成し、さらに電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドラインを2016年3月にまとめた。各事業者は、お客様に安心してサービスをご利用いただけるよう、改正内容の正しい理解と順守が求められている。

○「期間拘束・自動更新付契約」に係る論点とその解決に向けた方向性
 2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015においては、モバイル分野の競争促進・利用環境整備として、「携帯電話の期間拘束・自動更新付契約に関して、契約解除料を支払うことなく解約が可能な期間の延長や、更新月のプッシュ型通知の2015年内の実現を推進する。さらに、併せて、期間拘束・自動更新付契約の在り方についても検討し、本年中に結論を得る」としている。
 「ICTサービス安心・安全研究会利用者視点からのサービス検証タスクフォース」では、2015年5月から5回の会合を開催し、7月16日に提言として「期間拘束・自動更新付契約に係る論点とその解決に向けた方向性」を取りまとめた。主な内容は以下のとおり。

  • 期間拘束のないプランが選択されている割合が低く、事業者は「十分な説明」、「適切な料金水準の検討」が必要。
  • 技術革新、競争環境の変化が激しい通信業界では、利用者は将来を見通した上で合理的な選択をすることは困難である。事業者は「期間拘束が自動更新しないプラン」を設けることが適当、また、拘束期間の短縮について検討が必要。
  • 一律の違約金の算定が合理的ではないと考えられ、事業者は加入期間に応じて「段階的に逓減」させる方法を検討することが望ましい。また、入院や海外赴任などの場合は、事業者において違約金の支払いなく解約できる運用とすることが望ましい。

 本報告を踏まえ、電気通信事業者には自主的にサービスの改善に取り組むことが強く期待されている。なお、電気通信事業者の自主的な取り組みでは改善が期待できない場合は、総務省において、電気通信分野における契約に関する電気通信事業法の解釈指針としてのガイドラインの策定を検討すべきとされた。その後、2016年1月に同タスクフォースのフォローアップが行われ、今後も事業者の対応を確認していくことになっている。

○スマホの実効速度表示に関する指針策定(広告表示の見直し)
 利用者にとって、通信速度等のサービス品質が事業者選択の重要な要因となっている。しかしながら、例えば広告や販売勧誘の際に示される最大通信速度(ベストエフォート)の表示は、必ずしも利用者が実際に体感し得る通信速度を踏まえている状況ではない。また、事業者やメディア等が独自の調査結果を公表しているが、基準にばらつきがあり、比較が困難な状況となっている。そのため、利用者が適切にサービスを選択しづらく、利用者の利便を損なう恐れがあることが指摘されていた。
 これを踏まえ、2013年11月より、「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」(総務省)において、実効速度の計測方法、計測条件、データのサンプリング、スクリーニング手法、広告での表示方法について検討が重ねられ、2015年7月に報告書、および実効速度に関するガイドラインがまとめられた。これに基づき、各事業者は、実効速度を計測した結果(全国10都市1,500地点)を、2015年12月よりHPで公表し、さらに、速度訴求を行う媒体(パンフレット等)へも表記するようにしている。

 

◆個人情報保護法の改正―改正個人情報保護法等を踏まえたプライバシー保護検討タスクフォース

 2003年5月に成立し、2005年4月に全面施行された「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」)が、およそ10年ぶりに改正された。改正個人情報保護法は2015年9月3日に成立、2016年1月1日から一部施行された。2017年春頃には全面施行が予定されており、これに向けて準備が進められている。 このような改正が行われた背景には、情報通信技術の発展や事業活動のグローバル化等の急速な環境変化により、個人情報保護法が制定された当初は想定されなかったようなパーソナルデータの利活用が可能となったことが挙げられている。
 これを踏まえて、以下の6つを中心とした改正が行われた。

(1)個人情報の定義の明確化
(2)要配慮個人情報の定義
(3)匿名加工情報によるパーソナルデータの利活用促進
(4)個人情報の第三者提供の罰則整備(いわゆる名簿屋対策)
(5)個人情報保護委員会の設置
(6)外国の第三者への提供および外国事業者による個人情報の取り扱いの制限

 2016年1月1日の部分施行によって、「特定個人情報保護委員会」が「個人情報保護委員会」へと改組され、2017年春頃の全面施行に合わせて、各省庁が有していた権限が個人情報保護委員会の下に一元化される見通しである。
 他方で、このような個人情報保護法の改正に合わせて、各分野における検討が進められている。総務省は、「ICTサービス安心・安全研究会」の「個人情報・利用者情報等の取扱いに関するWG」の下に、「改正個人情報保護法等を踏まえたプライバシー保護検討タスクフォース」を設置し、個人情報保護法の改正やパーソナルデータ利活用の新たな動向を踏まえて、電気通信分野に関連するプライバシー保護について検討を開始した(2015年11月)。検討事項としては、

  • 改正個人情報保護法を踏まえた「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン(2004年8月31日)」規定内容見直し等
  • パーソナルデータ利活用の新たな動向を踏まえた上での電気通信分野に関連するプライバシー保護に関する事項

が挙げられており、各界の有識者による検討が進められている。

 

◆PSTNマイグレーションに関する検討

 2015年11月、NTTは、電話サービスのために用いられている公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)の設備が、2025年頃に維持限界を迎える中で、今後、PSTNを順次IP網に移行しようとする構想を公表した。
 NTT東西のPSTNは、約2,300万の契約者(2015年12月末時点)を有し、IP電話・携帯電話を含む他社・他社間の通話を媒介・実現する機能等を担う基幹網であり、累次にわたる競争ルールの整備により、多くの事業者がPSTNの機能を利用して事業展開を行っている。
 また、固定電話全体では、拡大傾向にある0AB〜JIP電話を含め約5,600万の契約者(2015年12月末時点)が存在し、0AB〜JIP電話とセットで販売されるブロードバンドや、そのブロードバンドとセットで販売される携帯電話の競争環境にも関係するため、移行後のIP網の姿や移行の在り方は利用者や事業者に大きな影響を与えるものと想定される。
​ これらを踏まえ、総務省は、2016年2月、情報通信審議会に対し、「固定電話網の円滑な移行の在り方」について諮問した。傘下の電気通信事業政策部会・電話網移行円滑化委員会で合同ヒアリングを行った上で詳細検討を行い、2017年夏頃に答申をまとめることとしている。