2.ICT市場の動向

◆スマートデバイスの動向

 スマートデバイスとは、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル情報通信端末をはじめ、ウエアラブルデバイスやスマート家電など、ソフトウェアによってさまざまな用途や機能を実現する、インターネットに接続される機器の総称である。
 ウエアラブルデバイスについては、2015年4月に米アップルが「Apple Watch」を発売し、iPhoneとの連携による時間の効率化や情報のアクセシビリティ向上を訴求することで、さらなる普及を促すきっかけを与えた。米調査会社IDCによれバ、2015年通年のウエアラブルデバイス出荷台数は前年比171.6%増の7,810万台となり、腕時計型以外にも、メガネ型、指輪型、ブレスレット型、衣類型デバイスの発売も出荷台数の増加につながった。今後もスポーツ、健康、エンターテインメントなど、さまざまな分野での活用が期待されている。
 また、スマート家電については、ジェスチャーで操作できるスマートテレビや外出先からスマートフォンで中身を確認できるスマート冷蔵庫など、人々の生活を便利で豊かにするコンセプトの商品が展示会等で発表され始め、今後、製品化が加速することが予想される。さらに、あらゆるモノがインターネットに接続される概念であるIoT(Internet of Things)が世界的な広がりを見せており、センサーデータを基に自動制御される空調や照明などのスマート家電も実用化が進んでいる。

 

◆MVNOの動向

 MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)は、無線通信インフラ設備を自ら保有せず、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)から借りて移動通信サービスを提供する電気通信事業者を指す。2001年10月に、日本通信(株)がPHS回線でMVNOを開始して以降、法人市場を中心としたデータ通信用途で発展したが、2013年頃から個人市場向けのサービスが増え始め、音声機能付きSIMカードの提供、廉価端末をセットにした「格安スマホ」が注目を集めるようになり、MVNOの認知度は急速に上昇している。総務省によると、MNOを除くMVNOの契約者数は2015年12月末時点で1,155万件に達し、前年同期比で29.0%増加している。事業者数も210社に達し、MVNO間の競争が激しくなりつつある。
 MVNOのサービス多様化の観点から注目されているのが、「HLR/HSS(Home Location Register/ Home Subscriber Server)」の開放である。「HLR/HSS」とは、加入者管理データベースのことであり、MVNOは現状MNOの設備を借りているが、MVNO自身が保有・運用することにより、サービス展開の自由度が大きく広がる。とりわけ、MNOとの相互接続により、遠隔から通信事業者のプロファイルを変更できるeSIM(Embedded SIM)の導入が可能となる。eSIMは、市場の広がりが見込まれるM2M/IoTの分野で特に有用なサービスとして期待されている。

 

◆Eコマース(O2O)の動向・オムニチャネル

 2014年の国内EC市場は、前年比14.6%増の12.8兆円(経済産業省調査)で、野村総合研究所は、2021年度には25.6兆円にまで成長すると予測している。
 スマートフォンやタブレットの普及によって、店頭で商品の現物を確認してからネット通販で購入する「ショールーミング」に加えて、ネットで情報収集や在庫確認を行い、実店舗で商品を購入する「ウェブルーミング」という購買行動も一般化しつつあり、ネットを活用して広告やクーポンを配信し、実店舗に消費者を送客する「O2O(Online to Offline)」に取り組む企業も多く見られる。また、「いつでも、どこでも商品を購入し、都合の良い時間と場所で商品を受け取りたい」という消費者の期待に応えるため、「オムニチャネル」に取り組む企業も登場している。「オムニ(omni)」とは「すベての、あらゆる」という意味で、消費者は、リアルやネットを問わずに、好きな時に好きな場所で商品を購入できるようになってきている。
 セブン&アイ・ホールディングスは、セブン&アイグループの百貨店、スーパー、専門店等、あらゆる業態の店舗で取り扱う商品を最寄りのセブン‐イレブンで注文や受け取り、返品・返金できる「omni7」を2015年11月に開始した。
 一方、EC事業者の楽天は、日本郵便と連携して、都内郵便局等に設置したロッカー「はこぽす」での「楽天市場」の商品受け取りサービスを、2015年4月から同年10月末までの期間限定で実施。さらに、ローソンとも連携し、「コンビニ受け取りサービス」を全国のローソン店舗(ローソンストア100を除く)で2015年9月から開始している。アマゾンジャパンも、有料会員のAmazonプライム会員向けに、午前6時から深夜1時までの間にネット注文した商品を、1時間以内に配達する「Prime Now」を一部地域で2015年11月に開始するなど、流通市場での顧客の囲い込みを巡り、競争が激化している。

 

◆ビッグデータ

 ICTの浸透や実社会から情報収集するセンサー等の高度化に伴い、さまざまな分野で得られるデータは指数関数的に増大し、多様化し続けている。このようなICTの進展により、生成・収集・蓄積等が可能・容易になる多種多量のデータを「ビッグデータ」と呼ぶ。世界の年間IPトラフィックは、2017年にはゼタバイト(1ゼタバイトは1兆ギがバイト)の大台を超えるとの試算(Cisco Visual Networking Index:Forecast and Methodology, 2014-2019)もあり、2014年から19年のCAGR(年平均成長率)は20%超が見込まれている。
 既に、医療・健康や農業分野においては、ビッグデータを活用した実証実験等も進められている。例えば、医療・健康分野においては、ゲノムデータや症例データによる診断、農業分野においては、気象・生育状況のモニタリングといった活用が試みられている。
 また、ビッグデータとAI(人工知能)を連携して、企業の経営資源として活用していく取り組みも増加している。先進的な取り組みとして、ビッグデータと人工知能を活用して、将来予測を行うことが挙げられる。季節変動や立地条件、競合動向等のデータを利用した新商品の需要予測や、経済指標や成約データを利用し、ポートフォリオ選定を行うといったものがあり、既に実用化の段階にある。
 今後、少子高齢化が進むにつれ、ビッグデータやAI等のICT基盤を活用してさまざまな分野で自動化が進むことが考えられ、新規データベースの構築やデータセンターの拡充、AIの能力の向上が進められている。
 一方、「ビッグデータを実際に活用している日本企業は6%」(2015年6月ガートナー調査)や、「ビッグデータ活用へ積極的に取り組んでいる小売業者は6.9%」(2016年1月矢野経済調査)といった調査結果が示すように、多くの企業では、ビッグデータが新たな成長の源泉であることは認識しつつも、そのインパクトが切迫感を持って受け止められているわけではないのが実態である(IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方中間答申)。
 ICT以外の分野との、より積極的な連携・融合を通じて、新たな価値創造やサービスの向上・最適化につながる、社会的にも受容性の高い次世代共通基盤としてのビッグデータ活用が期待されている。

 

◆IoT/M2Mの拡大

 近年、あらゆるデバイス(モノ)がネットにつながる「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」が注目を集めている。言葉の定義は広く、機械同士が通信を行う「M2M(Machine to Machine:機械間 通信)」もIoTの一形態とされている。
 米大手ITアドバイザリ会社のガートナー社の予測によれば、2020年には全世界で250億個(2015年の約5倍)のデバイスがネットにつながるとされ、他調査機関も同様に大きな成長を見込んでいる。IoTデバイスは内蔵センサーを通じて、気温・気圧・位置などの環境データや、体温・血圧・脈拍などの生体データなど、さまざまなデータを収集し、クラウドで分析した上で現実世界にフィードバックすることで、農業やヘルスケア分野などでの活用が始まっている。IoTがAI(人工知能)につながることで、収集・分析・フィードバックのサイクルが自動的かつ高速に回るようになり、さらに進化していくことが期待されている。
 IoTを支える通信技術としては、携帯電話と同じセルラー通信(2G、3G、4G/LTE、5G)や、家庭内等で用いられる近距離通信(Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee等)のほか、LPWA(Low Power Wide Area)などが期待されている。また、リモートで書き換え可能なSIMカードである「eSIM(Embedded SIM:埋め込み型SIM)」は、デバイスに組み込むことで、物理的なカードの差し替え無しで複数の事業者、あるいは国を超えて利用可能となるため、IoTとの親和性が高いといわれている。
 IoTはインダストリー4.0(製造業)やスマートホーム、スマートシティなどへの活用を通じて、産業・社会・生活にさまざまな価値・効用をもたらすことが期待されており、各国の政府や企業、業界団体等が検討に注力している。日本においても、2015年10月に、総務省、経済産業省によってIoT推進コンソーシアムが設立され、産・官・学が連携して技術開発や実証、標準化、企業間のデータ流通の促進、セキュリティ確保、プライバシー保護に向けた検討などに取り組んでいる。

 

◆Web & Automotive

 自動車をより安全で快適な乗り物にする取り組みは、その登場以来脈々と続けられてきたが、昨今では自動停止などの先進運転支援システム(ADAS: Advanced Driver Assistance Systems)、その先にある自動運転を目指して、ソフトウェア技術の開発・活用やICT技術の取り込みが進められている。
 自動車がネットにつながるコネクテッド・カーの普及により、自動車で集められた速度、加速度、位置、急ブレーキなどの走行情報をクラウドにアップロードしたり、反対にクラウドにあるリアルタイムの渋滞や危険箇所をオンラインで表示するなど、自動車情報の集合知を活用することで、より安全で快適な交通社会を築くことが可能になる。また、エンターテインメント分野では、車内で走行状況に応じたインターネットラジオや音楽を聴くことができるサービスなど、自動車の中でもインターネット=Webを使うことで、これまでにないサービスを提供できる可能性がある。
 しかしながら、パソコンにディスプレイ、キーボード、マウスというインターフェースを前提に発展してきたWeb技術を、そのまま自動車に適用するには使い勝手が悪く、かつ危険を伴うことになる。そこで、Webの利便性を自動車でも享受しつつ、安全性も保てるような仕組みについて検討が進んでいる。
 Web技術の標準化を行っているW3C(World Wide Web Consortium)では、2013年2月にAutomotive and Web Platform Business Groupが発足し、自動車メーカーやサプライヤー、IT関連企業などが参加して、自動車の中でWeb技術を使うための標準化など、検討が開始された。また、2015年2月にはAutomotive Working Groupが発足し、具体的な標準化仕様の策定が開始された。自動車が持っている車速、トリップメーター、燃費などの走行情報を取得するためのインターフェースや、車内のエアコンの調節をスマートフォンから行うためのインターフェース等の標準化(1.0版)が、2016年内を目途に進められている。

 

◆サイバーセキュリティ

 特定の政府機関や企業を狙った、いわゆる「標的型攻撃」の増加など、セキュリティ上の脅威が年々増している。
 政府のサイバーセキュリティに関する役割や責任を明確化し、体制や機能を強化することを目的に、2014年11月、サイバーセキュリティを体系的に扱う法律として、わが国初の「サイバーセキュリティ基本法」が成立した。従来から議論になっていた「サイバーセキュリティ」に関する定義が設けられるなど、わが国におけるサイバーセキュリティが新たな局面を迎えている。
 2015年1月、同法に基づいて、国は「サイバーセキュリティ戦略本部」を内閣官房に設置。併せて、実務などを担当する「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」も発足した。同本部の役割は、①サイバーセキュリティ戦略の立案と実施の推進、②政府機関などにおける対策基準の作成や評価の実施、③政府機関などで発生する重大なセキュリティ事案の評価などである。
 2015年5月、日本年金機構がコンピュータウイルスによる不正アクセスによって、およそ125万件の個人情報の流出の被害にあった。同事案に関して、サイバーセキュリティ戦略本部は、原因究明のための調査を行い、この結果を同年8月に公表した。発端は同機構の職員がコンピュータウイルスに感染した電子メールの添付ファイルを開いたことによる「標的型攻撃」によるものであった。
 今後も重大なサイバーセキュリティ事案に対して、サイバーセキュリティ戦略本部が中心的な役割を果たしていくものと思われる。

 

◆ロボティクスの進展

 近年、コンピューターの小型・高性能化やクラウド活用、人工知能技術の進展により、知能処理技術のロボットへの応用が進んでいる。とりわけ音声・画像認識技術の進展を背景に、人を認識しながら自然な会話ができるコミュニケーションロボットが実用化され、家庭や商業・公共施設などで人々へのサービス提供が始まっている。
 ソフトバンクロボティクスは、2015年6月から感情認識人型ロボット「Pepper」の一般販売を開始した。人を認識した感情表現、写真撮影、子供向け英会話、スマートフォンからの遠隔操作・会話等の機能を搭載し、同年12月までに7,000台を販売している。また、同年7月からは法人向けモデルも提供開始し、店頭での接客、駅や展示場での外国人向け多言語案内、英語教室でのサポート、介護職員サポートなど、さまざまな分野で利用が拡大している。
 米Jibo社が開発を進める家庭向け知能ロボット「JIBO(ジーボ)」も世界的に注目されている。人型ではないがPepper同様、人間的で親しみやすいUIを持ち、家族の顔や声の認識、スケジュールリマインダー、メール読み上げ、写真・ビデオ撮影、子供の教育、IoT機器の制御などの機能が搭載され、インターネットで予約申し込みが始まっている。KDDIは、IoT市場を見据え、2015年8月Jibo社に出資し、同社の日本進出を支援する。
 NTTドコモは、タカラトミーと共同開発したクラウド型コミュニケーションロボット「OHaNAS(オハナス)」を2015年10月から、百貨店の玩具売り場やインターネットで販売している。NTTデータとNTTは、ヴィストン社開発の小型の人型コミュニケーションロボット「Sota(ソータ)」を中核に、多様なセンサー、家電等を連動させて暮らしの手助けをするサービスの実証実験を2015年7月から共同で行っている。

 

◆AI(人工知能)の本格活用

 AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の脳が持つ各種知的能力をコンピューターや機械に持たせる技術。AIは、1950年代に米国を中心に研究開発が開始されたものの、ルールに基づく手法、確率・統計的な手法のいずれもが壁にぶつかり、研究は停滞してしまった。AIが再び注目を集めたのは2012年以降であり、人間の脳神経のメカニズムをコンピューター上に再現するニューラル・ネットワークを多層化したディープ・ラーニング(深層学習)という手法が提案され、これが成果をもたらしたことによる。
 AIのサービスへの活用は、画像認識、音声認識、自然言語処理、機械学習といったAIの持つ高度な技術が生かせる分野であれば、さまざまな可能性が見いだせる。例えば、クラウド上に集積された膨大なビッグデータ(テキスト、音声、画像、動画など)の処理・解析は、AIが最も得意とする分野であり、実用化に向けた研究開発が進む自動車の自動走行も道路や交通情報などのビッグデータ解析が必要不可欠となる。それ以外にも、医療、金融、物流、小売など多岐にわたる分野でAIの活用が広まりつつある。ロボットへの実装も大いに期待される分野であり、今後、人間の仕事や作業がAIによって代替される可能性も指摘されている。

 

◆FinTechの拡大

 金融業界において、ICT技術を活用し、既存サービスを効率化、あるいは全く新しいサービスを提供する動きが活発になっている(モバイル決済やクラウド家計簿など)。これらは総称して「FinTech(フィンテック)」(FinanceとTechnologyを合わせた造語)と呼ばれており、狭義ではITベンチャー企業による新しい金融サービスや、そのITベンチャー企業自体を指す言葉として用いられることも多い。
 適用分野は、決済・送金、調達・融資、資産管理、セキュリティ等と多岐にわたる。銀行、保険、証券等の既存金融事業者からは、ITベンチャー企業による業界構造の破壊を警戒する見方があるが、他方ではベンチャー企業との接点を強化し、積極的に新サービスの創出を図る動きもある。
 具体的な例を挙げれば、自社内に閉じていたサービスや機能をオープンAPIとして開放したり、その活用アイデアを探るためにハッカソンを開催したりしている。みずほ銀行による「LINEでかんたん残高照会」(2015年10月開始)や、三菱東京UFJ銀行によるハッカソン「Fintech Challenge 2016」(2016年3月開催)などが話題を集めた。
 また、従来の中央集権型管理とは異なるP2P通信による分散管理型の仮想通貨にも注目が集まっている。代表的な仮想通貨であるビットコインに用いられているブロックチェーン技術は、貨幣だけではなく、さまざまな資産・価値の管理・譲渡を低コストでセキュアに実現可能な技術であると期待されており、国内外の金融・ICT大手企業が実証実験を開始している。
 日本国内では、「仮想通貨はあくまでモノであり貨幣や通貨ではない」とされてきたが、仮想通貨を、不特定の者との間で物品売買時の支払いや法定通貨との交換に利用でき、電子的に移転することが可能な「財産的価値」と定義し、決済手段の一つとして位置付ける法改正案が、2016年5月に成立した。その他、FinTechの普及を後押しする規制緩和も盛り込まれており、仮想通貨の普及と併せてFinTechの拡大がより一層加速するものと期待される。

 

◆シェアリングエコノミーの広がり

 経済成長の鈍化、エコ意識の高まり、インターネット・SNSの普及などを背景に、モノや空間などを誰かと共有するシェアリング・エコノミーが広がりを見せている。
 企業が商品を調達・貸出を行うレンタルサービスに対し、シェアリング・エコノミーでは主にインターネット上で個人と個人がつながり、モノの貸し借りを行う(マッチング)。
 代表的なシェアサービスとして「Uber(ウーバー)」が挙げられる。「Uber」は2009年に米国でサービスを開始した配車アプリで、タクシーに加え、一般人が運転する自家用車も配車の対象になっている。車のオーナーは、アプリ上で簡単な登録を行えば、ドライバーとして収入が得られる。乗客は、スマートフォンのGPS機能を使って、指定した場所から乗車できる。また、乗客からの評価は可視化されるため、一定の信頼性も担保される。日本では、有償で自家用車での送迎行為を行うことは、道路運送法により白タク行為として禁止されており、Uberの配車もタクシーに限定されているが、2015年10月に安倍首相が、国家戦略特区諮問会議で、過疎地における観光客の交通手段等、限定的な規制緩和の検討指示を出したため、動向が注目される。
 2008年に米国でスタートした「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、個人の所有する空き部屋・空き家を短期間、旅行者等に貸し出すためのオンラインプラットフォームだ。日本では2014年からサービスが開始され、2015年11月現在、国内で約21,000件の物件が登録されている。個人が宿を提供する行為 (民泊)は旅館業法に抵触するとの見方もあるが、東京都大田区や大阪府など一部自治体では、一定のルールのもとで事業を認める民泊条例が制定され、事業者の申請も受け付けている。観光客誘致による経済効果や、東京オリンピック開催時の宿泊先不足解消に一役買うことも期待される。

 

◆サブスクリプションサービスの動向

 スマートフォンやタブレットの普及により、定額料金で動画や音楽をいつでもどこでも視聴できるサブスクリプションサービスが定着しつつある。野村総合研究所は、2021年度には国内動画配信市場規模が、2014年度の1,346億円から、2,092億円にまで成長すると予測している。
 通信事業者や放送事業者の動画配信市場への取り組みとして、KDDIとテレビ朝日は、2015年8月にスマートフォン向け動画配信事業において業務提携し、地上波番組連動のオリジナルコンテンツの共同制作を開始した。また、NTTドコモは、コンテンツストア「dマーケットVIDEOストアPowered by BeeTV」を2011年11月に開始し、2015年4月にブランドを「dTV」に変更した。ソフトバンクは、Netflix日本法人と2015年8月に業務提携し、国内でのサービスの取り扱いを2015年9月に開始した。さらに、日本テレビは、米Huluの国内定額制動画配信事業を2014年2月に承継して提供しており、在京民放5社 (日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)は、見逃し番組などを無料で配信するサービス「TVer」を2015年10月に開始した。
 音楽配信市場では、サイバーエージェント等の「AWA」、米Appleの「Apple Music」、LINEの「LINEミュージック」、米Googleの「Google Play Music」といった、ネット企業の国内定額制音楽配信サービスが2015年に相次ぎ開始され、同年の国内定額制音楽配信サービスの売上は、前年比58%増の124億円に達している(日本レコード協会)。アマゾンジャパンも、2015年8月に、年会費3,900円のネット通販のAmazonプライム会員向けに「Prime Video」を、同年11月に「Prime Music」を開始した。追加料金なしで動画や音楽を視聴でき、Amazonプライム会員の獲得やネット通販の利用増につなげている。

 

◆オープンプラットフォームにおけるエコシステム形成の動向

 Amazon.comのアソシエイト(アフィリエイト)プログラムは、書籍情報の表示や、書籍の購入をAPI(ある機能を他のプログラムから利用できるように公開されたインタフェース)化し、個人のブログ等に掲載することで、書店にとっては販売チャネルが拡大し売上増が見込め、また、個人側では、そのブログを経由して書籍の販売に結び付いた場合は手数料収入が得られることで、インターネット広告のエコシステムが成立する。このように、あるサービス機能をAPI化してオープンに利用できるプラットフォームを整えることで、新たなエコシステムの創出が可能となる。
 AmazonやGoogle Ad Wordsなど、個人向けのAPIによる巨大なエコシステムが目立っているが、昨今、その企業のサービス機能を他の事業者のビジネスを支える用途としてAPI化され始めている。
 米Twilioは、電話サービスやメッセージサービスをAPI化し、インターネット上でサービスを展開する企業に提供している。例えば、Eコマースのサイトでカスタマーサービスに直接電話できたり、インターネットゲームの中で、プレイヤー同士でチャットする場合に、アプリケーションがそれらのAPIを活用することで通信機能を使うことができるようになる。カーシェアリングの最大手米Uberは、ドライバーと乗客とを結び付けるオープンプラットフォームのエコシステムともいえるが、配車アプリのSMS/音声にTwilioの通信APIを使っている。これにより、お互いに電話番号を知らせないで、ドライバーから乗客に料金や待ち時間などが連絡される。また、寺田倉庫は、倉庫保管の機能をAPI化している。個人向け貸し倉庫としてWebベースでサービスを提供し、利用者は倉庫の申し込みや商品の配送をWebから依頼できる。この仕組みを法人向けにも展開している。具体例として、玩具メーカーが個人向けにコレクションの保管サービスを提供する、そのバックエンドとして倉庫APIが使われていたり、ネットオークション/Eコマースで個人が倉庫に保管している商品をそのまま出品するサービスを提供する場合に、倉庫・物流APIが利用されている。AmazonやGoogleの例では、API利用自体でエコシステムが形成される形態であったが、Twilioや寺田倉庫の例では、ある企業のサービス機能がAPI化され、それがまた別の企業のエンドユーザー向けサービスに利用されるという形態にエコシステムが深化している。

 

◆異業種と通信事業者のサービス提携(ポイント、電力、保険、金融など)

 通信事業者と異業種のサービス提携が進展している。通信事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)はポイントサービスの提携企業を順次拡大し、TポイントやPontaなど共通ポイントサービスとの連携や、割引、ポイント還元、相互交換など自社ポイントサービスの強化を進めている。NTTドコモは「dポイント」、KDDIは「auWALLET」、ソフトバンクは「Tポイント」へサービスを刷新。プリペイドカードやクレジットカードサービスを提供し、携帯電話の利用料金や提携カード会社加盟店でのカード利用料金に応じて付与されるポイントは、電子マネーとして利用可能となっている。「dショッピング」や「auWALLETMarket」等のショッピングサービスも提供しており、利用促進を図っている。
 また、2016年4月の電力小売自由化開始に伴い、異業種からの新規参入が相次ぐ中、KDDIとソフトバンクは地域電力会社との業務提携により、電気と通信サービスを組み合わせたセット契約プランの提供を開始し、ドコモは一部電力会社とポイントでの提携を行っている。
 その他、KDDIは、提携パートナー企業を通じ、生命保険や損害保険などの各種保険サービスや、住宅ローンの提供を開始するなど、ネットとリアルを融合した金融サービスの取り扱いも行っている。
 携帯電話市場が飽和状態にある中、各社は事業領域を拡大し、顧客基盤の強化および自社の経済圏の拡大を推進している。今後も異業種との提携により、自社の商品・サービスと融合した新たなサービスの提供が期待される。